第4部 宇宙
1-67.67話「ドクマ円盤の逆襲」
『アニメージュ』1981年2月号の放送予定欄で山本優は、ゴーディアンは当初三部構成だったが、延長が決まった時点で「新生編」を加えた四部構成に切り替えたこと、これまではロボットアクションの世界に極力日常の人々の一喜一憂を導入して、人間のにおいの感じられるタッチを心がけてきたが、今後は宇宙を舞台にどうやって人間の生活臭を出すか、ゴーディアン独自の世界の味をいかに出すかが最大の検討課題になっていると記している。今回はシナリオを参考に見ていきたい。
67話「ドクマ円盤の逆襲」1981年1月11日
脚本 :山本優
演出 :紀裕行
作画監督 :松井栄
あらすじ
サントーレでは、今まさに旅立とうとするアノー号の乗組員と、地球に残る人々が別れを惜しんでいた。だがロゼの姿がない。チョコマが必死に捜していると、サントーレの岩山の上からロゼの声が聞こえる。ロゼはチョコマやダイゴたちに「地球はあたいたちが引き受けたからね」と呼びかけ、ダイゴも「必ず迎えに来るからな」と答える。ロゼは、追ってきたジェロニモと共にアノー号を見送った。廃墟と化したヴィクトールタウンを眼下に臨みながら、アノー号は上昇していく。
アノー号ではホールに一同を集め、アノー号のシステムの解説と、人員配置の発表がされた。ただし、ダイゴはいつも通りゴーディアンの担当である。不満げなダイゴに、ピーチィーが「あなたからゴーディアン取ったら何も残らないじゃない」と突っ込む。
一段落したところに、明かりが落ち謎の映像が現れた。現れたのはアダムⅢ。カナードの遺跡で亡くなったのは彼の最後の分身で、本体はパルスとしてアノー号のクローンスリープ装置の中にあったのだ。アダムⅢは新たな惑星へ導くと言い、毒魔大帝統の円盤がアノー号を狙っていると警告して消える。
一方、ドクマ円盤では、毒魔大帝統の本体の前にエリアス、サクシダー、テライ、カルナが跪いていた。ドクマ星人の子孫を絶やさぬため大帝統も必死なのだ。大帝統はエリアスに「わしの力がどれほどのものか、側にいてしかと見るがよい」と呼びかけた。
火星付近を航行中のアノー号の前方に、突如暗黒空間が現れた。そのまま空間の中に吸い込まれてしまう。しかも、この暗黒空間はウカペの霧に包まれた太陽へ向かっているというのだ。毒魔大帝統の目論見は、アノー号から乗組員を引きずり出し、ウカペの霧の中で熱死させることだった。大帝統はエリアスに、クラフト円盤で作戦を遂行するよう命ずる。
既にウカペの霧がアノー号を熱し始めていた。苦しむ乗組員たち。そこに、謎の円盤がハッチを襲撃しているとの報告が入った。バリーはガービンで出撃するようダイゴに要請する。サオリもゴーディアンは宇宙でも戦えると断言する。出撃したダイゴは、クラフト円盤とのサイズ差に戸惑いながらも白光剣で斬る。
アノー号では、メインパイロットのチェスターが、イクストロンエネルギーによる特殊速度の数式を発見していた。アダムⅢによればワープとは違うが、レベル1から5まで瞬時に操作すれば人体に影響を及ぼさないという。バリーはダイゴの帰還後に特殊速度で脱出することを命ずる。
クラフト円盤の最後の一体を破壊したダイゴが帰還すると、アノー号は特殊速度レベル1、レベル2へ移行し、暗黒空間を脱出した。その背後に、太陽系のグランドクロスが広がっていた。
解 説
作画のスタープロダクションは韓国のスタジオ。ゴーディアンでは初出だと思われる。『超時空要塞マクロス』等を担当したスタジオと同じだろうか。延長ということでスタジオ確保に苦慮したことが窺える。
今回のシナリオ冒頭の「登場キャラクター」はそのままアノー号乗員の人員配置表となっている(本編の紹介に準じて追記あり)。
バリー(艦長)
サオリ(副艦長)
ダイゴ(メインコンバット)
バック(コンバット隊長)
ピーチィ(女子コンバット隊長)
ダルフ(通信主任)
チェスター(メインパイロット #53初出)
ポール(補助パイロット)
チョコマ、ジョー(整備班)
ドブロフ(船医)
アンナ(看護係)
キャシー、シスターミッチェル(生活班)
ほか約30名。そしてナビゲーターのアダムⅢがいる。「サントーレに残る人は別紙参照」となっているが、残念ながら別紙はなかった。ちなみにロゼ、ジェロニモ、花巻博士、アンノンジー等である。
チェスターはECTで救出された助教授だが、ここで突然の再登場。花巻博士の助手とかで顔見せの機会はあったと思うのだが。テロップには出ていないが声優は福士秀樹と思われる。何にせよ延長で一番得をした人物だろう。一緒に助かったシモーヌやニッキーはアノー号に乗ったのかも気になる。
ジョーは紹介はされたがどう見ても別人。シスターミッチェルは金髪のメカコン隊服を着た女性隊員だと思われるが、別人の可能性が高い。ベールで髪の色が今まで分からなかったので断定できない。
アノー号のシステム解説はシナリオにはないシーン。パソコンの液晶モニター風のコンソールに、キーボードは触ると浮き上がる電子タッチパネル式と、当時でもかなり進んだ表現がされている。内部説明には河森正治の描いたと思しき透視図解が使われている。
ダイゴ、バック、ピーチィ、アニタのコンバットシートは同室。宇宙を見たピーチィとアニタの会話シーンはシナリオにはない。代わりに、休憩室で賭けトランプを楽しむダイゴのシーンがカットされている。山本優の「人間の生活臭」を描く試行錯誤だったと思われるので本編で見たかった。
シナリオには船内シートに安全ベルトの描写があるが、本編ではそれらしいものはない。
暗黒空間、本編では簡略化されてしまっているが、シナリオでは暗黒空間自体は太陽と逆方向に進み、毒魔大帝統が発生させた空間の磁気により、アノー号の計器を狂わせて太陽方向に脱出させようとする作戦だった。クラフト円盤もシナリオではカニ型だった。
特殊速度だが、レベル1から5までの設定もシナリオとは違っているようだ。シナリオではレベル1から3までがワープに近いものだと説明している。
シナリオではウカペのイクストロン吸収に苦しむゴーディアンや、ウカペの熱に苦しみながらアノー号のレベルを上げるシーンなど緊迫しているが、本編では普通の戦闘になっているのが残念。
ラスト、特殊速度で太陽系を離れるアノー号のワイヤーフレーム状の飛行とBGMはお気に入りのシーン。シナリオによると、ラストカットの十字は太陽系のグランドクロスなのだが、星が多すぎるように見える。
今回の名言 (シナリオのみ)
「それまでァ、たくさん子供こさえて地球を守ってろよーっ! ヨボヨボのばあさんになったって、必ず生きて待ってろよーっ!」(ダイゴ)
ロゼに。本編ではカットされたが使って欲しかった。
「あーあ、お安くねぇムードだなァ。おふたりさんで宇宙へ新婚旅行って感じだねェ」(ダイゴ)
「ダ、ダイゴ?!」(バリー)
「冗談を言っているときではありません!」とはにかむ。(サオリ)
こぼれ話
『冒険王』1981年2月号掲載の桜多吾作コミカライズ第16話は「ドクマ円盤の逆襲」に準拠。アノー号が宇宙へ発進したところから始まる。ストーリーはオリジナル脚本に近いが、敵を倒した後にアノー号のワープスイッチを押すのはダイゴ。しかし太陽の側で戦闘したため服が燃えてしまい、ピーチィに殴られるというオチ。
アニメのアダムⅢにあたるアノー号コンピューターは、白い人型で目の部分だけが黒い。第13話に出てきたイクストローム星人の精神体に似ている。
アノー号の特徴的なブリッジ内装が再現されているので、デザイン設定が桜多吾作にも渡っていたことが伺える。
冒頭でダイゴが皆に檄を飛ばすシーンがある。桜多吾作オリジナルだと思われるが、ダイゴの成長が窺える(句点は補足)。
「みんなしっかりしろよ。たしかにおれたちが地球を見るのはこれが最後かもしれない。けどよ、どのくらいかかるかわからねえが、おれたちの生きていける惑星をさがしあてたら、そこでどっさりとイヤというほど子孫をつくるんだ」
顔を赤らめるピーチィ。
「そしてその子孫に語ってやろうじゃないか。この美しいおれたちの
最終ページの柱には、『地球をあとにはてしない宇宙の旅に出たダイゴたちに未来はあるのか!? 大完結の次号をまて!!』とアオリ文がある。
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