第264話「君達仲良いの? 悪いの?」
「この街は穢れている……!」
「う、うん?」
見よ我が友・綾女よ、この商店街に渦巻く混沌を!
薄汚い人間共が我が物顔で跋扈し! 道行く車がガスを排気し! そこかしこに欲の入り交じる営みが形成され、まるで掃き溜めにいるようだ!
そしてなにより──!
「空き缶が……側溝に捨てられた空き缶が泣いておるわ!」
「はい、刃君。空き缶はこっちの青い袋ね。ふふ、刃君がいてくれると深いところまで手が届いて助かっちゃうなぁ」
嬉しそうに言って「はい」とゴミ袋の口を広げる綾女だが、俺は今激憤に駆られている! 何が清掃ボランティアか!!
「くっ、俺には聞こえるのだ……『どうしてリサイクルできるように作ってくれたのに、私をそうしてくれなかったの……?』と嘆く空き缶の悲哀が……!」
「そ、それは確かに可哀想かも……」
「そら見ろ、逆さにすれば滂沱の涙よ……!」
「飲み残しと雨水だね……」
道具とは、正しく使われてこそ美しい。むしろ勝手にその身を設計しておきながら、なぜ性能通りに使おうとしない! まったくもってけしからん!
涙の尽きた空き缶を袋にそっと埋葬した俺は、火箸をカチカチと威嚇するように鳴らす。これは狼煙である……!
「捨てられし同胞達よ。同じ道具として、この俺が救ってやらねば……!」
「なんだか軽く誘っちゃった私が申し訳なく思えてきたかも」
冷や汗を流して頬をポリポリと掻く綾女だが、これは人間の自分勝手さを再認識するいい機会だ。最近の俺は少し、甘やかしすぎていたのかもしれん。
「得意だぞ、“ゴミ掃除”はなぁ……」
「ニュアンス合ってるのかなぁ……」
そう、俺は今、綾女に誘われ放課後の清掃ボランティアに精を出している。主と妹にはこのような下働きなどさせられないため、彼女達は先に屋敷へ帰した。
とはいえ、この無双の戦鬼とてなぜこのようなことを、と思わないでもなかったが……綾女に上目遣いで「行こ?」と誘われればいつの間にかここへ来てしまっていた。まったく罪な少女よ。
「よーし、刃君も頑張ってるし、私も負けてられないや!」
そんなカフェオレ色の髪を揺らす少女は、こちらの影響を受け「むんっ」と手袋に包まれた拳を握っている。清掃場所も彼女にとって馴染み深い商店街のため、より一層燃えているようだ。
他の生徒達も参加する姿がちらほらと見受けられる中、俺達二人はほぼペアとなって行動を共にしている。綾女の服が汚れぬよう注意しておかねばな。
そうして屋根に覆われた商店街の道を、ゴミを拾いながら二人三脚で歩いていく。屋根があるため雪と風の心配はないが、やはりまだまだ冬の盛り。身体が冷えていないか気にかかるものだ。
綾女も制服の上にベージュ色のコートを着ているとはいえ、その裾からは彼女の細い足が晒されている。
「寒くないか、綾女。寒かったら遠慮なく言うのだぞ」
「うん、ありがとっ。ちなみに言ったらどうなるの? カイロでも分けてくれるのかな?」
「分けるのは俺の体温だ。我がコートへ、綾女を後ろから誘おう」
「その二人羽織は恥ずかしいので大丈夫です……」
頬を染めた綾女は、控えめに遠慮を示した。刀花ならば袋を見つけた猫のように喜んで飛び込んでくるのだが……残念だ。
「そんなことしたら商店街の人達にからかわれちゃうよ……」
さすがに身内の多い場では、綾女も遠慮が勝る。だがそう言うだけはあり、綾女の姿を見れば声をかけてくる者の多いことよ。綾女もそれに応え、朗らかに笑っている。
「お帰り、綾女ちゃん」
「ただいまっ」
「ああ、薄野さんとこの……頑張ってるねぇ。あとでうちに寄りな、魚を捌いておくよ」
「わ、ありがとうございます! じゃあ帰りに寄らせてもらいますね」
「あらぁ綾女ちゃんいつもお疲れ様、本当に良い子ねぇ。どう? うちの子と結婚しない?」
「ふふ、まだ半年なのに気が早いですよぉ。ねー?」
赤ん坊を笑顔であやす綾女。その姿を見れば、彼女がきっと将来、とても素晴らしい女性に成長するであろうことが窺える。嫁に欲しい。
下町気質のこの場では、まるで綾女が全員の娘のように可愛がられている。見ていて心暖まる光景だ。そしてやはりこのような場にゴミを捨てていく人間は屑だな。鏖殺してくれようか……。
「ああ、そちらは先生ですか? いつも清掃、ありがとうございます。私達だけではなかなか細かいところまでは手が回りませんで……」
「いや……」
そして俺はなぜか教師と間違われることが多い。なぜだ、この制服が見えぬのか? ピチピチの千と十七歳だというのに……。
差し入れという名の暖かいコーヒーを渡され唸る俺を、綾女がクスクスと笑いつつも間違いを訂正してくれている。
「もう違いますよ、先生じゃなくてクラスメイトなんです」
「あらっ、じゃあ彼氏ぃ? んもう綾女ちゃんも隅に置けないんだから。回覧板で回さなきゃ」
「ちっ、違いますってー!?」
好機──!
「バレては仕方ない。当方、薄野綾女とお付き合いをさせていただいている酒上──」
「じ、刃君っ、こらっ! 本当に面白半分で吹聴されちゃうから!」
真っ赤な顔でワタワタと慌てる綾女も可愛らしい。いつか本当にそう喧伝できる日が来ないものか……。
「もー……」
ぷくっと頬を膨らませた綾女が、膨らんだゴミ袋を交換しにこの場から離れる。少し離れた場に、担当教員が替えの袋を持って指導をしているのだ。
その小さな背を微笑ましく見送っていれば……、
「あ、あの……酒上君?」
「む……?」
同じく、薫風のセーラー服に身を包む少女に横合いから声をかけられた。
控え目な印象で、目も落ち着きなく泳いでいる。そして後方で複数の女子生徒が、まるで見守るようにこの少女を見ているのも気になる。
「えっと、その……」
視線のみで促せば、なにやら少女は手をこねこねとし、
「甘いのと苦いの、どっちが好き……?」
「……?」
そんな不可思議な質問をされた。我が味覚が、貴様に何の関係があるというのか。
一体どういった思惑かと、その女の瞳を覗き込めば「あわ、あわ」と徐々にその顔が赤くなる。
「……」
「は、はぅ……」
害意は無さそうだ。ならば早々に断ち切るが良策。綾女との時間を邪魔されるわけにはいかない。
「好みなど無い」
「あ、そう、ですか……」
単刀直入にそう告げれば、目の前の少女はどこか気落ちしたような声を漏らす。
我こそは怨嗟を食む妖刀。感情を主食とする俺にとって、料理の味付けなど殊更重要なことではない。なればこそ……、
「そこに強い感情が籠っていれば、それが好みとなる」
「へっ、強い……感情……?」
「ああ。憎悪でも、それこそ愛でもだ」
「あ、愛っ……!」
なぜかビクッとして頬を染める少女に頷く。
無論。大好物はもちろん仄昏き感情であるが、妹の愛情の籠った料理を食べてきた手前、そちらもまた捨てがたい。
「ぁ、ぁりがとぅござぃました……」
俺の答えを聞いた少女が、小さくそう言ってそそくさと後方のグループへと戻っていく。しばらくすると「きゃあきゃあ!」という歓声がこちらに響いてきた。
「……面妖な」
「ただいまー。あれ、どうしたの?」
「今し方、妙な質問をされてな」
新たなゴミ袋を片手に戻ってきた綾女に、先程の一幕を説明する。
「あ、あー……なるほどぉ~……」
すると綾女は、なんとも複雑そうな笑みを浮かべるのだった。分かるのか?
「見ず知らずの人間に食の好みなど聞いてどうするという。意識調査か?」
「そ、そりゃあ……」
口ごもる綾女が、もじもじと身体を揺らす。
「ち、ちなみになんて答えたの?」
「『強い感情が籠っていればいい』と」
「ああ……だからあんな顔でこっち見てるんだ……」
チラリと綾女がため息と共に後方のグループを見れば、どこか熱に浮かされたような色を浮かべる女子生徒達がいる。
「それで、何か知っているのか」
「ま、まぁ……きっとあれだよ。来月のイベントが近いからじゃないかな?」
「来月?」
現在、一月の下旬。二月になんぞあったものか。
首を捻っていれば、綾女もなにやら恥じらった様子で唇を動かす。
「ほ、ほら。あるじゃん? 恋する乙女的な行事がさ……」
「……ああ、なるほどな」
得心がいった。しかし解せんな。
「知っているぞ。バレンタインであろう?」
「お、おぉ……さすがに知ってるよね」
「だがバレンタインといえば、"恋する妹からチョコレートを貰う日"であろう? なぜ他の女がしゃしゃり出ようとする」
「うーん垣間見える刀花ちゃんの歪んだ教育の片鱗……」
なにっ? バレンタインは妹専用のイベントではないのか!?
驚愕に目を見開いていれば、綾女が「違うって……えっとね?」と苦笑を浮かべてバレンタインの概要を説明してくれた。
「なんだと……」
「ま、まぁそういうことだよ。よかったね、刃君。今年は刀花ちゃん以外の子からも貰えちゃうかもだ。……っていうか、私にも聞かれたし。『薄野さんって酒上君係でしょ? 知らない?』って……私はクラス委員長なだけのはずなんだけどなー……」
なにやら綾女が遠い目をしている。どこかで俺に関連することで迷惑をかけたのかもしれん。
「『だっていつも薄野さんが酒上君をガードしてるんだもーん』って言われた私はどうしていいのか分からないよ……」
儚そうに呟いている。だが、なるほどな。
「では、綾女もくれるのか?」
「へっ? まぁ……その……ねぇ?」
「本命か? 義理か?」
「そういう概念は知ってるんだ……お、お楽しみということで……」
くれるらしい。その顏の赤みからして、これは来月が楽しみになってきたな。それともこちらも何か贈った方が良いのだろうか。
じいっと期待を込めた目で綾女を見ていれば、彼女は「あ、あはは……」と曖昧に笑って清掃活動に戻ろうとする。恥じらう乙女はなぜ斯様に胸をときめかせるのか。
「あ、ゴミあった。よいしょ……うーん、取れない~……」
誤魔化すようにそう言って、綾女は身を屈めて火箸を伸ばす。自販機と自販機の間、その深いところにゴミがあるようだが……むむ。
「よいしょ、よいしょ……!」
その姿勢……危険だと判断する。
前屈みになった綾女は、こちらにそのお尻を突き出すような姿勢となり、彼女が身を動かす度にフリフリと挑発するようにその臀部が揺れる。重力に従って張り付いたスカートが、その丸みを殊更に際立たせておるわ。
「よい、しょ……!」
「むっ」
そうして更に身を屈めれば、スカートの裾が徐々に持ち上がっていく。こちらからはもう既に、真っ白な太股がほとんど見えてしまっていた。
さて、俺はどうするべきか。
ここで綾女を諌めてやめさせるか、それともその可憐な布地を指摘して彼女の恥じらいを堪能するか。
「いや……」
ここは衆目もある。そやつらに彼女の秘めたる布地を見られるのはいかん。許せん。きっと綾女も傷付く。
綾女の下着を見てもいいのは彼女の家族と俺のみと相場は決まっているのだからな……!
「綾女──」
瞬時に判断して、呼びかけながらそのスカートに手を伸ばす。隠すと同時に彼女を下がらせるために。
「待てえぇい!!」
だがそこに──義憤に駆られし一陣の風が吹き込んできた!
「あ、あぶねぇー! 後ろに薄野ちゃんの安産型お尻を触ろうとする変態がー!」
「わっ、先輩!?」
その者は俺と綾女の間に立ち塞がり、まるで彼女を守護せんが如く両手を広げる。むむっ。
「誰だ貴様っ!!」
「ふ、あどけない薄野ちゃんの肉感的なお尻を守る、変態退治の専門家──ガーネットちゃッ!! おぉっとぉ、薄野ちゃんのおぱんちゅを拝謁しようったってそうはいかねぇ。このガーネットちゃんの瞳がピンクなうちはよぉ!」
「え、刃君……?」
唐突に割り込んで来た吉良坂の言葉に、綾女がショックを受けたような顔をするが誤解だ。
「俺は捲れ上がるスカートを下げようとしただけだ」
「あ、そうなんだ。ありがと刃君」
即座に疑いを取り下げる綾女はさすがだ。吉良坂は不服そうであるが。
「軽ぅい! そして嘘つけぇ! あたしはこれまでのボランティアでも、薄野ちゃんが無防備に屈もうとする度にこうやってインターセプトしてきたんでい! このポン刀は明らかに他の男子生徒同様、その花園を覗こうとしてたね! てやんでい! 薄野ちゃんのおぱんちゅは、あたしが守護る!! でも実はあたしがこっそり見てたのは勘弁な!」
「先輩……」
貴様の尊厳が現在進行形で砕かれているのは構わないのか? 綾女が残念そうに見ているぞ。
「ふん……カツラを被った魔法使い風情が」
「あたしがハゲてるみたいに言うんじゃねぇ! 童子切が黒染めしてくんないからじゃんかケチー!」
美容室へ行け。
それにしても先程の言い分、なんとも笑止千万。綾女の下着風情でこの俺に"まうんと"を取ろうとは片腹痛し。
俺は腕を組み、喚く吉良坂に向け見下げ果てた視線を投げた。
「その程度でこの無双の戦鬼を出し抜いたつもりか?」
「チェリチェリボーイは黙らっしゃい! 知ってんだかんなぁ、薄野ちゃんとはお手手つないだくらいしかしてねぇってなぁ! クス、お可愛いこと……」
なにやら顎に手を当てほくそ笑む吉良坂だが、些か情報が古いようだな。
綾女が「先輩、やめてください……」と赤くなるのを横目に、俺は更にふんぞり返った。
「痴れ者が。綾女については既にうちに泊まらせもしたし、湯上がりの姿もこの目に収めたこともあるぞ」
「なん……だと……!?」
「じ、刃君っ!」
フラつく吉良坂に哄笑を上げる。
フハハハハハハ! 魔法少女、恐るるに足らず!
「綾女はいただいていくぞ」
「て、テメー……! あ、あたしは薄野ちゃんにお弁当作ってもらったことあるし!」
「俺はむしろ作って“あーん”で食べさせたぞ」
「ぐぬぬ、薄野ちゃんの飲みさしを飲んだことあるし! 薄野ちゃんがトイレに行った隙にだけど!」
「先輩……」
退治しなくてはならん変態はむしろこやつでは?
「おっぱいも揉んだことあるしぃ~! へっへー、悔しいでしょうねぇ? 彼女のおっぱいすら触らせてもらえない俺様主人公がよぉ!」
「なにィ? 綾女……!」
「いや触らせるわけないじゃん……そ、そういうのは、きちんとお付き合いをしてからでですね……」
「「かわいい……!」」
おっと、指をチョンチョンと突き合わせて恥じらう綾女の可憐さに意気投合してしまった。
「ふん、興が削がれた。綾女の可愛さに感謝するのだな」
「ふ、それはあたしの台詞だぜなんちゃってプレイボーイ。ありがとう薄野ちゃん、フォーエバー薄野ピュアガール」
「君達仲良いの? 悪いの?」
綾女が冷や汗と共に聞いてくる。見ての通りだが? そもそも……、
「呑気に現れよって貴様、魔法を使う練習はしているのか?」
「今やろうとしてたんですぅー! あーでもこんなこと言われちゃったらやる気が──ぎゃー! おい! おいぃ!? あ、あたしの心臓に包丁刺さってんだけど! なにこれ!? でも痛くないの! 怖い! なにこれ怖いよぉ!!」
「幻術だ」
戯れに刺した包丁の幻影を消す。
「あまり足踏みするようならば、本物の刃が背後から襲うと知れ」
「ひー、今手に持ってる刃物も幻術? また幻術なのか? いや幻術じゃない……? イヤ……何だアレは!?」
「これは本物だ」
「こえーよ」
「はーい、二人とも仲良くしてねー」
「ママぁ……」
そうやって綾女が甘やかすからこの赤ん坊がハイハイしかできぬのだ。
綾女の豊満な胸に沈む軟弱者めが。よし……、
「決めたぞ。今使って見せろ」
「えぇ……いや~、ちょっとお腹痛いっていうかぁ」
「たわけ。心構えが定まったからこそ、俺の所に来たのであろうが?」
「う……」
口ごもる吉良坂。目を見ればその程度分かるわ。まったく面倒くさい性根であることよ。
「イメージが済めば、次は実践だ。実践無くして“本物”は有り得ない。踏みならされた安全な道に、宝が落ちているなど期待せんことだ」
本人にとっての宝は特に、リスクの先にしかない。
「発動条件は、効果範囲は、持続時間は」
「……あたしの魔力を乗せた声を聞かせること。範囲は声が直接聞こえる所だけ。マイクとかテレビ中継とかはだいぶ効果は薄まるみたいだけど……持続は、人によってまちまち。加減すれば数分くらいかな……」
人の多い商店街ならば丁度良いな。
頷いていれば、吉良坂が緊張した面持ちながらも綾女に声を掛ける。
「あ、そういうわけで、薄野ちゃんは耳を塞いで──」
「ならん、綾女にも聞かせる。いいな綾女」
「え? うん! 先輩の力になれるのならっ」
「なっ!?」
綾女と俺の言葉に目を見開く吉良坂だが、当然だろう。
「貴様の大事な人間を、以前のようにガラスの笑みで飾ってくれるなよ。当然、もし綾女に少しの異変でもあれば……貴様を刀の錆にする。俺に貴様程度の魔法など効かんのでな、抜き放たれた刃が止まることは期待するなよ」
「す、スパルタめぇ……」
涙目でこちらを非難がましく見る魔法使いに鼻で笑って返す。これだけ脅しておけば、練習にも身が入ることだろう。危難無き道に求めるもの無し。
「う、うおぉ……やべ、マジでお腹痛くなってきた……」
「先輩、ファイトです!」
青い顔で腹を押さえる吉良坂を、綾女は純粋に応援する。
さて、覚悟を決めたのならば、一歩を踏み出さねば何も始まらん。
「よ、ようし……いくぜぇ……あ、危なくなったら止めろよな!?」
「心配するな。一定を超えるようならば即座にその意識を刈り取ってくれる」
「あたしの意識を止めろってことじゃねんだわ!?」
早くしろ。
「すーはー……すーはー……」
目的地を定めたのならば歩け。その胸に抱きし矜持を証明したいのならば、足を動かして辿り着く他に道は無い。
「よ、よし──!」
足の動かし方さえ分かれば、赤子とて縦横無尽に走り回るものだ。その一歩が重く、大事なのだ。
さぁ、貴様の胸の煌めき……見せてみろ──!
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