お月さまと盗人

作者 織姫

少年は天に向かって、いつまでも手を伸ばし続ける。

  • ★★★ Excellent!!!

むかしむかし。
お月様は盗人にさらわれてしまいました。
それからというもの、この世の夜は闇に染まってしまって……。

という幻想的なはじまりを見せる本作。
舞台となるのは、誰も訪れないさびれた塔。
主人公の少年――皓月はこの塔に『あるもの』を得に忍びこみます。
この作品はとにかく情景と場景、両者の雰囲気づくりが抜群にうまいのです!
塔の内部はもちろん、塔のてっぺんからの視界は読者の心にありありと描かれます。そこから見える、闇と闇と闇。だけどぽわりんと一条の光。『おとぎ話』の語り口が途中に挟まれることにより、その幻想性がいっそう高まります。夢を見ているような心地にさせられる物語です。
第一話から最後まで、間断なく絵を描き続けることができました。塔の内部の石壁もイメージできました。皓月はどんな道のりで、どんな旅支度でこの塔にやってきたのか。道中一人で、なにを夢見ていたのか。そんな、作中に書かれていないことも想像することができます。

そしてラストシーンがものすごくいい。
わたしはこのラストを『遠近法を失ったラスト』と名付けました。
近いようで遠く、遠いようで近い。
遠近を失った愛はつまり、永遠と称しても過言ではないでしょう。

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