殺人鬼に告ぐ 2-2



「頼むから今日は予言するなよ」


五十嵐も昨夜は寝ていないのか、目の下にくっきりとくまを作っていた。


運転席に座る五十嵐に視線を向け、彩香は口を閉ざした。


苛立っている理由は分かっている。

しかし、それを取り除くのはどうやら今は無理のようだ。


小学校が近づいて、彩香は目を細めた。


昨日より道路脇に停まっている車の数が減っている。


朝だからか、遺体の回収が一段落したからか……。


校庭に車を止めると、二人は車から降りた。


昨日と違って大きな荷物が無い事が楽だった。


たまたま外の空気を吸いに校庭に出ていた緒方が二人の姿を見つけて走り寄ってきた。


「五十嵐くーん!俺も連れてってよぉ!もう山から出たい……」


「事件解決までダメです。マック買ってきたのでそれで我慢してください」


一瞬、緒方の目が光った。


昨日の朝から仕出しの弁当や給食みたいな食事しかできなかったため、ファーストフードのような味の濃い食べ物が食べたかったのだ。


緒方は「マック!」と、叫びながら、後部座席に置かれた大量の袋を持ち、校内に駆けて行った。


「警察官も大変なのね」


彩香がつぶやくと、五十嵐が鼻で笑う。


「そんなちっぽけな言葉で片付けんなよ。夜も寝ないで必死に働いてるんだから」


「うん…。ごめん」


彩香が小声でつぶやいたのを聞いて、五十嵐は我に返った。


彩香が無表情だったから気付かなかったが、被害者の中には彩香の祖母もいるかもしれないのだ。自分たちを気遣うよりも、本当は「祖母を見つけて」と、大きな声で訴えたいところだろう。


彩香といるとどうしても調子が狂う。


もっと普通の人のように感情をむき出しにしてくれれば、受け止める側も楽なのに。


眠っていないせいか、側頭部が痛い。

指先で軽くマッサージしていると、目の前に薬が差し出された。


驚いて振り返ると、彩香が手を差し出していた。


「寝不足になると血流が悪くなって頭痛が起きるの。薬のアレルギーとか他に服用している薬がないなら、それでも多少は効くと思うから」


五十嵐の手のひらに薬をのせると、彩香は学校へ向かって歩き出した。


分からないことだらけだ。

30体の遺体と予言者である同級生。

まるで映画の世界の住人になったようだ。


この平和な大地でこんな猟奇的な殺人事件が起こるなんて、誰も予想していなかっただろう。

















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