越えられないものはない

〜ヨウ〜


昨日はびっくりした…。

まさかエカルさんが僕に告白するなんて思わないからね…。


嫌いなわけでも関心がないわけでもないから、断るっていうのは本当に心にくるんだなぁ…


…なんて考え事をして過ごしているお昼時。

考え事をしているとドアがコンコンコンとノックされた。


「ツクヤかな?」


ツクヤはノックをする時は決まって3回ノックするんだ。


「ヨウ、居るか?」

「居るよー」


ドアを開けてツクヤを部屋の中に入れた。

何か本を持ってるね?


「その本どうしたの?」

「この辺をいろいろ調べてみたらキャンプ場の運営施設らしいところから見つけたんだ。」


ツクヤが言うにはそこでキャンプ場の運営やお客さんの受付をしてたみたい。

そしてその本は…?


「そしてこれはガイドブックだな、他の島のことについて書かれている。」

「へーっ!」


僕もガイドブックを見てみよう、島の外って気になる!


「わかった、一緒に見よう。」


〜〜


この島の外には面白いものがいっぱいあるんだ…!

地下に広がる大きなお店とか和風な街もあるみたい!そして…


「道場?」

「ああ、探検隊や警備隊のフレンズたちが訓練をしていたみたいだ。」


僕たちが見てるページには『リウキウチホー』って書いてあった。

海が綺麗で楽しそう!


「いいなー、こういうところ…行けるかな?」

「どうだろうなぁ…もしかばんさん達から船を借りれれば…?」


道場が写ってる写真の横には説明もあって、『守護けもののシーサー』という言葉もあった。


「守護けもの?」

「ん?おお、守護けもの…知らないか?」


んー、聞いたことがある気がする…


「守護けものっていうのは、強い力を持っていてその力でパークを守護してくれている伝説のフレンズたちのことだな。

オイナリサマとか四神とか…」

「へーっ!」


ツクヤから守護けものについて聞いていると…


「そう!私もきっと相当高名な守護けものだったに違いない!」

「わあ!」

「お化…じゃなかった。」


ラーが後ろからいきなりぬっと現れた。

ツクヤ、びっくりしてるよ!


「どうしたの?」

「ふっふっふ、エジプト神話において最高神とも崇められているラーのフレンズだぞ私は、守護けものの中でもかなりの力があったに違いない!」


体を失った影響で記憶は曖昧らしいけど、ラーはものすごい自信家なんだね〜…


「どうだろうか…まあ、本人達に聞ければ…なんてな。」


3人で守護けものについて話をしていたその時…


『ドーーッ!!」


キャンプ場の奥から地響きみたいな音が聞こえてきた。


「なっ…なに!?」

「窓を開けてみよう、私は無理だから誰か頼む!」


窓を開けるとすぐにビリビリした気配を感じた。

フェネックの能力に目覚めてから、気配を感じられるようになったみたい。

そして…この気配の感じは…


「ドット…」

「ドットだって…!?」


ドット…何をしに来たのかな…

他のセルリアンみたいな気配は感じない、ドット一人だけなのかな。


「キャンプ場を荒らされたら大変だ、急げ!」

「うん!」


僕たちは大急ぎで家を出て、気配のするキャンプ場の広場まで走った。


キャンプ場の広場には、僕にそっくりな姿の黒い人影が立っていた。

そう、ドット太陽の黒点だ。


「ドット…!!」

「ハロー?久シぶり♪」


ドットは気さくな振る舞いで僕たちに手を振った。


「随分と気楽だな…今度は逃がさない…!」


ツクヤはすぐに戦う体制になって、ツクヤのお父さんの絵から不思議な雰囲気の剣を出した。


「おお!見ろヨウ、あれは蛇腹剣だな。」


ラーは武器を見て嬉しそうにしていた。


リアライズ…サンドスターの力を借りてイメージを手に取れるようにする技。

だけど魔法みたいに万能じゃなくて、リアライズできないものもあるし時間が経てば消えちゃう。


「よし、僕も!」


僕はゲームに使うカードの絵をリアライズして、炎の柱の中から現れた剣を手に取った。


「派手な武器使うじャん!!さあかカってきな!!」

「望むところだ!」


ツクヤはロープのようにしなる蛇腹剣を操ってドットを叩くように切りつけた。

それをドットは面白がるようにセルリアン触手で弾いた。


「はハはっ!伸びるのはボクだって一緒さァ!!」

「まだ僕がいる!やーっ!」


僕が剣を構えてドットに突撃して剣を振り下ろす。

ドットはそれを食らって後ろに下がった。


「っへぇえ?やルじゃん?」

「今だよツクヤ!」

「わかった!」


『ザザッ!!』


怯んだところにツクヤの攻撃が入る。

これは効いてるね!


「うわぁ…ははッ!さすがダぞ!」


ドットは攻撃を喰らっても笑って余裕の表情をしている。


「今ここで倒してやる…!」

「はっハー、そうカリカリしないで!

…さて、ボクの新しイ姿をお披露目しちゃおうかな!」


「「何だって…!?」」


そういうとドットは、身体の中からキラキラしたオーラを放った。

あれは…輝き?


「何かしてくる、気をつけろ。」


僕たちは、ラーの忠告に従って後ろに下がって様子を見ることにした。


「今マで吸収した輝きがかなーり馴染んデ来たのさ!

ははははっ!!!」


キラキラしたオーラがドットの身体を包み込むと、ドットはその姿を変え始めた。


背中からは翼が出て、頭にはツノのようなものが生えた。

まるでドラゴン…もしくは悪魔みたいな姿に変わっていった。


そして最後には長い尻尾。

ドットはまさに怪物モンスターの姿になった。


「クフフフ…ふふっ…

まあ、こんナものさ…ちょっと思った感じと違うけど、まあいいでシょう?」

「…来るぞ、ヨウ…」


ツクヤは僕に下がるように目と最低限の言葉で合図した。

僕とツクヤは少しずつ距離を取って、ここだと思った場所でバックステップで一気に下がった。


「おっと、そう来タか。堅実だねぇ?」


ドットは強そうな姿になった触手をひとつ出しながらニヤリとしていた。


「何かしてくる!?つ、ツクヤ!!」

「でも!!ボクに距離ハ関係ない!!」


大きな触手がツクヤに向かって伸びていった。


「なっ!?うわっ!!」


そして、ツクヤを吹っ飛ばしてさらにツクヤの武器をはたき落としてしまった。

ドットに吹っ飛ばされたツクヤは受け身を取りながら地面に落ちた。


「しまった…だが、武器がなくとも!」

「ツクヤに合わせるよ、はっ!!」


僕は武器を手放してツクヤと野生解放した。

2人で野生パワーを解き放つ!


「イイねぇ、第二ラウンドはじメっか!」


ドットは翼で地面スレスレを飛びながら向かってきた。


「させない!」

「これでどうだ!」


僕がフェネックの素早さを使ってかわして、ツクヤがオオカミの連携力でカウンターをする。


「いってー…やっタな?」


反撃と言わんばかりにドットはその長い尻尾で周りを薙ぎ払った。


「そーら、踏ん張ッてミろ!」

「避けて!」

「はっ!!」


とっさにツクヤに合図をして、ドットの薙ぎ払い攻撃は空振りとなった。


「はーっ、何だよ!

そうかそウか、その連携は恐ろしいよなぁ?」


何かを思いついたかのようなドットは、手をかざしてキラキラしたオーラを手に取った。


「これでも喰ラってな!

『チグハグリズム』!!」

『ドンッッッ!!!』


技の名前のようなものを口にすると、手にあったオーラがあたり一帯に散っていった。

すると…


『キイィィィッ!!!』

「がっ!?」


周りから聞いたこともないような音が響いてきた。

色々な音をめちゃくちゃに混ぜたような、イヤな音が…


「あぁぁぁぁ…!!?」


耳がいいフェネックのハーフの僕にとっては足を動かすのもやっとな状況になった。


「————!!」

「ツクヤ…?」


横を見るとツクヤが何かを言っているように見えるけど、ツクヤの声が聞こえない…全部この音にかき消されていた。


そして前を見た時には…


「あっ!?うわあああ!!」


ドットが目の前に立っていて、避けるヒマもなく殴られて吹っ飛ばされた。


「このままじゃ…」


ドットは次にツクヤに狙いをつけて、尻尾を振り回してツクヤを吹っ飛ばした。


「ツクヤ!!うぅ…!」


音に苦しみながら吹っ飛ばされたツクヤ、そしてドットは余裕の表情でこっちを見ている。

僕もこの音を聴いているのが苦しい…


このままじゃ2人ともやられる…どうすれば、と思った時ラーの声がした。


「大丈夫か?ヨウ…」

「あ、あれ…ラーの声は聞こえる…」


ツクヤやドットの声は聞こえない、だけどラーの声はハッキリと聞こえた。


「おそらく…私の言葉は『音』ではないからだろう。『脳内に直接』という感じか。」


なるほど…?

と…とにかく今をなんとかしなくちゃ…!


「ラー…バリアみたいなのできない?」

「そんな能力私には…いや、ヨウ…お前の技と合わせれば出来るかもしれない…?」

「わかった…!」


僕はラーのサポートでカードを手に取って、赤色のカードを手に取った。

そのカードは聖なる力?的なもので攻撃を弾く様子が描かれている。


「いくよ…!」「私に任せろ!」


ドットは、ツクヤにトドメを刺そうと近づいていた。

僕は必死に走って、ツクヤの前に立ちカードをかざした。


「ツクヤは僕が守る!!発動!」


僕のリアライズに、ラーの力が合わさって大きなバリアを出せた。

バリアはドットを弾き飛ばし、あたりに響いている音もかき消した。


「はあ…はあ…」

「おっトぉ…これは予想外…」

「ヨウ…!」

「もう…大丈夫…だよ…?」


傷ついたツクヤに駆け寄ると、僕もかなり力を使ったせいかフラついた。そこをツクヤは倒れないように受け止めた。


「いやー、さスがだね?」

「おいお前!」


ドットは余裕の態度で僕たちをみていた。

それに怒ったのか、ラーはドットを睨んだ。


「おっ…キミは…

なるホどね?ククク…」

「何がおかしい!?」


ドットはラーを見るとなにかを思い出したような事を言って笑った。

そして…


「いやぁ、なんでモないさ?

今回はここまでニしておいてあげよう、ここでやっテしまうのは勿体無い…フフフッ…」


ドットは翼を羽ばたかせてどこかへ飛んでいった。

ラーは追いかけたいようだったけど、僕らでは追い付けないだろうね…


「ぐぬぬ…体が有れば飛んでいってあの黒い体を黒焦げにしてさらに真っ黒にしてやったものだ…」

「ありがとうラー、僕たちは大丈夫だよ…」

「でもなぁヨウ…」


ラーはドットと戦ってる時から何かと気がたっている気がする…?


「…すまんな、私としたことが…。

2人を玩具のようにあしらう姿に腹が立っていたみたいだ。


それに…何故か知らないがアイツは絶対に倒さなくてはという気がしたんだ。」


ラーは惜しそうに首飾りの中に戻っていった。


「…周りの安全を確かめたら少し休もうか…」

「そうだね…」


僕たちは2人でキャンプ場を見回ってから、それぞれの部屋で寝て休んだ。


〜1時間後〜


「そうですか…大変でしたね…。」

「ドットめ!ホントに意地悪なんだから!」

「しつこいヤツだな?」


今日も図書館に行っていたスナネコとナミちーが帰ってきて、ツチノコも散歩から帰ってきたからさっきあった事を3人に説明した。


すると、スナネコは何かを知ってるように言い出した。


「やっぱり昨日のうちにみんなに相談するべきでしたね…」

「と、言うと?」

「実は…昨日図書館から帰る途中に変な気配を感じたんです。

他のフレンズか、フレンズになってない動物かと思っていたんですけど…ごめんなさい。」


スナネコは申し訳ないというように耳をぺたんとさせてしゅんとしていた。


「いいよ、気にしないで!」


僕はしゅんと落ち込むスナネコをよしよしと撫でた。


「ふへ…」

「おー?いいな〜

ツクヤ、ほらわたしも!」

「何故にそうなる…まあいいか。」


スナネコが羨ましくなったのか、ナミちーもツクヤに撫でてもらっていた。

2人はやっぱり仲がいいなぁ


「ツチノコも撫でますか?」

「いやオレは…」

「じゃあボクが撫でますね。」

「なんでそうなる!!!」


ここの2人もだね〜


「そうだツクヤ…僕、考えたんだ。」

「ん?」

「リウキウチホーに行こう、道場?ってところに行けば僕らの修行になると思うんだ。」


今のままじゃ、いつか間違いなくドットにやられる。

だったらまだドットが大人しいうちに修行をするべきだと思った。


「道場ですかぁ?そういえばはかせが前に言ってましたね…」

「だが…道場って言っても昔の話では…?」

「いやツクヤ、守護けものがやっているという事ならまだわからないじゃないか?」


そう話しているとナミちーがツクヤに話かけた。


「でもでも、リウキウチホーなんてどうやって行くの?

私4人も抱えて飛べないよ!?」

「いやまさか、かばんさんに頼んで船を貸してもらえれば手段はあるかもしれない。」


するとスナネコはうーん、という反応をした。


「船…ですかぁ…

あれはかばんと出会ったフレンズたちがかばんの為に作ったものですから、優しいかばんが良くてもサーバルたちがどう思うか…うむむ〜…」


しばらく考えてたけど、スナネコは


「でもまあ…優しいところはサーバルも変わらないかぁ…」


とゆるーっとした顔に戻った。

貸してもらえるかどうかはやってみないとわからないよ!


「ああ、少しいいか…?」

「どうしたのツチノコ?」


ツチノコは、何かを思い出して僕に話しかけた。


「オレはリウキウには行けない、オレのなわばりがそろそろ心配で…見に行きたいと思ってたんだよ。」

「なるほど、わかったよ!

まあそういう事だけど、明日話してみよう!」



〜翌日〜


「…という事なんだ、どうだろうか…

大切なものだと言うことはわかっ…」

「いいですよ?」

「早ッ!?」


かばんさんは即答で貸してくれるって言ってくれた。

そしてサーバルさん、そしてアライさんとフェネックは…


「いいよ!」

「ありがたいですねぇ…」


「いいのだ!」

「即答かよ」


「がんばってね〜」

「よかった〜」


ということで思ったよりもすんなりと貸してもいいと言うことになった。


「いいの?」

「はい!僕たち以外の誰かも外の世界を見られるなんて嬉しいんです!」


ああ、やっぱりこの人はいい人だ…

びっくりするくらいに…


「旅はいいものだよ〜?」


フェネックは僕の方に来てニコッとして言った。


「きつい時もあるけど、楽しさはその何倍もあるからさ〜

ま、頑張ってね??」


「「お兄さん…!?」」


みんなをびっくりさせるつもりでか、フェネックは僕を『お兄さん』と呼んでみせた。


「えーっと、詳しいことはかくかくへらじか…」


僕はフェネックと僕の関係について、みんなに詳しく話した。


「なるほど…?

つまりは生物学的に言えば異父兄妹なのか…?」

「たぶんそういうこと…かな?」


フレンズとしてのお母さんとお父さんの子供が僕で、動物としてのお母さんと他のフェネックの子供がフレンズになる前の今のフェネックってところだね…





〜三日後〜


「食べ物よーし!お水もよーし!

おやつの金額無制限ー!」

「ノリノリだな、遠足じゃないぞ?」


だって島の外に出るの楽しみだもん!

僕ワクワクするよ!


「大丈夫かスナネコ!?

ヘンなものが落ちてても触るなよ、セルリアンかもしれないからな!?」

「大丈夫ですよツチノコ〜、ドジっ子なヨウを守ってきたのはボクですよぉ?」


ツチノコに心配されているスナネコは、お気楽な様子で答えてみせた。

ドジっ子は余計だよ〜っ


「ナミちー、どうだ?」

「うんうん、向こうの向こうまでいい天気だよ!」 


僕は荷物を後ろの荷物入れに乗せた。

ゆきやまの大きな桶が元になってるんだって!


「あとは前と後ろをくっつけて…荷物入れもくっつけて…だったかな?」

「そしてコレだな?」


ツクヤは茶色くて大きいものを持ってきた。

なんだろうこれ、筒?


「これは?」

「電池だ。

この船がバスだった頃からの動力源で、太陽光で発電するんだ。」


すごいっ!太陽の光で電気が貯まるんだ〜


「あとは電源のトラブルがあったときのために後ろの席を改造した足こぎペダル動力だな。」

「あっ、これも動かせるんだ!」


遊園地で乗って移動したアレ、こんなところにもあったんだね!



〜〜〜

「ヨシ!!!」

「ヨシです」


僕とスナネコで、指を指して安全を確認した。


「それホントに大丈夫?」

「俺それどこかで見た気がする…」

「航路はマカセテ、しっかりとナビするヨ」


ラッキー、今回もよろしくね!


「皆さん〜」

「見送りに来たよ!」


僕たちが出発しようとした時、かばんさん達が港まで来てくれた。


「懐かしいですね、ここ…」

「そうだね!」


そうか、かばんさん達もここから旅に出たんだね!


「この旅が皆さんにとっていい旅になることを願っています!」

「応援してるよ!」


応援してもらっちゃった、頑張るぞ〜


「いってきまーす!」

「行ってきます。」


「あっ、そうだ!

ツチノコさん、僕たちがさばくちほーに送って行きましょうか?」

「ん?いいのか?」

「わたし達、さばんなちほーに行こうと思ってたからね!ほらのってのって〜!」

「チー!?押すな押すな!乗るから!」


サーバルさんは、交換で貸した車にツチノコを乗せていった。

スナネコは「元気な雰囲気はヨウがもう1人いる感じ」って言ってたけど、僕の元気さってあんな感じなのかなぁ…?


「よし…行こうか、みんな」

「オッケー!」「行きましょうかー」


ラッキーさんが運転席にちょこんと座ると、船が動き出した。

ツクヤも隣の席で海の状況を見張るよ!


「それじゃ…出発ーっ!!」


さあ…まだ見たこともない世界へ、行ってみよう!

どんなものがあるのかな?楽しみ!



〜〜海〜〜


「島、見えなくなっちゃったね?」

「ですねぇ…ん?ナミちー何してるんですかぁ?」

「魚釣りだよ〜、せっかくだから海らしいことしようかなって。旅してた頃にオニちゃんとやったのが懐かしくなっちゃった。」


釣りかぁ…んんっ?

釣竿なんてどこから持ってきたんだろう…!?


「それどこにあったの?」

「釣りセット?キャンプ場にあったよ〜、ホント何でも揃っててびっくりしちゃうよ。」


ほ〜…便利じゃんか…

僕も暇だからやらせてもらおうかなぁ?




…と思っていたその時…



『ゴロゴロゴロ…ドドーッ!!!!』

「なに!?」


だんだんと空が暗くなったと思ったら、すごい音が鳴り始めた。


「みんな、安全を確保しよう!」


ツクヤが後ろの方に来た、すごく慌ててる…。


「ツクヤ、何があったの!?」

「雷のような音がなったかと思ったら竜巻が出たんだ。

俺は荷物を固定してくる!」

「1人じゃ危ないよ!僕も行く!」


ワクワクの旅立ちからまさかこんなことになるなんて…!

急がなくちゃ…!


〜船外〜


「よし…これで吹き飛ばされない」

「2人でやったからかな、早くできたね…!」


僕たちは2人で荷物を飛ばされないように固定した。

早く中に戻らないと…ん…?


「ツ…ツクヤ…!」

「なんだ…なっ!?」


さっきまで遠くにあったはずの竜巻が目の前に迫っていた。

これじゃ…間に合わない…!


…そして…竜巻は船を飲み込んで…


「うわあああああああ!!!!」

「ヨウ!?わああああ!!」


僕とツクヤは、中に入るのも間に合わずにすごい速さで迫る竜巻に飲み込まれて、船から放り出された。







—————三人称 2人が飛ばされた後—————


船の中で体制を低くして身を守っていたスナネコとナミちー、気がつくと2人の姿がないことに気がつく。


「あれ…ツク…ヤ…?」

「ヨウー!どこに行ったんですかぁ…?」


あたりをキョロキョロと見回していると、ヨウの首飾りが床に落ちていることに気がつく。


「これ…飛ばされないように置いていったのかな?」

「ですね…そうだ、どうすればいいかラー?に聞いてみましょう。」


スナネコは首飾りを手に取って、宝石の部分をこすこすと擦った。


「いやそんな、図書館で見た絵本みたいに出てくるものなの…!?」

「わかんないですね。」


…すると、首飾りの中からラーが光に包まれながら出てきた。


「出てくるんかい!」

「なんだ、私を呼んだか?

…あれ?ヨウはどこへ?」

「それがですね…」


スナネコはラーに事情を説明した。


「なるほどな…その竜巻、もしかしたらサンドスターの異常による時間と空間の歪みかもしれないな。」

「「????」」


突然難しい言葉が出てきて首を傾げる2人。

そりゃ、そうでしょう。


「…まあ、簡単にいえばそれに飲み込まれるとここじゃないどこかへと行ってしまうという事だな。」

「ええっ…!?大丈夫なの、それ!?」

「まあこういうのって大体無事に帰ってくるまでがお決まりのパターンだから。」

「ポジティブ。」


大丈夫だろ、とものすごくポジティブに話していた。


「…もう目的地はすぐそこだからな。」

「あれっ!?いつのまに!」


前を見るともう水平線の向こうからリウキウの島が見えていた。


「案外何事もなくあそこにいたりするかもしれないぞ?」

「と…とりあえず、行ってみようか…?」

「ですね?」


と…ポジティブなラーに導かれる…というか乗せられるままに船はリウキウへと向かっていった。









————ヨウ視点————





「…か?」


誰…?

誰かの声がする…?


「…ぶか!?」


うーん…体が痛い…

ん…?


「アンタ、大丈夫か!?」

「へ…?」


ヒト…!?

あれ?でもこの人どこかで…あ、この人…




お父さん…?



「おっ、気が付いたか…アンタ、ここで倒れてたがなんかあったか?」

「へ…いや…大丈夫…かな。」


あまりにもビックリして、大丈夫じゃないけど大丈夫と言っちゃった。

そうだ、このお父さん…?に色々聞いた方が…


「アンタこの辺じゃ見ない顔だな、もしかして観光客ゲストか?」


僕を知らない…?

…というか、見た目もなんか若い…?


「えと…キミ…何歳?」

「へ??…フフッ、初対面でいきなり歳なんて聞かれたの初めてだな?


俺は暁ケイスケ、歳は20だ。」


20歳…!?

僕…タイムスリップしちゃったの…!?




〜次回:過去編へ続く〜

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