第13話 リナのデビュタント 宰相と父の攻防 

「あの場には、色々な立場の貴族がそろってました。ですからリナ様にはいち早くこちらに来て頂いたのですよ」

 今まで黙っていた宰相が言う。それでも、父は頑張ってくれた。

「まだ、物の道理も分かってない子どもです。謁見の場での言動がどのようなものか知りませんが。無知ゆえ、公式の場の怖さが分からなかったのでしょう。けっして、勇気などではありません」


「子どもは、子どもという立場を利用したり、王様の言質をとって無礼な言動が許される場をつくったりしないと思いますよ」

「は?」

 父の間抜けな顔も初めて見た。王様、肩振るわせて俯いてるよ。

 絶対、笑いこらえてる。


「今まで、学園からの報告は大げさに書かれた物だと思ってましたからね。私も謁見の場にいなければ信じませんでしたよ」

 宰相はため息を付きながら私を見る。

「なんせ、実年齢15才。今日がデビュタントの儚く可憐な容姿をしている少女の中身がアレなんて……」

 アレとは何だ。アレとは……。失礼だな。


「立場を明確にしとかないと、ご令嬢の争奪戦が始まりますよ。失礼ですが、今の身分のままでは揉みくちゃにされかねない」

 まぁ……貴族って、物語でも歴史の中でも汚いことやってのける奴ら多いみたいだし。この世界、曖昧なようで身分差きっちりあるし。

 でも、さっきのやりとりから、ずっと気になっていることがあるんだけど……。


「あのう……。ちょっと、訊いて良いですか?」

 おずおずと、前世のノリで手を挙げると

「はい。リナ嬢」

 と、王様がのってきた。ノリ良いな。

「もしかしたら……もしかしたらですよ。わたしがバカ丸出しで王子たちの言いなりになってたら、目をつけられなかった……とか?」

「それは……まぁ、その通りだな。でも、父親を釣るエサくらいには、なってたかな…」

 今日の父を見る限りでは、自分のことなら簡単に切り抜けただろう。

 今までの努力。全否定かよ。ガックリ。


「初めのセーブポイントからの、やり直しを要求します」

 ボソッと言ったつもりだったのに


「「「せーぶ?……なんだって?」」」

 と、全員から突っ込み入れられてしまった。

 息合ってんじゃないか、こんちくしょう。


 本当は仲良いんじゃ無いだろうな、父よ。

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