第27話「ブレイクタイム・ブレイク」
「--------ということで、私の話はこれにておしまい」
傾聴していた3人は小さな拍手を返す。
そして一転、美少女とハーフエルフとメイドが小難しい顔で思考に耽る。
「やはりマリーの撃ち出した魔法の謎が深まるね」
「ですです。エルフでもあれほどの魔法を放つのは至難のです」
「もしやとは思いますが、マリー様の系譜は「魔女」ではありませんか?」
「どうなんだいマリー。君の両親は魔女だとか高名な魔法使いだったりは」
「しません」
訳の分からない話題の渦中に投げ込まれ、マリーはぶっきらぼうに答えた。異世界トークに関われないのはよしとしても、蚊帳の外で話を進められるのは面白くない。
「第一、私は親の顔も見たことないもの。幼少は施設、14からマンションの一部屋与えられてずっと一人暮らし」
「資金はどうしたんだい?」
「匿名の融資があったの。顔も知らぬ娘を不憫に思った馬鹿親の、せめてもの罪滅ぼしじゃない?」
マリーの声変わり心なしか荒くれた。若干の怒気を感じ取ったセーネはこれ以上追及することはない。
重くなった空気を察知したできるメイドことシャーロットは、無機質な声を無理に上擦らせて陽気に振る舞う。
「わたくし、件のミチチカ様の「魔剣」なるものにも興味がございます。竜人の炎や魔法の光弾を斬ったかと思えば、山岳を崩す一撃を放ったとは。失礼ですが未だ半信半疑です」
「でも本当の話です。私も目にしました」
シャーロットとソフィ、2人のハンナが気丈に振る舞い暗くなった空気を振り払う。
その努力の甲斐あってか、マリーもいつもの明るさで会話を返す。
「私も何がなんだかだよ。ミッチーが二度目の異世界転生だの、魔剣がどうだのは全く知らないんだよねー。秘密主義と言うより、遠ざけられているみたい」
「確かに、その節は見受けられましたね」
寂しそうに俯くマリーにソフィが同調する。
「その辺りは本人に尋ねてみるとしよう。
聞く限りミチチカは強者のようだ。雪崩くらいではくたばらなかろう」
「セーネ様の仰る通りでございます。
「ありがと」
励ましを受け止めマリーは素直に喜びを表した。
「さて、次は僕たちの身の上と置かれている現状を話さなければならな」
重苦しい雰囲気から一転して和やかに歓談するレディースの元に、1人の伝令が飛び込んできた。
「失礼します!!」
「何々どなた!?」
「安心したまえ、僕たちの仲間だよ」
扉を蹴破らんとする勢いの伝令にマリーは飛んで驚いた。セーネに宥められマリーは椅子に着き直したが。まだ鼓動は収まらない。
呼吸を乱し深く被ったフードから覗く伝令の顔色は青ざめている。
切羽詰まった伝令に対し、セーネは的確な指示をシャーロットに下した。
「水を一杯やってくれ。落ち着いて話を聞こう」
「かしこまりました」
シャーロットは指示に従い素早くグラスを伝令に手渡した。
伝令は差し出された水を一息に煽ると呼吸を整え口火を切った。
「探し人が見付かりました!」
マリーが顔色を変えて食い付く。
「ミッチーが!? どこにいるの!?」
「それが……」
しかし伝令の歯切れは悪い。言い辛そうに苦い表情をして言い淀む。
そんな伝令に痺れを切らしたセーネが喝を入れた。
「早く言いたまえ。何か不都合があったのならば対応しなければならないだろう?」
「申し訳ありません」
頭を垂れた伝令が意を決して答えた。
「それが……、"エルドレイク"の街でして……」
「え」
「えぇ」
「えぇっ!?」
マリーを除く全員の顔が青ざめる。
またまた話題に置いていかれはマリーは憮然とした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます