1-73.73話「栄光の超宇宙」(最終回)

 73話かけてついにたどり着いた旅の終わり。この結末を許せるかどうかで本作の評価も大きく変わる。それでは見ていこう。


73話「栄光の超宇宙」 1981年2月22日


 脚本     :山本優

 演出     :秋山勝仁

 作画監督   :松井栄


あらすじ


 『オリオン座の方向へ遙か銀河を旅してきたアノー号に、イーレム通信という奇妙な呼び声が届いたのは数時間前であった。彼らはレベル2のイクストロン速度で発信源に向かったが、そこに三連恒星に囲まれた奇妙なゾーンを発見してためらった。全ての反応計器がレッドゾーン寸前の9999を指していた。同じ頃この地点に現れていたのは、プレアデス散開星団に植民したドクマ星人系の子孫、トロピーヌをリーダーとする毒魔殿艦隊だった。彼らは毒魔大帝統とエリアスたちと合流、ゾーン9999に突入するためにはイクストロンの最大速度を必要とし、アノー号を奪取せんものと待ち構えていた。彼らもイーレム通信をキャッチして、そこに生存可能領域のあることを知ったからである。アノー号偵察隊は、アステロイドの中で不意に毒魔殿艦隊と遭遇した』(伊武雅之)


 「野郎! よくもアニタを!」

 アニタの死に激高するダイゴ。バックも涙を流している。

 アノー号に戻ったピーチィから、アニタの死と毒魔殿艦隊の待ち伏せを知らされたバリーは、待機していたチョコマを呼び出した。出動できる円盤は31機あると答えるチョコマ。バリーはコンバット隊を緊急出動させた。少年隊がハッチを開き、円盤が飛び出していく。

 毒魔殿戦艦は、応援に来たコンバット隊を物質分解ビームで次々と消滅させる。感心するエリアス。

 バリーは味方の損害の多さに焦っていた。そこに再びイーレム通信が入る。その声はゾーン9999の方角から発せられていた。再び現れたアダムⅢは、「ゾーン9999にはユニヴァーゾンが感じられる」と言う。「対称粒子が、まさか!」チェスターが色めきたった。

 チェスターの説明によれば、現代物理学で粒子加速器を使って確かめられた世界、宇宙最初のエネルギーと質量が凝縮されている原始物質がユニヴァーゾンだという。ユニヴァーゾンはコスモンと反コスモンに反発しつつ別れ、コスモンは核子に崩壊して我々の宇宙を形成したと言われている。そして反コスモンは反宇宙を形成しているはずだというのだ。アダムⅢが補足する。

「それにイーレムとは、ジョージ・ガモフ地球古代の科学者たちが、世界がビッグバンそれから作られたと考えていた、原始物質の名だ」

「それが本当なら、あのゾーンの奥には、宇宙最初のスペースが! 我々は宇宙の中心を前にしていることになるじゃないか!」

 バリーの問いに答えようとしたアダムⅢの映像が乱れた。消滅の時が近づいているのだ。

「我々の科学では、宇宙と反宇宙の結び目の中に、二つの宇宙を超越した宇宙-コスモスペリオール-すなわち超宇宙の存在が信じられていた。もしそれが正しければ、お前たちは新たな生存領域へ到達できるはず。アノー号最大速度レベル5で、ゾーン9999へ突入せよ。決断は君たちに任せよう。私はもはや限界に来た。お別れだ」

そう言い残すとアダムⅢは消滅した。

 バリーはゴーディアンたちと合流するため、ゾーン9999へ進路を取るよう命じた。心配するサオリにバリーは言った。

「私たちに課せられた使命かもしれません。例え反世界に出ようと、またブラックホールの中で押し潰されようと、我々人類の未来を示してくれる唯一の希望がそこにあるかもしれません」

 バリーは撤退戦の殿しんがりをゴーディアンに務めさせるようダルフに命じた。ダルフの通信に応え、円盤が帰投していく。

 ドクマ円盤では、思うように結果が出ないことにトロピーヌがいらだっていた。無傷でアノー号を奪取しなければならないため、アノー号に攻撃できないのだ。アノー号がレベル5を出す前に何とかしたい大帝統は、ゾーン9999の方向に先回りしてアノー号を待ち伏せるよう命ずる。

 殿でクリントともに戦っていたダイゴは、ドクマ円盤たちが別方向に退いていくのを見て、この隙に撤退するようバックに伝える。自分も帰投しようとしたダイゴに、バックの「危ない!」という声。ドクマ戦艦がゴーディアンに攻撃してきたのだ。咄嗟に立ちはだかるクリント。そこに物質分解ビームが命中した。消滅するクリントを見たダイゴは涙を流しながら叫んだ。

「許さねえ! 一人たりとも生かしちゃおかねぇ!」

ドクマ円盤を白光剣で破壊し、ドクマ戦艦を追いかけようとしたゴーディアンだったが、毒魔殿艦隊の姿は消え去っていた。

 帰還したダイゴからクリントの消滅を聞かされたサオリは絶句した。ダイゴはゴーディアンのまま待機する。

「俺は、奴らを絶対許さねぇ。クリントの敵はこの手で必ず討つ」

 バリーはレベル5突入前に館内放送で訓示した。

「アノー号は、最大速度レベル5を初めて体験しなければならない。おそらく、我々は人類が初めて体験する一つの可能性に挑戦することになるだろう。再び諸君たちと、笑顔で対面できることを願う」

サオリはバリーの肩に手を置く。

「このアノー号で地球を飛び立った時から、私たちは艦長に全てを委ねました。私も、ゾーンの奥からの声を信じます」

 サオリの言葉は、ブリッジのクルー全員の思いでもあった。チェスターとポールがレベル5へとアノー号を移行させる。

 その時ダルフが声を上げた。進行方向に異常物体があるのだ。それは待ち伏せしていたドクマ円盤だった。「かまわん、突っ込め!」と命ずるバリー。アノー号はレベル4へ移行した。対する毒魔大帝統もドクマ円盤をアノー号甲板に食い込ませ、共にレベル5に移行しようとする。はじき飛ばされた毒魔殿戦艦は、監獄の中のサクシダーを乗せたまま闇の中に消えていった。

 アノー号の計器はブラックホールの兆候を捕らえていたが、バリーは退かない。ブラックホールの事象の地平面イベントホライズンに突入すれば、アノー号はそのまま押し潰されてしまう。しかしもう後戻りは出来ない。ドクマ円盤をレベル5で振り切るよう命じるバリー。ついにアノー号はレベル5に突入した。今までに体験したことのない歪みが乗組員を襲う。そして、ドクマ円盤のトロピーヌ、エリアスも次々と倒れていった。

 どれほど経ったろう。ダイゴの耳に、アーカーシャの声が聞こえてきた。

「私はイーレム。アーカーシャの仲間と共に待つ」

ブリッジでは、ダルフが正面から迫ってくるアノー号に驚いていた。チェスターが冷静に説明する。

「これはメビウスの廊下現象、決して重なり合うことはない」

その言葉通り、向かってきたアノー号にぶつかると思った瞬間バラバラになり、すれ違っていくとまた元に戻った。そして、赤い光の空間がアノー号を包み込む。

 いつの間にか、アノー号乗組員たちは気を失っていた。目を覚ました乗組員の眼前には、オレンジの光に包まれた空間が広がっている。

「ここは超宇宙、コスモスペリオール、私はアーカーシャ。宇宙連盟の一つ、イーレムの代表です」

「何故お姿が見えないのです」

サオリの問いに帰ってきたのは意外な言葉だった。

「この世界にふさわしくない者を入れるわけにはゆきません。毒魔大帝統、あなたは呪われた全ての野望を捨て去らなければなりません」

 ドクマ円盤は、アノー号から離れると言い放った。

「ワシに指図しようというのか。我汝に従うよりは地獄の宇宙をこそ支配したい」

「愚かな」

その声と共に、発せられたビームがドクマ円盤を包んだ。「おのれーっ!」という断末魔と共に消滅するドクマ円盤。ダイゴたちは呆然と見守ることしかできなかった。

 そして、乗組員たちの体が宙に浮き上がり、アノー号をすり抜けて超空間に泳ぎ出る。ゴーディアンに乗っていたダイゴも、ガービンからデリンガー、プロテッサーと次々と抜け出し、サオリたちとアノー号甲板に降り立つ。超空間のオレンジの光が消え、まばゆくきらめく宇宙都市が姿を現した。

「そして、地球に残った人々のために、あなた方のことは生命体の微細な胞子のメッセージとなって地球に届くでしょう」

 アノー号を包むように発生した胞子は、虹色の彗星のような光となって地球へと発射された。

「あれが、俺たちのメッセージを地球に」

ダイゴは感慨深く光を見送った。その光は、銀河を渡りやがて地球へと届いていった。


『ダイゴたちは今、素晴らしく優しい幸福感に包まれて超宇宙に至った。

 これは、架空の物語である。だが、20世紀の今日の科学では、直径一ミクロンに満たぬ微小粒子が宇宙から飛来して生命を運ぶのではないかという理論、パンスペルミア説が知られている。しかし、真実はまだ分かっていない』(伊武雅之)


                       『闘士ゴーディアン』 完


解 説


 前回の続きからスタートだが、前回のあらすじパートが二分近くある。

 艦載円盤発進シーンでチョコマたち少年隊がようやく仕事を。

 チェスターの解説、当時朝から図解なしにこんな説明をされて分かる視聴者がどれくらいいたのか。私も検索や視聴者のコメント頼りであるが、「メビウスの廊下現象」だけは検索しても引っかからずお手上げである。言わんとしていることは分かるが。

 今回もいつも通り作画は悪いが、背景には力が入っている。銀河のイメージなど美しい物が多い。

 超宇宙へ突入する際、途中で降り注ぐ青い光はスキャニメイトだろうか。エッシャーのいくつかの絵がイメージとして使用されている。ラストカットの鞠状骨組みの球体もエッシャー風に見える。

 事情が何も分からず、「お慈悲を」と言いながら消えていったサクシダー。せめて苦しんだ時間が短かったことを祈ろう。

 毒魔大帝統がアーカーシャに言い放つ台詞は、ミルトン『失楽園』のルシファーの言葉『Better to reign in Hell, than serve in Heaven.』が元ネタだと思われる。

 超宇宙でアーカーシャが毒魔大帝統を倒したのは、戦闘という野蛮な行動をダイゴにさせるわけにはいかなかったからだと推測するが、ストーリー的には大いにカタルシスを減じている。これではクリントも浮かばれまい。

 超宇宙でダイゴたちの体がアノー号から抜け出すシーンがあるが、この時点で彼らは肉体に捕らわれない存在になっていると思われる。それが肉体の死を意味するのかについては分からない。

 そして、生命体の微細な胞子のメッセージが届く地球らしき惑星だが、氷付けではなく青い惑星、そして地表が見えない。ということは、大氷河期が終わった後か始まる前で大陸が水に覆われた状態の地球にメッセージが届き、ラストナレーションのパンスペルミア説に繋がるのではないだろうか。

 ゴーディアン最終回の評価を下げている大きな原因の一つは、ラストのBGM選択だと思われる。D-16(サントラより)は幸福感に包まれたラストにはあまりにも重すぎる。もっとハッピーエンドっぽい曲なら気持ちよく終われたのではないだろうか。

 ラストナレーションの「これは、架空の物語である」はわざわざ断る必要があったのか、と多くの視聴者が疑問に思った台詞。私はパンスペルミア説についての断りだと解釈している。

 ちなみにパンスペルミア説だが、隕石によって運ばれた元素が生命発生に繋がっているのではないかという研究は続いているので、まだ可能性はありそうである。


こぼれ話


 『冒険王』1981年3月号掲載の桜多吾作コミカライズ第17話(最終回)はアニメ72話「決戦ゾーン9999」、73話「栄光の超宇宙」にほぼ忠実。ただし、マドクター側はトロピーヌは出てこず、エリアスが最後までトップ扱いだった。アニタやクリントの死亡も省略されている。

 バリーが「第1から第8隊まで緊急出動せよ!!」と命じているが、これはサントーレ隊の出撃シーンが元ネタだと思われる。アニメ本編では選抜された数隊が出撃している。

 ゴーディアンが白光剣で戦闘する大ゴマで、「ガーディン日光剣にっこうけん」と盛大に誤植している。

 本編では二つの宇宙の間に超宇宙があると語られているが、コミカライズではブラックホールの向こうに別の宇宙があるのではないかと簡略化されている。チェスターやアダムⅢがいないためか、チョコマだと思われる男の子が指摘している。

 ラストシーンはイーレムで希望の惑星を見つめるダイゴとピーチィのカット。こちらでは精神体になってないようなので、ダイゴとピーチィーも子孫を残せるだろう。


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