1-65.65話「決戦前夜」

 『ジ・アニメ』vol.11(1980年10月号)の質問コーナーで山本優は毒魔大帝統の正体について「その本当の正体は最後の最後まで分かりません」と答えていたが、この回でついに暴かれることとなる。これは73話に延長した功績だろう。それでは見ていこう。


65話「決戦前夜」 1980年12月28日


 脚本     :山本優

 演出     :紀裕行

 作画監督   :松井栄

『アニメージュ』vol.31(1981年1月号)、vol.33(1981年3月号)では村中博美


あらすじ


 マドクターは毒魔殿から砲台の砲塔をサントーレに向けて設置していた。それをサントーレから偵察するバリーとアンノンジーは、マドクターもイクストロン砲を準備したのではないかと疑っていた。ダイゴは毒魔殿を叩ければと歯噛みする。

 対話室では京太郎が皆の労をねぎらい、間近に迫ったアノー号の出発について語っていた。しかし、ジェロニモは地球に残って子孫と太陽が戻る日を待つと宣言する。ダイゴにはジェロニモの行動が理解できないが、ジェロニモの意志は固かった。アンノンジーと花巻博士も地球に残り、イクストロンで人類が生き延びる道を探るという。

 京太郎は自分の意識とイクストロン砲を直結させて欲しいと花巻博士に頼む。それは京太郎の意識の消滅と引き替えにエネルギーを供給するということだ。それでも5発分の供給しかできない。泣き崩れるサオリを見たダイゴは毒魔殿に潜入して毒魔大帝統を倒すと京太郎に言い、作業時間の2時間の間に潜入を決行する。バックとクリントを連れ、ダイゴは生身で毒魔殿に向かった。

 潜入に成功したダイゴたちが見たのは、マドクター軍に訓示するエリアスだった。スフィンクス顔の新造戦艦も見える。バラス亡き後事実上の総統になったエリアスは、「マドクター以外の全てのものをこの大地から破壊せよ、90分後に総攻撃を開始する」と宣言する。

 自室に戻ったエリアスは、戦闘用の甲冑に着替え、古代エジプト風の被り物を付ける。甲冑姿の侍女二人にも「エリアス家の誇りを汚さぬよう戦ってくれ」と命じ、飲み干したワイングラスを叩き割った。

 その間に毒魔殿内の神殿にたどり着いたダイゴたちは、ホログラフの目の大帝統を初めて見る。ライフルで攻撃しても効かず、バックは背負ってきた簡易時限爆弾をホログラフの前に設置する。侵入を知って駆けつけたマドクター兵もろとも毒魔殿は大破し、ダイゴたちは神殿の奥へと侵入する。

 サントーレでは、バリーたちがダイゴたちの帰りを待ちわびていた。京太郎は27分後にイクストロン砲を発射できるという花巻博士の報告を聞き、「アノー号を頼んだぞ」と涙にくれるサオリに呼びかけた。

 神殿の奥に侵入したダイゴたちが見たのは、巨大な脳と周辺を取り巻く8つの棺だった。棺にはエジプトのミイラのようなものが入っており、デスマスクの上部から巨大な脳へと回路が直結している。その脳から毒魔大帝統の哄笑が響き渡った。クリントが脳めがけて飛びかかるが、バリアではじかれる。ダイゴは背負った爆弾を設置して部屋を離れるが、爆弾はサイコキネシスで浮き上がってダイゴたちを追ってくる。間一髪爆発から逃れたダイゴたちは、追ってきたサクシダーたちをかわして脱出する。

 エリアスは破壊された神殿の前で立ちすくんでいた。そこに毒魔大帝統の声がかかる。初めて大帝統の本体を見たエリアスは思わず跪く。大帝統は部下数名とこの場に残るようエリアスに呼びかけ、初めて自らの正体を明かす。毒魔大帝統は、5万年を生きながらえたドクマ星人トップメンバー8人の集合体だったのだ。

 ダイゴたちがサントーレに戻るよりも早く、マドクターの総攻撃が始まった。


解 説


 京太郎は、当初の予定ではもっと早く退場する予定のキャラクターだったことが、『アニメージュ』vol.23(1980年5月号)の山本優インタビューで語られている。

『それ(プロジェクトX)を完成させるための執念のようなものが、脚本のうえでもかれを最後まで登場させざるを得ない状況にしているといってもいいと思います』

 今回の京太郎には、その執念がにじみ出ている台詞が多い。声は北村弘一だと思われる。

 今回初めて本編にゴーディアンが登場しない。プロテッサーで向かっても良かったのではないか。これも延長に伴う追加回だから許されたのだろう。

 訓示するエリアスは「マドクターの戦力はサントーレの5倍、サントーレで戦える者は60名にも満たない」と具体的に戦力を把握しているが、やはりスパイからの情報だろうか。

 エリアスの髪のドクロアンテナはヘルメットなのかカチューシャなのか気になっていたが、今回その上から古代エジプト風の被り物をつけていた。やはりカチューシャなのだろうか。旗艦らしき戦艦がスフィンクス型だったり、エジプト趣味を前面に押し出してきている。

 今回の背景はEDテロップで作画担当と同じ「ユニバーサル」と表記されているが、エリアスの自室や毒魔大帝統の本体も担当したのだろうか。

 銃撃されても間近で爆発しまくっててもケガ一つしないダイゴたちはすごすぎる。今回も爆発のプロとして仕事をこなすバック、随所でマドクター兵を倒すクリントも名トリオ。

 次回予告、テロップは「新たなる出発たびだち」だが、安原義人は「しゅっぱつ」と朗読。絵も使い回しが多く、収録時に間に合わなかったようだ。


今回の名言


 「分からない。ただ我々は天に身を任せて、幾世代経とうと待ち続ける」(ジェロニモ)


「もとより私の命は、プロジェクトXに捧げたもの。私もまた戦いたいのです。毒魔と戦って死すと。それは人類の未来のために」(京太郎)


 こぼれ話


 『アニメージュ』vol.31(1981年1月号)の放送予定欄のテーマは、「タイトルロゴ・イメージ」。山本優はスタッフのイメージやOPの歌詞や曲調、リズムを参考にしたと解説している。

「そそりたつ岩を削り立てたようなガッシリした配列は舞台となる荒野のイメージ。堅めの字感はロボットの装甲を」

「ブルーと赤の対比は沈着冷静だが激しい闘士(闘志の誤り?)が要求される主人公ダイゴとゴーディアンの戦士としての気概」

「背後から差し込むように全体をささえる黄は東の地平線に昇る旭光、みなぎっていく活動のエネルギー」

 岩のイメージならダイゴが上に乗ってもおかしくないと納得である。

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