第43話 目立ちましょう、二人して。クリフォード様とのダンス

「リナ嬢、私と踊って頂けますでしょうか?」

「喜んで、お受け致します」

 2人とも、形式的な礼をとる。


「では、もうすぐ曲が変わりますので、よろしいでしょうか?」

「は……い?」

「はい」と言いかけて、変な風になった。だってこれ……。

 この曲って……難易度高かったんじゃ……。って言うか、無理だ。踊れない。

 ほら、だって結構な人が戻ってきている。

「あの……わたくし」

「大丈夫。私の動きに合わせてください。ご婦人に、恥を掻かせるようなまねはしませんよ。顔を上げて。颯爽と行きましょう」

 クリフォードは、私の腰を抱き。私にとっては大股で会場の中央に出る。


 曲が始まると同時に、私を抱き上げファッと舞わせた。

 意外、と言うか力が強い。

 抱き上げるだけでは無くて、空中で舞わせるなんて。

 うわ~と会場が沸く。割と密着して動くので、押されて自然と足が動く。本来なら、女性の足裁きの難易度が高いところを、抱き上げて誤魔化してくれるから、ドレスの翻りもあって、かえって派手に見えた。

 なにより、楽しい。アップテンポの曲で、このノリ。

 何か昔、父から抱っこされてクルクル回ったのを思い出す。

 曲が終わったとき、盛大な拍手をもらった。


 私は楽しい気分のまま、満面の笑顔でクリフォードに言う。

「たのしかった~。ありがとうございました」

 クリフォードは、少し驚いた顔をしたが、すぐに笑顔になり

「こちらこそ、楽しかったですよ」

 と、言って踊りの最後の礼をした。


 戻ったら、クラスの皆が、絶賛してくれた。

 兄にジュースをもらう。なんか複雑そうな顔で言う。

「楽しそうだったな」

「なんか、昔お父様に抱っこされてクルクル回ったときみたいに、楽しかったです」

「まさかの、お父様認定。クリフォード様って25才くらいじゃなかったか?」

「年齢じゃ無いでしょう? でも、まぁ向こうも目立つのが目的だったみたいだし、良いんじゃないですか?」


 向こうも……。そう、こっちも目立ちたかった。

 第二王子派のセドリックと親しくなり。

 王太子派のクリフォードと一緒に無邪気に踊る。

 何も考えてない子ども。

 何も考えてないから、前回の事件にも巻き込まれた。ジークフリートから斬られそうになったのも、利用する。


 どうしたって私は、裏方になれない。

 デビュタントでの出来事と、年齢より幼くみえる美少女アバター。どうしたって目立つ。

 ならば、表舞台で目立って動き。裏方の目くらましになれば良い。

 まぁ、満場一致で反対食らったけどね。

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