第13話 籠の中と外
穂乃花は当たりを見回し、誠を声を張りあげ呼び叫んだ。
しかし、誠からの返事は帰ることがなかった。
穂乃花の頭の中が真っ白になる。
そんなパニック状態の穂乃花に、籠が声をかけた。
『どうかなさいましたか?』
のんびりとした声だった。
「ま、誠が消えたの!!」
『誠さま?・・お連れ様の事ですか?』
「そう!! ねえ! どこに、どこに誠を何処にやったの!!」
『あの、お連れ様は籠にお乗りになっただけですが?』
「?・・」
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穂乃花が籠と話している頃、誠は呆然としていた。
ザルの上に立った瞬間、目の前の景色が変わったのだ。
今は、ガラスのような透明の半円の中に閉じ込められている。
透明度は抜群で、歪みもなく外の景色がよく見える。
不思議と太陽を直接見ても眩しくない。
後ろを振り向くと穂乃花が見えた。
穂乃花は何か焦った顔をして話しているように見える・・
声は聞こえない・
何かあったのだろうか?
そう思いつつ、目線を下げた。
そこには四角い箱のような椅子がある。
まるでプラスチックで造られた箱で、半透明の薄い緑色だ。
背もたれは無い・・・
その椅子のような物以外、他には何もない。
360度、よく景色が見える。
不思議な空間だ・・
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誠が不思議な空間に戸惑っていた時、穂乃花は穂乃花で呆然としていた。
籠の言葉の意味を理解できなかった。
誠さんは消えしまった・・でも、籠に乗っている?
乗ると見えなくなる?
訳がわからない・・
「誠さんは籠の中にいるの?・・」
『はい。そうですが?』
「・・」
『お連れ様とお話をなさいますか?』
「え、ええ、話しをさせて・・下さい」
『分かりました。 では、そのままお話下さい』
「あ、えっと・・誠さん?」
「え? あ、穂乃花?・・外の音が聞こえるようにできるのか・・」
「ま、誠さん? だよね」
「うん、そうだけど?」
穂乃花からは誠は見えない。
目の前のザル・・いや、籠に向って話している。
一方、誠からは目の前に穂乃花が見えている。
そのため、誠は穂乃花が何を不安そうにしているのか理解できない。
「どうしたんだ? 穂乃花?」
「え、あ、その、誠さんが消えてしまって・・」
「消えた? 俺が?・・ 何の話し?」
「いえ、だから、誠さんがザルに乗ったら、忽然と消えたの!」
「え? 俺は穂乃花の目の前にいるし、穂乃花は俺の目の前にいるよ?」
「・・・もしかして、誠さんからは私が見えるの?」
「え? ああ、見えるよ?」
その言葉を聞いて、穂乃花はザルに近づき手を伸ばす。
しかし、むなしく手は空を
一方、誠からは穂乃花が手を伸ばしてくるのが見えた。
その手は、誠の体を貫いた。
「えっ!!」
「ど、どうしたの!!」
誠の驚いた声に、穂乃花は驚き、手を引っ込めて仰け反ってしまった。
誠は穂乃花の手が体から出て引っ込められて行くのを見ていた。
誠は、しばし呆然とした。
しかし、直ぐに冷静に考え始めた・・・
もしかして外の景色を立体的に写しているのではないのか?
籠に聞いてみよう・・
あ? 何て話しかければいいのだろう?
え~と・・思いつかない。
いいや、籠さんと呼ぼう。
そう思い、籠に話しかけた。
「ねえ、籠さん、俺が見ている外の景色は立体映像かな?」
『はい、そうです。 外の映像を投影しています』
「なるほどね・・、で、俺のいる場所は穂乃花とは別の空間?」
『穂乃花様? お連れ様でしょうか?』
「ああ、ごめん、そう、連れの名前」
『そういうことでしたら、別の空間となります』
「やはり・・」
『あの・・もしかして籠に乗ったことがないのですか?』
「ええ・・ですから、ちょっと驚いているんだ」
『そうでしたか・・それでお二人はきょど・・、いえ、驚いているのですね?』
今、挙動不審者と言おうとしたな?
思わず苦笑いが漏れる。
「ま、誠さん?」
「あ、ああ、穂乃花、今の籠さんの説明で理解した?」
「え? そ、それより! 誠さん、大丈夫?!」
「ああ、俺なら大丈夫だよ」
「よかった・・本当に・・」
そういうと穂乃花は、崩れ落ちるように座り込んでしまった。
だいぶ、心配をかけたようだ。
それに、何より不安だったんだと理解した。
「穂乃花、ごめん、不安にさせて・・」
穂乃花は、誠の言葉を聞くと、俯いて手で顔を覆った。
「誠さんが消えてしまい・・
誠さんの事が心配で、心配で・・
そ、それに・・不安で・・私、一人だけ取り残されたかと・・」
そう言って穂乃花が泣き始めた。
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