声
二度と耳に届くことのない声。
空に吸い込まれたきり、取り戻すことのできない声。
声には、形がない。
目に映ったものよりもずっと曖昧で、不確かで——それはみるみる記憶から薄れていく。
録音でもしない限り、写真のように気軽に記録に残すこともできない。
まっすぐに思いを届けてくれた声は、決して忘れたくない宝物なのに。
その宝物は、一つも手元に残っていない。
その声を——聞いたまま、耳に蘇らせることができたら。
どんなに幸せだろう。
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