第22話・戦場での報酬の分け方は様々だ

 戦場での報酬の分け方は様々だ。

 完全に頭分け、というのは公平のようでいて、不公平ですらある。

 一番働いていた者が、サボっていた者と同じ報酬で納得出来るはずがない。

 そして、その働いている者とは一体どういう基準になるのだろうか?

 最も多く敵を倒した者?しかし、その影には献身的に走り回り、仲間を助けていた者もいるだろう。

 回復魔法が得意で傷を癒していた者は働いていないとでも言うのか?

 そんな彼らの献身的な援護の下、最も多く倒せたら一番働いたことになる?

 失敗すれば不満が噴き出す報酬の分け前。それを上手くやるのが、組織の長というものである。

 その点、ステイシーときたら、もはや歴戦の風格すらあった。


「あっはっはっは、いい逃げ足だったじゃないか、馬!あんたが荷車をよく引いたから、私たちはたっぷりと稼げたんだ!さ、こいつがあんたの分け前だ。こいつでたっぷり食って飲むんだよ!」


「あ、ありがとうございます!」


 荷車を引く役というのは、獣人の間では未熟な者がやるものだと考えられている。

 手練れの戦士には荷車を引かせるよりも、武器を握らせるべきだからだ。

 しかし、起伏のある大地に車輪を引っかけず、重い獲物を満載した荷車を全力で引くという作業は非常に重労働であり、そのくせ結構な慣れが必要だ。

 下手な者がやればあっという間に荷車を壊してしまい、稼ぎがぱあになる。

 そのため大氾濫の時のみだが、荷車を専門で引く者が現れる。

 危険な戦場で少しでも早く荷車を引くため、基本的に彼らは非常に軽装だ。

 それだけの危険と重労働をこなしながらも、戦闘をしないというだけで報酬は少なくなりがちで、それは彼らの不満となっていた。

 それをこうして苦労を認められ、にこにこと褒められ、肩を叩かれれば(オークの馬鹿力で叩かれ、非常に痛いが)、すっかり嬉しくなってしまうのは仕方ない。


「猫、犬!そんなしょぼくれた顔をするんじゃないよ!馬が頑張って走ったから、私らは更に稼げた!馬がいなかったら大変なことになってただろう。違うかい?」


「そ、そうですね」


「ステイシーさんが言う通りです」


 そういう長年の偏見は、一朝一夕には納得がいくものではない。

 引き手と報酬が一緒というのは、どうも戦士としての自分が軽く見られているようで、気分がよくないのだ。面白くない。

 しかし、それもステイシーにぴしゃりと言われると、なんだかそういうものだな、と思わされてしまう。

 実際、普段より稼げているのも大きいだろう。

 破損した武器の修理費も自腹ではなく、全員の報酬から均等に引かれている、というものある。

 骨剣なら破損した層を交換するだけ、と言っても若い戦士にすれば、なかなか痛い出費なのだ。

 その厄介な修理費がない上で普段より稼げている、となれば確かに文句を言って騒ぐ理由もない。


「さ、報酬の分配は以上さ。不満がある者はいるかい?」


 分配された報酬の内訳は以下のようになる。

 装備と荷車の修理費で金貨八枚。

 荷車を引いた馬の獣人二人が金貨十枚ずつ、二十枚。

 戦士の猫と犬の獣人が金貨十枚ずつで、二十枚。

 ステイシーが分配したのは、合計四十八枚である。

 では残り四十枚は、どこへ行ったのか。


「はい、ありません!」


「今日はありがとうございました!」


「おう、今日はゆっくりするんだよ」


「また機会があれば、よろしくお願いします!」


「すげーな、おい」


 答えはステイシーの総取りである。

 堂々と報酬の半分をかっさらったステイシーに、若い戦士団は文句の一つも漏らさなかった。

 それどころか満足げな表情を浮かべ、パンパンになった財布を握って、ほくほくと嬉しげに帰っていくほどである。

 一番働いていた者が誰かわからないのは、実力が伯仲しているからだ。

 こうしてリーダーが最も明確に実力を発揮する群れは、最初から余計なことを考える必要がなくなる。

 オークの統率法は、力を見せつける以外にはない。

 小賢しい策を練る頭なんてないからだ。

 しかし、頼りになる背中を見せつけ、剛力を振るい、最も勇敢に戦う。

 そのオーク唯一の統率法を、ステイシーは驚くほどに上手にこなしてみせた。


「ほらよ、あんたの取り分だ」


「ふむ、二十枚」


 狼を最も倒していたのは、確実にステイシーだ。

 彼女と狼は非常に相性がいい。

 狼の攻撃は彼女の肌には傷一つつけられないし、腕を振り回して足をふみ鳴らすだけで死体が量産されていく。

 そういう意味ではクランが倒した数は、まぁぼちぼちと言ったところだろう。

 他の連中には負けずとも、ステイシーの倒した数はクランの倍はある。

 ここで二十枚、ステイシーと同じ報酬を受け取れる理由があるのか。


「ま、ちっと足りないけど納得しておきますかね」


「生意気だね」


 ふん、と鼻で笑ったステイシーは、大いに篝火がたかれ、まるで昼間のように明るい街の方へと歩を進めた。

 まだ背後では、街の外では魔法が魔獣へとぶつかる激音や、戦士たちの鬨の声が上がっている。

 魔獣たちの襲撃は、大氾濫期が終わるまで夜だろうと止まることはない。

 街全体が安らかに眠りにつけるのは、あと二ヶ月は先の話だ。

 休む者は休み、戦う者は戦う。そういう籠城戦である。

 その中で、ステイシーの横に並ぶべき存在になればいい、とクランは思った。

 どっちが上でも下でもない、対等な友達として。

 ここで他の者と同じように金貨十枚を受け取る。それはステイシーを独りにしてしまうように、クランには思えた。

 それはクランも、ステイシーも望んでいない。


「さ、仕事のあとはリラックスさ。今日は食うよ」


「今日は?今日もの間違いだろう?」


「確かに海の幸は美味かった。でも、そろそろ肉が恋しくなる頃じゃないか。そういうことさね」


「そいつは確かに一理あるな」


 人通りの多い大通りを進むステイシーだが、まるで無人の野を行くような有り様だ。

 気性の荒い者が多い獣人とはいえ、わざわざオークの道を塞ごうとはしないのである。

 軽い喧嘩のつもりが、平然と命のやり取りに持ち込んでくるオークにわざわざ絡もうとする気合の入ったチンピラはなかなかいない。

 オークに喧嘩を売るくらいなら、マフィアに喧嘩を売った方がよほど長生き出来るのだ。

 獣人はエルフやオークのように長命種ではなく、五十年ほどしか生きない短命種ではあるが、わざわざ無意味にオークに絡まない常識的な生き物である。


「どれ、今日はそれなりに儲かったからね。私が奢ってやろうじゃないか」


「マジかよ。太っ腹だな」


「あっはっはっは、いくらでも食っていいさ」


「おう、言ったな。こうなったら、あんたの財布を空っぽにするくらいに食ってやるからな」


「出来るもんならやってみるといいさ」


 などと言い合っている間にも、二人の鼻には肉の焼ける匂いが漂ってくる。

 それも大量の肉だ。肉だけではなく、にんにくやタレが焦げるひたすらに濃い匂いは、苦手な者なら引き返すくらいの凄まじい匂いだ。

 しかし、クランもステイシーも好きな匂いである。


「入場料は銅貨三枚だよ!」


「ほらよ、二人で銀貨一枚だ。釣りは取ってきな!」


「こいつは気前のいい姐さんだ!しこたま稼いだんだね、しこたま食っていきな!」


「おうよ」


「なんだってんだ一体」


 受付のような所で金を支払ったステイシーは、張り切るように腕を振り回し始めた。

 これからたっぷり食うぞ、という時に見られるオークの準備運動である。


「あれを見な、クラン」


「ひっでえオブジェだな……」


 街の広場なのだろう。広いスペースの空いたその中央には、肉の山があった。

 人の背丈よりも高い肉の山は、乱雑に切り分けられた肉だ。

 薄く切り分けられた物もあれば、子どもの頭ほどもある大きさの肉のブロックもあり、悪夢かなにかで出てきそうなオブジェと化している。

 その周囲には焼けた炭がごうごうと燃える金網が何台も設置されていて、数えきれないほどの人々が肉を貪っていた。

 金網から外れた外周のスペースには、なにを売ってるかよくわからない屋台が立ち並び、そこにも大量の人々が並んでいて、あまりクランが見たことのない光景となっている。


「私たちはあそこから勝手に肉を持ってきて、勝手に焼いて食う。周りの屋台はタレやら調味料やらを売ってる屋台さ。塩だけならその辺りでタダでもらえる」


「ちなみにあの肉はなんの肉なんだ?」


「今日狩った魔獣の肉に決まってんじゃないのさ。食い放題だよ!大氾濫になると、いつもこうやって肉が食える。さ、私はちょっとうろうろしてくるから、あんたもあちこち見てきなよ」


「……婚活か」


 勢いよく飛び出して行ったステイシーの背を見送り、クランはぼそりと呟いた。

 ちなみにではあるが、サバンナで食い繋ぐことだけなら、非常に容易い。

 なにせ大氾濫期ともなれば、あほみたいな量の肉が取れるのだ。

 乾季と雨季とさらにもう一季くらいなら、街一つが魔獣の肉のみで暮らして、なお余るほどの量が取れるのである。

 もちろん乾燥させた干し肉だけで暮らすのは辛いものがあるが、サバンナで飢え死に出来る者がいるのであれば、そういう自殺者か、他種族のみであった。

 他種族は獣人のように肉だけでは生きられない。

 馬の獣人でも、肉のみで生きていける。サバンナに適応した生き物が獣人であった。

 そして、エルフも肉だけで生きられる。適応する必要もなく、普通に。

 とはいえ、そんなサバンナであるから穀物は輸入が中心となる。

 大氾濫を乗り越えて街の外で穀物を育てるのは、なかなかにつらい。

 それならゴブリンが運び込んでくる米に頼り切った方が安くつくほどで、お肉食べ放題よりもご飯を丼一杯の方がお高くなっている。

 しかし、クランは焼肉には米が欲しいエルフだった。炊きたての米を提供する屋台はそれなりの値段をすることもあり、大した行列も出来ていない。

 美味いのにもったいない、と思いながらクランはタレの屋台に向かった。

 タレの屋台はまぁなんというか清潔感はない。

 なるべく早く回すためなのか、若い衆がやたらと威勢のいいかけ声をあげながらキビキビと動いている。

 手のひらサイズの小ぶりな壺、胸に抱えてちょうどいい程度の中ごろの壺の二種類を売っているようであり、威勢良く柄杓でぶちこむものだから、壺はタレでベタベタだ。

 まぁ外はともかく中身にへんなもん入ってるわけでもないだろうし、とクランは小さな壺を一つ買った。銅貨十枚だが、使い切った壺を持ってくれば、銅貨五枚を返してくれるらしい。


「色々よく出来てんだなあ」


 壺とどんぶりを抱えて歩くクランではあるが、大氾濫でたっぷり稼いだ連中の財布目当てなのだろう。屋台には肉以外の食べ物がしこたま並んでいる。

 あとで買いに来よう、とクランはいくつか目星をつけた。


「てめぇ、酒一つ買うのにどれだけ時間かけてんだ!」


 がしゃん、と壺の割れる音と共に、男の怒声がクランの耳に届いた。

 特になにかしよう、とかそういうわけではないが、騒ぎについ足を向けてしまうのがエルフの習性である。

 クランはフラフラとそちらへと向かった。


「す、すみません!お店が混んでたんです……!」


「それでも上手いことやりゃなんとでもなるんだよ、トモナぁ!?トロトロしてるから、オメーはダメなんだぞぉ!」


 すっかり出来上がった獣人は、猿だ。

 まだ外していない武装の隙間から見える肌は、全てが茶色の毛皮に覆われており、首の上には獣ではありえないような表情豊かな猿の顔が乗っている。

 顔を赤く染め、呂律の回らない有様はまぁひどいもので、ちびちびと焼肉を食べながらクダを巻いていた。

 その彼に怒られているのは、一見してほとんど獣の特徴が現れていない、小柄なちいさな少女だ。

 頭の上に垂れた犬の耳だけが生えていて、いっそ人間がちょっと変わったアクセサリーを付けていると言われた方が自然なほどに特徴が薄い。

 細っこい肩がむき出しになったワンピース、その裾からのぞく膝小僧が頼りない。

 彼女は眉を八の字にして、泣きそうになりながら猿の獣人の話を聞いていた。


「邪魔するぜ」


「あ、はい。え、なんなんですか、このエルフ」


 クランはなにやらもめている金網の、そのとなりの金網に陣取ると、傍観の構えを取った。


「だからよぉ、俺はいつも言ってんじゃねえか。あれをよぉ」


「あ、あれですか……?」


「俺がいつも言ってるあれだよぉ!?なんの話を聞いてたんだトモナおめえよぉ!」


「あ、あれですね!わかりましたよ、あれですよね!」


「あれとかそれとか、そういうので話すんじゃないよ!戦場で不明瞭な言葉は死に繋がるんだぞおいぃぃぃ!」


「ええー……はい、わかりました……」


 クランはじっと手元のご飯を見た。

 少し冷め、湯気はもう立ち上っていない。


「……うーん?悪いけど、あたしにあんたらの焼いた肉を一枚くれ」


「あ、はい。どうぞ。……えっと、なんならもっと食べてくださっても」


「……やめとけ。いくらすげー美人でも、変なエルフをナンパすると北に連れていかれるぞ」


「そ、そうだった……なんでこいつここで飯食ってんだろ……」


 背後でなにやらぼそぼそ話している連中に背を向け、クランは焼いた肉をちょっとタレにくぐらせると、ご飯の上にどんと乗せてみた。

 脂とよく混じり合ったタレがご飯に染み込み、見ているだけで生唾が湧き上がってくる。

 いかにも美味そうな光景で、クランは大口を開けて食べた。

 美味い。


「……ふむ」


 そして肉を失ったご飯は、どこか物悲しい。

 お米は好きだが、お米だけひたすら食う趣味はないのだ。

 すこし食べて天辺が欠けたあたりに、ぎゃあぎゃあと喚き、となりの網場で唾を飛ばす猿の顔を乗せてみた。


「ふむ……?ちっとも美味くないな?」


「なんでオメー、人の顔でどんぶり飯食ってんだオラァ!?」


「ああ!?ことわざにあんだろ、他人の喧嘩で飯が美味いって!」


「それはことわざじゃなくて、ただの性格悪い奴だからなオメー!?実際にやられると、酔いも醒めるくらいにこえーわ!?」


「なんだって!?あたしに色々教えてくれたジイさんたちがよく言ってたんだぞオラァ!……性格は確かに悪かったな、あいつら」


 ふむ、と一つ頷くクランは納得して、猿のいる網へと尻を移した。


「まぁなんだ、猿。自分の顔で飯食われてるの想像したら確かに、めちゃめちゃ気持ち悪かったわ。ごめん」


「お、おお……なんだ、素直に謝れるいい子かよ、オメー。おじさんテンションに着いていけねーぞ」


「あと肉分けてくれ。腹減った」


「好きにしろよ、なんなんだよコイツ!?トモナ、オメーなんとかしろよ!?」


「ええ!?はい、お肉もっと持ってきます!?」


「ちげーよ、そういうことじゃねえよ、俺をこいつと二人きりにすんなよ北に連れて行かれるだろうが!?こえーよ、こいつ!?」


 トモナと呼ばれた少女は、あっという間に人混みへと姿を消した。

 なかなか足はえーな、と思いながら、クランは肉を食う。


「なあ、あんた。頼みがあるんだ」


「北には行かないかねーからな、おじさんは。エルフはいつも北に行こうとするんだ!いくら俺だからって無理なもんは無理っつーに!」


「いくら俺って、あたしはあんたがどこの誰だか知らん」


「知らねーで来たのかよ!?逆におじさんビックリしたわ!?」


 テンションたけー猿だな、とクランは肉を数枚、金網の上に乗せた。

 なんの肉かはわからないが、赤身の強い肉はこりこりと強い食感が返ってきて面白い。


「いや、それで頼みがあるんだけど」


「なんだよオメー、おじさんのこと本当に知らねーのかよ。セイエンって言うんだけど」


「知らんけど。ちなみにあたしはクランだ」


「ああ、『担い手』の」


「ここまでその名前広まってんのかよ!?」


「友達のエルフがゲラゲラ笑いながら教えてくれたぞ」


「くそっ、どこのどいつだよ!?」


「ヴィヴァのバアさんだけど、知ってるけ?」


「そいつだよ、あたしにことわざって言って他人の喧嘩で飯食わせた奴!?」


「あー、あのバアさんなら言うなー」


 宮殿にいたクランを構う老人の一人が、ヴィヴァである。

 年の頃は八百かそこら。徹底的な武闘派で、一年の半分は戦場にいるような女傑だ。

 たまに宮殿にやってくると、クランと遊んでくれて色々と教えてくれたものである。

 そして、本当に時々。百に一つくらい、こうして適当な嘘をつくのだ。

 だから、まんまと騙されても仕方ない、とクランは思った。

 嘘を信じさせる最も有効な手段は、九十九の真実に一の嘘を混ぜることだ。

 そして、今回もその辺りで戦っているに違いない。


「それより頼みがあるって言ってんだろ、おい」


「俺はエルフからの依頼はゼッテー受けないことにしてんだっつーの。ろくなこと言わねーしさ」


「いや、依頼ってほどじゃねえよ。いいから聞けよ」


「ゼッテーやだね。北に行ったり、大魔獣と戦ったりしたくねーんだよ。おじさん、もう隠居の身なんだわ」


「なんだよ、大魔獣って。面白そうな響きじゃねーか!」


「やぶ蛇かよ!?そんなキラキラした目で見られても、ゼッテーやんねーわ!」


「なあ、ちょっと大魔獣の話教えてくれよ?な?いいだろ、ちょっとだけだからさ」


「うるせー!なんかお前怖い!?おじさんの生存本能にビンビンくる!?」


「へへへ、大丈夫だって。あんたに迷惑はかけないからさ」


「そう言ってヴィヴァのバアさんは、おじさんを大魔獣の前まで連れて行ったんだからな!?そ、それよりなんか頼みごとがあるんだろ?な、言ってみな?おじさん特別に聞いてやっから」


「え、あんたの近くに置いてある生のにんにくちょっと分けてくれよ。なんか一味足りないんだよな、このタレ」


「なんだったんだよ、今までの話!?時間の無駄じゃねーか!?」


「おっさんが一人で騒いでただけだろ。な、それよりさ」


 粗く潰した生のにんにくを、タレの中にどっさりと入れたクランはさっと肉をくぐらせた。

 にんにくの繊維が肉に絡みつき、ひたすらに刺激的な味へと生まれ変わる。

 そしてクランの尻は浮き、セイエンの真横へと降り立った。


「大魔獣の話してくれよ、おっさん。な、いいだろ?」


 キラキラと好奇心で輝くクランの瞳で見つめられ、落ちなかった老境の者はいない。

 そして、その輝かしい連勝の記録にセイエンの名が刻まれるまで、あとほんのわずかだった。




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