悠久の旅人
小高い丘の斜面から
「もうすぐ焼けんべ。お侍様も食べねぇかい?」
「かたじけない」
笑顔の子供たちに混じって、焼き芋を頬張る。旨くもないが、不味くもなかった。
不意に山間を抜ける風にのってやって来たのは、獣と血の
「ねー、ねー。お侍さまは、どこへ行くの?」
焼き芋を逸早く食べ終えてしまった一番背の低い鼻垂れ小僧が、元気よく旅の行き先を
「さあ……どこだろうな」
悲しそうに
「かっけぇーなぁ、あのお侍さま」
言い終えてすぐ、鼻水をすすった小僧は、小さくなっていく長襦袢を見送りながら、笑顔をみせて焼き芋を食べ尽くす。
秋空の下、男は今日も何処へと旅立つのか。
風にそよぐ銀色の穂波が、ケラケラと笑い声のようにいつまでも音をたてていた。
第一部【完】
魔剣士ZANKUROU 黒巻雷鳴 @Raimei_lalala
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