第3話 スライム
サンテが起床するまで、ロケットパンチでゴブリンを倒しまくっていた動く鎧。
ドロップした黒い小石……魔石をサンテに渡すも、彼女は袋も何も持っていなかった。
仕方がないので、鎧の鉄靴の中に入れておく事になった。
ガシャ、ガシャ、ガシャ、ガシャ。
ジャラン、ジャラン、ジャラン、ジャラン。
鎧が歩く度に摩擦で鎧が音をたて。
鉄靴に入れた魔石も小石を詰めたかのように音を立てている。
音に惹かれて集まるゴブリン。
そして放たれる両のロケットパンチ。
「鎧さん、凄い凄い!!」
ロケットパンチに興奮するサンテと、褒められて動作に喜びが感じられる様になった鎧。
背中にはくっついたまま出番がなくて、心なしか寂しそうに見える大盾と長剣があった……
ギュグルルルルルル〜。
「お腹すいた」
サンテが水も食料も非所持だったので、急遽目視距離にある森へと向かう。
疲れ知らずの鎧はガシャガシャと騒音を撒き散らしながらも、短時間で森へと到着していた。
早速腕を飛ばして、豊かに実っている果実をもぎ取る鎧。
そのまま腕をくっつけずに浮かべたまま、手にした果実を肩車しているサンテに渡す。
「いただきまーす」
果実を服で2度3度擦ってから、大きく口を開けて果実にかぶりついた。
「すっぱーーーい!! 何これ、食べられないよー。鎧さん、この木の実はだめだね。他の食べ物を探しに行こう?」
コクリ。
鎧はサンテを抱えると、森の奥を目指し歩き始めた。
太陽が真上へと差し掛かろうとするころ。
木でも目当ての食料でもない物が目に入った。
それは清水が固まって、歪な球体になった様な姿をしている。
それ自体に色はなく、背後の色を透過させて見せている。
おそらく地面に薄く広がれば、目視する事は非常に困難になるだろう。
これは発生したばかりで、何の特徴も持っていないスライム。
魔物ですらない、不思議生物と呼ばれている存在だ。
その証拠に。
魔物には骨だけの死霊系にも必ずあるはずの魔石を、スライムは体内に持っていないのだ。
「わー! なにあれー? 可愛いー!」
ピコーン!
サンテのセリフの直後。
明るい効果音と共に、今まで無反応だったスライムが。
サンテを目指してズリズリと這い進み始めた。
「おおおおおおーっ!ぷるぷるしてるのー!」
ただあまりにも動きが遅いため、数秒で我慢が出来なくなり。
肩車から飛び降りたサンテが、迎えに行って持ち上げたのだが。
鎧が腕にサンテを抱え、サンテが腹にスライムを乗せて森を進んでいく。
しばらく進むとゆっくりとではあるが、スライムが身体? の一部を伸ばし始めた。
「水玉さん、あっちに行きたいの?」
ピンポンピンポーン!
またも明るい音が響き、スライムは別の部分を伸ばして丸印を作っていた。
どうやら正解らしい。
「鎧さん、あっちにお願い」
コクリ。
鎧は頷くと、進路をスライムの示す方向へと変更した。
鎧の足で少しだけ歩くと、あのすっぱい果実と色違いの果実が成る木が見つかった。
「水玉さん。この実はすっぱくて食べられないんだよ?」
ブブー!
スライムはバツしるしを作り、間違いだと伝える。
「じゃあこの実は、すっぱくなくて食べられるの?」
ピンポンピンポーン!
丸を出すスライムに、サンテは大興奮。
「水玉さん、ありがとう。じゃあ鎧さ……わあー、もう取ってくれたんだ」
出来る鎧のはスライムがこの場に案内した時から、既にロケットパンチで果実を集めだしていた。
だからサンテが皆まで言う前に、眼前に果実を差し出してみせた。
「ありがとう、鎧さん! いただきまーす! あーん、んぐんぐ。んーーー美味しいー!」
それから20分あまり。
サンテは黙々と果実を食べ続けていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。