神使の怒り

神使の怒り 1-1




暗い部屋の中、彼は毎日その時間だけを待っている。


カサカサと聞こえる音は、他の誰かの足音だろうか。


狭い檻に入れられた彼らは、たったひとつの天井の扉が開かれるのを待っている。


部屋の空気は薄く、埃っぽい。

掃除もされていないから異臭が漂っているし、身体中がかゆくて仕方なかった。


助けを求めて声を上げると、ひどい暴力を受けることを知っている。


檻から逃げ出せたところで、天井にある扉から脱出できた者はいない。


彼らはただ、毎日与えられる食事だけを楽しみに生きるだけ。


この地獄はいつになったら終わるのだろう……。




ギィィ……




天井の扉が開かれた途端、部屋の中の空気が変わった。


彼もまた檻の中で身を起こし、その場に座って待つ。


待ち望んでいた食事の時間かと思ったが、はしごを下りてきた男は、一番手前の檻の中から小さな女の子の首を掴まえて引っ張り出し、片手で胸に抱えて、再びはしごを上っていった。


彼女は泣くこともせず、黙って視線をこちらに向けて救いを求めていた。


助けられるなら初めからやっている。


彼もまた檻に閉じ込められた身。


檻から出られなければ自由に動き回る事も、助けてやることもできない。


絶望という言葉ではこの感情は語れないかもしれない。


助けが来ることなど期待もできないし、時の流れすら分からなくなってしまった。


いつかこの生活に終わりは来るのだろうか……。


天井の扉が閉じられ、再び暗闇が訪れると、彼は力尽きるように地面に身体を横たえた―――。








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