第12話 試験①

「ここがリデスタル学園か……」

「随分と大きいんだな。姉さん出身じゃないの?」

「違うぞ。私はベルゼブ学園という北の街の学園出身だ。元々はウルガスに住んでいたからな」

「へー」 


オレとローナ姉さんは無事に学園に到着した。いや、無事にと言っていいのだろうか?

今までならオレは顔を隠して外を歩いていた。しかし、これから学園に通う身としてやはり街の皆からの反応に慣れる必要があるので、今回は包み隠さず街を歩いた。


結果かなり反応が凄かった。オレ自身に何か物理的に攻撃してきたわけではないのだが、コソコソと話をしていたり、オレの方を見て睨んできたり、時にオレに向かって中指立ててきた奴もいた。異世界でも中指の文化はあるのね。

今回、外で歩いてみてどんな反応か分かったので、これからこの街に貢献できることを沢山しようと思った。ちなみに、その事にローナ姉さんは気づいてすらいなかった。やっぱり何処か抜けている。


オレ達は中に入った。どうやら親枠だと中に入ることが出来るらしい。見送ってくれればそれでええのに。

しばらく歩いたのだが、オレに対しての糾弾の言葉はなかった。恐らく気付いていないのだろう。まあ、後々バレるだろうけど。試験会場入り口前にまで行くとこんな声が聞こえてきた。


「なぁなぁ、あれって学園長じゃないか?」

「え?あ!本当だ!かわいい!」

「つーか、胸デカくねえか……やべぇ……」


そんな声が聞こえてきた。向こうを見るとそこには学園長でオレを殺しに来るほどのスパルタ入学試験をさせられたメレナ・エミリアだ。

なんでここにいるんだよ。まさかとは思うんだが……


「お、来たな!アーク!おーい!」


そのまさかだった。全くもってここにオレを出迎えに来た意図がわからん。

目立つからやめてほしいんだが。


「どうもおはようございます、学園長」

「おいおい、俺に対しては敬語つかわなくてもいいっつったろ?」

「プライベートって言ってただろうが」

「それもそうだな。んで、どうだ調子は」

「全てにおいて成長してますし問題はないです」

「そうだな。身長も私と同じくらいにまで伸びてやがるぜ」


メレナの言うとおり彼女とオレの身長はほぼ同じくらいにまでになっている。メレナの方が三センチほど上だ。


「まあ、頑張れよ。んで………なんでてめえがいんだよ」

「メレナには関係ないだろう」


メレナはローナ姉さんに向かってそんな風に言ってローナ姉さんは軽く促した。


「関係あるぜ。これからアークはオレの学園の生徒の一人だ。関係ありまくりだ」

「…………なに、アークが私の弟子になっただけだ」

「なっ!お前この貧乳の弟子になったのか!?」

「私が貧乳なのなら殆ど貧乳だ!お前がデカ過ぎるだけだ!」

「んだとコラァ!」

「二人とも落ち着け」


オレは二人に軽く拳骨をぶちかました。目立つからやめろって。

どうやら二人は犬猿の仲らしい。まあ、逆に仲良く見えなくもないけれど。

というか胸の話はローナ姉さんに賛成だ。大体、ダンジョンの時はあんまり気にしないようにしていたが、あれは流石にエグイ。大きさが半端じゃない。ローナ姉さんでさえかなり大きなモノを持っているのにも関わらずだ。


───閑話休題───



「そう言う話は入学試験終わってからでもできるだろ。後で時間取れるか、メレナ?」

「たりめーだ。この女の迷惑譚聞きてーし」

「黙れお前!」

「姉さん落ち着いて。どうどう」


オレは憤慨するローナ姉さんを連れながら試験会場に入った。中は中々広く最初の筆記試験の会場に行くにも一瞬道に迷い掛けた。

着いた会場は一度だけ見た大学の教室みたいな所で試験官が受験番号に席に座るように指示され、ここで一度ローナ姉さんと別れた。そう言えば思ったんだけど何人受験しているのだろう。オレは番号98だから多いか少ないかわからねえんだよな。


座るとそこには紙が置いてあり表紙には『リデスタル学園 筆記試験 制限時間 120分 カンニングしたモノは処刑』

と書いてあった。流石はメレナ学園長。周りの奴らを見ると皆戦慄したような顔をしている。まあ、そうなるわな。


しばらくして、会場に全員が集まると教壇に試験官が立ちテストを始めると言った。そして、合図と共に試験が始まる。ページを開くとそこに書いてあるのはオレがローナ姉さんの家で見た本に載っていたモノばかりだ。


複雑な魔法の術式から哲学的なモノまで確かに名門と言われるだけあるようなないようだった。まあ、この内容でしかも二時間ぶっ続けのテストだ。皆終わる頃にはキャパオーバーが凄いだろう。


程なくして二時間が経ち筆記試験が終了した。そこから小休憩で30分の休憩が入った。


「思いの外簡単だった」

「まあ、お前はずっと本を読んでいたしな」


中のベンチでローナ姉さんと休んでいた。すると、徐々にオレを見ながらコソコソと話ながら歩き去ったりその場でコソコソしてたりとそんな奴が増え始めていた。徐々にオレの存在に気付き始めたか。

まあ、想定内だし深く考える必要はないだろう。



     ※     ※     ※



休憩が終わり、次に行われるのは実技試験だ。実技試験は二つ、「魔法」そして「剣術」だ。剣術の場合、同時に体術も試されると考えていいだろう。


最初に行われるのは剣術でこれは試験官との対人戦となる。外に三人の受験生を相手する先生がおり、受験生を三組に分けていた。

オレは最初の方なのでA班だ。

受験生の数をこの時確認したのだがまさかの千人を超えていた。凄いね。


試験が始まるとそれぞれが試験官に呼ばれ剣をぶつかり合わせていた。先生に一撃、二撃いれている人がいれば圧倒的な差を見せつけられやられる人も、時にワンパンされる奴もいた。


そんな中、注目を集めていたのがある少女だ。


「受験番号587番!エヴァナスタ・エピソード!」

「はい!」


そう言って前に立ったのは金髪の髪をツインテールに結ってあるかなりの美少女。モテそうなスタイルの良い、良いところのお嬢様のようだった。もしかしたら本当にお嬢様なのでは?

そんな彼女が注目を集めた理由、それはその実力だ。


素早い動きに咄嗟の判断と俊敏性、戦闘に置いての実力を兼ね備えていた。結果的に受験生で唯一試験官を倒していた。


と、そんな内にオレの番がやってきた。


「受験番号98番!アークヴァンロード・ジュリネオン!」

「はい!」


オレは大きく返事し前に出た。すると、後ろから声が聞こえる。


「アークヴァンロードってあのクズ王子だよな……」

「やっぱり?顔はヤバい程にいいのに性格がクソなんだよね……」

「一緒の学園なのやだなぁ」

「安心していいと思うぜ。噂だと魔法も運動もボロクソに出来ないらしいから」

「え、そうなの?良かったぁ……」


ボロクソ言いやがってこの野郎。

オレのアドレナリン放出量が70パーセント上がったぞ。

よし、悪いが試験官はボコらせて貰おう。


「それでは試験を始め……」

「ちょっと待ったあ!」


試験官の一人が合図をしようとしたときだ。空から大きな声が響いた。すると、何かが落ちてくる。それは人間だ。そして数秒後には着地した。その着地の衝撃が地を揺らした。

そして、煙もうもうと舞う中で彼は言った。


「貴様の相手はこの俺だ!アークヴァンロード!」


がたいの良いおっさんだった。マントまでつけてやがる。誰だよコイツ。

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