1-70.70話「失われた希望惑星」

 松崎健一の『ゴーディアン』ラスト脚本であり、石田昌平のラスト演出でもある。松崎健一らしくSFマインドに溢れた話であり、アダムⅢの同胞への入れ込みと、ダイゴの前向きさが感じられる話になっている。それでは見ていこう。


70話「失われた希望惑星」 1981年2月1日


 脚本     :松崎健一

 演出     :石田昌平

 作画監督   :松井栄


あらすじ


 アノー号のブリッジでは、当直のダルフが編み物片手にまどろんでいた。そこに超高速波の通信が入る。バリー艦長に伝えようと立ち上がったダルフを制したのはアダムⅢだった。アダムⅢは主立った者を集め、超高速波がイクストローム星人のものだと説明し、発信源に向かうよう強く命ずる。アノー号は誘導波に従うことにした。進路を変えたアノー号をいぶかしみ、ドクマ円盤も後を追う。

 超高速波を発していたのは、地球そっくりの惑星だった。呼びかけによるとストロームと名乗っている。イクストロームの言葉で「希望」という意味だ。ついに人類の移住可能な新天地が見つかったと喜ぶ乗組員たち。誘導波に従い、アノー号は惑星の空港に着陸した。しかし、こちらからいくら通信を送っても返答はない。バリーは慎重になるが、アダムⅢは「同胞がそんな間違いを犯すわけがない」と強気だ。結局夜が明けてから惑星の探索に出ることとなった。

 翌朝探索に出たダイゴとピーチィたちだが、整った都市はあるのに人っ子一人いない。かろうじて見つけたトカゲ型の小動物は、クリントがちょっかいを出したために逃げられてしまった。他の探索隊も成果はなし。バリーは皆を一旦帰還させ、ゴーディアンで広域探査に切り替えた。

 その頃、ドクマ円盤も惑星近くに到着した。地球と変わりない発展を遂げた惑星に驚いたエリアスは自ら探査を申し出、毒魔大帝統も了承する。

 探査に出たゴーディアンだが、やはり人影はない。空中に光る物体を見つけたが、それはエリアス率いるクラフト円盤だった。都市上空でゴーディアンとマドクターの戦闘が始った。円盤の撃墜や流れ弾で、どんどんビルが倒されていく。ゴーディアンは司令船を撃墜し、エリアスたちは脱出した。しかし、戦闘が終了するとまるで何事もなかったかのようにビルが起き上った。驚くダイゴ。

 ドクマ円盤に戻ったエリアスの報告を聞き、サクシダーはアノー号の人間を皆殺しにすれば惑星が手に入ると強気になる。大帝統はサクシダーに出撃を命じた。

 前回よりも数を増したマドクターの攻撃に、ゴーディアンとバック率いるコンバット部隊が出撃した。またも巻き添えで街が壊されていく。しかし、今度は今まで様子が違った。破壊されたビルは幻のように消え、荒れ地が現れたのだ。バリーはアダムⅢを問い詰める。実感幻視装置の発達したものだとアダムⅢは残念そうに説明した。装置のコントロールをしている柱が折れたところが荒れ地に戻っているのだ。

 その間にも、ゴーディアンとマドクターの戦闘は続いている。数で押すマドクターにゴーディアンも三体に分離して対抗し、確実に敵を減らしていく。いっこうに守りを突破できないサクシダーに大帝統が呼びかける。サクシダーは「それが不思議なことが起こりまして」と弁明するが、「お前に任せたのが間違いであった」と斬り捨てられた。

 戦闘を終えたダイゴが帰還した。モニターには荒れ果てた惑星の地表が映っている。「彼らは不毛の惑星を作り替えることに疲れたのだ」とアダムⅢは語る。実感幻視装置による幻想の世界に逃げ込んだイクストローム星人は滅び、幻の世界のみが残った。ダイゴはアダムⅢに、実感幻視装置を壊すと宣言する。「この惑星に移住した者たちの夢を壊さないでやって欲しい」と懇願するアダムⅢにダイゴは反論する。

「俺たちは気づいたからまだいい、だが、次の仲間が来たらどうなる。あの朽ちた宇宙船を見たか。ああなっちまうんだ。移住の可能性を捜しまくり、捜し回った末に……」

 ダルフたちの同意もあり、アダムⅢはダイゴの意見に従う。実感幻視装置の本体を捜すためには、ゴーディアンの同調探査装置にアイロイクストロンエネルギーを集中するという助言をもらったダイゴは、アダムⅢにこう言い残して出撃した。

「あんたの仲間たちが築いたこの見せかけの惑星は、破壊しがたい記念碑かもしれねえ。だけど俺たちのように、必死に移住できる星を捜してる者にとっちゃ、その記念碑が墓標となるんだ」

 同調探査装置により、巨大な塔が実感幻視装置のコントロール装置だと分かったダイゴは、内部に侵入する。中には生命維持装置の故障したイクストローム星人のミイラが並んでいた。アダムⅢからイクストローム星人のメッセージを持ち帰って欲しいと頼まれ、ダイゴは美術品が集まる一角で金の翼の生えた少女像を見つける。ダイゴが像を持って脱出すると、塔は爆発した。

 宇宙のドクマ円盤では、実感幻視装置が消えたことにより、露わになった惑星の姿にエリアスたちが驚いていた。強酸性の惑星を表面だけ作り替えたのがストローム星だったのだ。

 アノー号では、ダイゴの持ち帰った像の周りに乗組員が集まっていた。アダムⅢは語る。宇宙を放浪するのに疲れたイクストローム星人は人工的に楽園を作ろうとしたが、惑星移住に失敗し、宇宙船も失ったため、生命維持装置で仮死状態になり新たな来訪者に見つけてもらう道を選んだのだと。

「あの星だけが俺たちの最終の星じゃねえ。この広い宇宙のどこかに、必ず俺たちを迎えてくれる星が、どこかに、どこかにきっとあるはずだぜ」

 ダイゴは自分に言い聞かせるように語った。


解 説


 編物をするダルフを久しぶりに見た。どうやらブリッジも輪番制になっているようだ。

 今回のアバンは長め。惑星に向かったところでサブタイトルが出る。

 話に混ざりにくいせいか、いつの間にかブリッジにダイゴたちの席が出来ている。

 地上ではいつもの隊員服に戻っているバック。

 久しぶりにクリントを見たが、謎の生き物を追っかけていったまま戻らなかった。あの生き物は伏線になっていたのだろうか。

 サクシダーが自分の部下がいないのに不満だったのか、今回はマドクター兵が二人お供に。しかし、作戦失敗でサクシダーの転落はさらに続く。

 クラフト円盤だけでは物足りないと思ったか、司令船が追加。描き下ろしだろうか。「スタジオぬえのデザイン・ノート」に設定画が収録されている。

 アノー号円盤の出撃シーン、バックとモブ隊員との会話が生き生きしている。ヘルメットをしているがこれは地上限定なのだろうか。円盤は複座式であることも分かる。

 ゴーディアンとクラフト円盤の戦闘、デューク・スクリュー投擲シーンでボムドリルのように見えるカットが。また、三体に分離するシーンでダイゴの背景がいつもの発光とは違う背景になっているのも興味深い。

 イクストローム星人のミイラは人類とほぼ同じ姿だった。アダムⅢの格好はフルヘルメットの宇宙服姿なのだろう。

 ラストのアノー号乗員集合カットを見ると、80人くらいはいる様子。ゴーディアンにしては頑張ったモブだと思う。

 ほろ苦い結末がオールドSFらしい。石田昌平の演出も戦闘が良く動いたりと頑張っていた。初見の時新生編で一番印象に残った話。


今回の名言


「追うんじゃねえ! ゴーディアンに任せろ! こっちを先に片付けるんだ」(バック)

「最初と言うこと違うんだものな」(隊員)

「何か言ったか!」(バック)

「い、いえ」(隊員)

「ゴーディアンはあてにするな」と威勢良く出撃したバック隊長に対する隊員の突っ込み。


こぼれ話


 『ジ・アニメ』1981年3月号(vol.16)の放送予定欄ではアノー号の設定画と共に、『ガッチャマンF』のカットが誤って使われている。

 視聴者の質問コーナーでは、前号に引き続き女児の「ダイゴとピーチィは結婚するのか、キスシーンはあるのか」という質問に山本優が回答している。色恋を前面に出さない氏らしい内容だ。

「前に2人の結婚をにおわせるような話(58話)もつくりましたし、ゆくゆくは、一緒になる間柄だ、と考えていいでしょう。キスシーンですか? そういうベタベタシーンは考えていません。ピーチィの危機にダイゴが何をさておいてもかけつけることが、愛情表現なのです」

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