神使の怒り 4-3




道警本部鑑識課のドアをノックした五十嵐が愛音と一緒に室内に入ると、険しい表情の黒崎と目が合った。


殺人事件ならまだしも、動物の虐殺事件の調査なんて所轄の仕事だろ…と、思っていた黒崎にとっては、膨大な仕事を抱えている中、面倒な仕事が回ってきたとしか言いようがない。


しかし、それでも仕事は仕事だ。


動物の専門家の意見もちょうだいし、猫の死因について徹底的に調べて資料まで作成した。


「一応調べておいたが、猫の死体を調べるなんて俺の経験では始めてだぞ?」


黒崎は五十嵐に資料を手渡し、重要点のみ抜粋して読む。


「全身7か所、果物ナイフのようなもので刺されてる。かなりの出血量だったが…死因は窒息死だ。あっちこっち刺されて、気管に血が詰まったらしい。どの刺し傷が致命傷か、おおよそ見当はついているが、はっきりと断言はできないってよ」


獣医からの情報をコンパクトにまとめて話した黒崎だったが、分かっている情報を改めて聞かされただけだった。ただ、資料には胸と首にある刺し傷のどちらかが致命傷である可能性が高いと書かれている。


それを読みながら愛音は小さく唸った。


「窒息死?確かにライト君の父親は生きてるか分からない程呼吸も浅かったって言ってたけど……」


しかし、黒崎の見解はその資料に書かれたものとは全く違うようだった。


「俺があの動画を見た限りじゃ、あの状態で発見されて、あんな短い時間の間に死ぬのはおかしいと思ったが?家に入って鍵を取って来る数秒だろ?しかも都合よく死んだ瞬間が映ってない」


黒崎もまた、どこかの誰かと似たようなことを言って、五十嵐と愛音を混乱させる。


「つまり…カメラを間に何かが起きた……。そう言いたいんですか?」


五十嵐がそう訊くと、「俺はそう疑うね」と、黒崎は答え、自分のデスクへと向かった。


「ライト君が犯人だとすると、動物はどうやって選んでるんですかね?やっぱり地下室に動物が監禁されてるんですかね?」


下校中の学生たちを尾行していた愛音は、運転席でハンドルに両腕を乗せ、その上から自分の顎を乗せてリラックスした態勢で、助手席に座って缶コーヒーを飲む五十嵐にそう訊いた。


歩道を歩いているのはライトとガンの二人。


いつもはライトとガンと海治の三人でいることが多いのに、今日はなぜか海治の姿はない。


ライトとガンはいつも通り冗談を言いながらスマホを掲げて動画撮影を始めそうな雰囲気だ。


「折原が言ってたことをまとめれば犯人はライトで間違いないだろうな。しかし、動機がさっぱり分からん。一軒家に住んでて自由もあって、友達もいる。どちらかと言うと恵まれた環境にいるはずなのにな……」


「でも…まだ高校生ですよ?あどけない顔して友達と冗談言って笑ってるのに、裏では動物殺しを行っているなんて……。しかも海治君は誰よりもこの犯人を憎んでる。収拾つきませんよ」


「でもまあ…父親の線もあるかもしれないな。父親が戻ってきてから動物の死体が放置され始めたんだ。玄関前に虐待した猫を放置することも可能だろう」


「ああ…その線もあるか。もしくは親子で共犯か」


どの道、警察は三浦親子を容疑者として見ていることに違いない。







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