第56話 精霊王から情報収集

この世界に存在している種族の五つの種族の一つ、「精霊族」。

尖った耳が特徴的であり他の種族に比べ長命、どんな種族であろうと魔法の実力は敵わないという魔法においての才を持つ種族だ。

精霊は選んだ人と契約を交わすこともあり、そういう人は「精霊魔法」を使えるようにもなる。


精霊族は地上ではなく空に存在する「精界せいかい」に住んでおり、行くことも困難な場所にそれはあるらしい。


そんな精霊族には長、というか名の通り王として君臨する「精霊王」がおり、ただでさえとんでもない実力を持つ精霊達の更に上を行く、そんな次元の違うような存在なのが、このおっさんのライアなのだ。


「え~、そんなに意外かなぁ」

「何度でも言うがお前みたいなおっさんが精霊王だとは思わないだろ」

「ほ、本当にあなたが………せせせせ精霊王なの?」

「そうだよ。本当に意外だったみたいだね」


精霊王の話は子供たちの絵本とかでもよく出てきており、その中では若く美しい青年のような人物として登場している。とてつもなく強いということもありとても人気のある人物である精霊王だが、世の精霊王好きの子供たちがライアを見れば恐らく顔が絶望に染まるだろう。


そんな精霊王好きはわたくしのお友達のエヴァさんもそうらしく、


「まさか………憧れていた、精霊王が……こんな、ここ、こんなおっさんだったなんて……」

「え、エヴァさん泣かないでください、ほ、ほら!こんな中年みたいな顔してますけど……でも結局会いたがってた精霊王に会えたんですから!」


ミリーゼがエヴァを必死にフォローしているが、きっとしばらく泣いていることだろう。あいつは本当に精霊王に憧憬を抱いていたしな。

「なんか罪悪感が…」と言っているライアに一度落ち着かせたエヴァをそばにミリーゼが訊いた。


「あ、あの。なんでその精霊王であるライアさんがここにいるんですか?精霊は皆精界に住んでいるはずじゃ…」

「精霊王って実はそういう肩書きがあるだけで実際することは割と少ないんだ。あっちはなんかつまらないし、僕は地上の世界が大好きだからいつもこうしてここにきているのさ。精界で何かあっても魔法ですぐに駆け付けられるしね」


なるほどとミリーゼは頷き、続けて質問をする。


「後、その耳はどうなってるんですか?精霊族は皆耳が尖っているはずなんですが…」

「ああ、それはそういう決まりだからだよ。精霊族の精霊たちは地上に来てもいいけど契約をしていない精霊以外は精霊体ではなく人間体じゃないといけないことになっているんだ。だから今の僕の体は人間体、故に耳は普通ってわけ」


精霊は実は生殖行為を必要としておらず、自然から生まれるもので人間とは違う。そのため、精霊はオレたち人間とは違い精霊体という特殊な体だ。と、エヴァはやっと立ち上がり目を拭っていた。


「ふう、ようやく泣き止めたわ」

「大丈夫か、おい」

「ええ、もう大丈夫」


よし、ようやくちゃんと本題にはいれそうだな。


「ライア。そのお前のムカつくほどにある知識を頼らせて欲しいんだがいいか?」

「勿論だよ。アーク君と僕の仲だからね」


オレは、他にも色々聞きたいことがあるが、まず一番に聞かなければいけない五つの宝石についてとその関係性についての話を聞いてみた。オレは懐から紙を取り出してそれをライアに渡し聞いた。


「この五つのモノについて何かしってることはあるか?もしこれらに何かしらの関係性があるならそれも教えて欲しいんだが」


その紙を彼はよーく見ると、彼はすぐに口を開いた。


「これは、龍の封印を解くために必要なモノだよ」

「龍の封印?」

「英滅龍ルーアサイド、聞いたことがあるかい?」


オレたち三人は頷く。

知ってるもなにも授業で習ったからな。


「その龍の封印を解くために必要なモノがこの五つだ」

「はぁっ!?」


ということは、ノアールトが企んでいる目論みはその龍の復活ってことなのか!?


「この五つの宝石はそもそもの封印に使った宝石でね、それぞれの色がその属性を示しているんだ」


曰く、深紅の勾玉には「炎」

紺碧の宝石には「水」

翡翠の宝石には「風」

黄金の玉石には「光」

漆黒の宝玉には「闇」の属性の力が宿っているのだとか。


「ただ、封印には一つ問題点があってさ、封印に使った宝石は世界中のどこかに散らばってしまうんだ。それに封印自体も宝石が破壊されてしまったら解かれてしまうんだ。僕も封印が終わって宝石が散らばった時にどうか宝石が無事であるように祈ったよ」

「………なんかその言い草、お前が封印を実行した本人みたいな言い方だな」

「みたいもなにも僕が封印した本人だけど」


さらっと凄いこと言ったよこの人。

あまりにもあっさりとしたカミングアウトだったからオレも驚く暇がなかったわ。

ほら見ろ、エヴァとミリーゼの二人も口をあんぐり開けて呆けちゃってる。


「でも、それを訊いてきたってことは何かそれに問題があったってことだよね」

「話が早いな、その通りだ。件の宝石が次々と、とある狂った魔族がそれを奪ってるんだ。でもそれの関係性がわかんなかったから、無駄に物知りなお前に話を聞きに来たわけ

「なるほどね。まあ、確かにその封印自体昔のモノだから知ってる人もいないだろうし、何より本にしたりもしてないからそれはしょうがないね」

「まあ、知れたし良かった。助かった」


さて、これはかなり重要な情報を手に入れられた。だが、いくつかよくわからない点がある。

まず一つ、何故ノアールトがこの情報を知っていたのか。ライアの話では英滅龍の封印に使ったそれは昔のモノ、つまり知ってることがまずないはずなのだ。


本人も知ってる人はいないだろうと言っているし、本にもしたりはしていな言っている。つまり、その情報がアイツのもとに届くことが考えることができないと言える。


魔族は精霊の様に長命なわけではない。だから昔の情報も取り入れることも、し難いはず。だから、何故アイツがそんな世に知られることのない情報を手に入れたのか、正直物凄い疑問だ。


まあ、今は言及はいいか。


「後、もう一つ聞きたいことがあったんだ」

「何かな?」

「魔族って本来は肌が黒いだろ?でもオレの言うその魔族って肌が白かったんだ。それはなんでか分かるか?」

「うーん、考えられるとしたら可能性は二つある」


彼は人差し指と中指を上げ、そう言う。


「まず一つは魔族とその他の種族のハーフである可能性があること」


エヴァの肩がビクッと震えた。ミリーゼは首を傾け、ライアは気づくこともなくもう一つを説明する。


「もう一つは神と契約している可能性かな」

「神?」

「うん、神族とかとは違う紛れもない神。精霊は魔族とは契約ができないから、契約の方面で考えればそう考えられる」

「それはどうしてだ?」

「神と契約した場合、その存在は神と同等になるんだ。それには魔法とか技能だとか以外に勿論身体にも干渉される。だからその肌も白いと考えられる」


なるほどな。

確かに、それが本当ならノアールトの肌の理由がつく。この事はついでのつもりだったので、とりあえず頭の隅にでも置いておこう。

よし、結構な情報を入手できた。

時間も時間だし情報を整理するためにも、そろそろ帰るとするか。


「わかった。ありがとな、ライア。今日は助かった」

「いいよ、また来てね」

「ああ」


オレは彼とは反対方向を向き、一歩足を踏み出したとき、ライアは声をかけてきた。


「アーク君」

「ん?」

「僕はいつでも暇だからね」

「……また来る」


彼の方を向くことなくそう言うと、改めて来た道を戻り始めた。








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