1-49.49話「濁流を渡る密使」

 今回は46話の後日譚。前回と同じく曽田博久が担当している。そしてサントーレとマドクターの各タウンを自らの同盟に引き入れようとする駆け引きが新たな段階に入る。異常気象も世界スケールに広がっている。それでは見ていこう。


49話「濁流を渡る密使」1980年9月7日


 脚本     :曽田博久

 演出     :渡部英雄

 作画監督   :杜福安

(『アニメージュ』80年9月号では村中博美)


あらすじ


 サントーレ周辺では長雨が続いており、洪水の被害も起きている。体調を崩した患者が詰めかけ医務室は長蛇の列だ。

 甘い新婚生活をスタートさせたダルフとキャシーだが、好事魔多し。キャシーはアンナに手術の手伝いにかり出され、二人仲良くリンゴを食べていればダイゴが呼びに来る。花巻博士が異常気象について説明するというのだ。

 花巻博士にウカペの活動によって太陽フレアが活性化し、デリンジャー現象が発生して世界的な異常気象が起きていると聞かされたダイゴは対話室の京太郎に相談する。

 京太郎はマドクターに対抗するため、各地のタウンとサントーレ同盟を結ぶべきだと助言する。「そうして結集した力こそがマドクターを倒した後イクストロンを活用する元となるのだ」と言う京太郎に「わかりました」とダイゴは同意する。

 ダイゴの話を聞かされたサントーレ首脳陣は提案を受け入れるが、誰が同盟を結ぶ交渉に向かうかで結論が出ない。ダイゴはそわそわしている竜馬を見かねて、竜馬とキャシーとダルフをヨークタウンに向かわせようと提案する。バックが「新婚旅行じゃない」と抗議するが、キャシーの祖父であるスミス将軍に渡りを付けてもらうのが目的だとダイゴが説明し、皆も納得する。

 その頃毒魔殿でも、毒魔大帝統がイクストロンを手にいれサントーレを一刻も早く倒すため、各地のタウンとマドクター同盟を結ぶよう命じていた。

 ホバーカーでヨークタウンに出発した三人。ダルフとキャシーはダイゴの計らいに意気を感じていたが、ついつい新婚旅行ムードになってしまい、後部座席の竜馬は居心地が悪い。その行く手に突然闘獣士が立ちふさがった。マドクターが待ち伏せしていたのだ。サクシダーが闘獣士アンブレロンに攻撃命令を出す。ダルフはホバーカーで逃げ回るが、燃料が尽きてしまう。進退窮まったところに洪水が押し寄せてきた。アンブレロンは押し流されるが、ホバーカーも流されてしまう。ヨークタウンに手を下すまでもないと判断したサクシダーは、近くのヒルトップタウンに目標を変えた。

 ダルフからの通信を聞いたダイゴは、バリーが止めるのも聞かずゴーディアンで飛び出した。上空から捜すダイゴだが、雨で視界は最悪。結局見つけることが出来ずにサントーレへ引き返した。

 ホバーカーが漂着したのは、水没したヨークタウンだった。生き残った人々の中にスミス将軍を見つけ、キャシーは抱きついて喜ぶ。マドクターがヒルトップタウンに向かっていることを知った竜馬は早速出発しようとするが、ヨークタウンの人々がホバーに積んであった物資を運び出している。抗議しようとする竜馬をキャシーとダルフが止めた。サントーレから救援物資を運ぼうというのだ。納得できない竜馬はダイゴに通信する。ダイゴも難色を示すが、ダルフが「俺たち幸せだから分かるんだ。どんなちっぽけな幸せでも、それは何よりも尊い物だと分かるんだ」と力説。なおも乗り気ではないダイゴを、サオリはヨークタウンの人々を助けることが他のタウンからの信頼を獲得することになると説得する。

 一方、毒魔大帝統もヨークタウンの重要性に気づき、サクシダーを引き返させる。ゴーディアン三体で物資を運ぶゴーディアンは、ヨークタウン直前でアンブレロンと遭遇する。プロテッサーはガービンに自分の荷物を預けるとアンブレロンと戦い、デリンガーとガービンが物資を届ける。ガービンよりも大きいアンブレロンに水中に引きずり込まれてピンチのプロテッサーたが、配送から戻ってきたデリンガーとガービンに合体し、必殺白光剣で止めを刺す。

 補給物資に喜ぶヨークタウンの人々。スミスは竜馬に元外交官のヨークタウン市長を紹介する。彼の口添えがあれば今後の交渉に役立つだろうとの計らいだ。竜馬はダイゴに「今度のことで、愛、すなわちLOVEっちゅうもんが大切なものなんじゃと教えられたぜよ」と語り、「お前の口から愛とかLOVEって言葉が聞かれようとは思わなかったぜ」とからかわれるのだった。


解 説


 今回から、EDの録音スタジオ名が『シネビーム』から『ニュージャパン・スタジオ』に変更となっている。どちらも現存していない。

 タイトルとは違い、本編では「濁流を渡る」というより流されてるだけだった。

 キャシーのナース服姿初披露。

 ダルフの読む新聞は「世界日報」。竜馬が持ち込んだのか?

 今回の京太郎の声は北村弘一だろう。声もかなり聞き取りやすくなっている。

 ダルフたちのホバーカーはハンドルではなく操縦桿タイプ。しかも二組ある。飛行機のコクピットのような物だろうか。

 事実上の新婚旅行につきあわされた竜馬、ダルフに突き飛ばされてキャシーと抱きついたりと役得シーンが多い。

 今回はヨークタウンに行くシーンから雨のはずなのだが、カットによってまちまち。視界ゼロで出撃するゴーディアンだが、前回見せたプロテッサーのサーチライトがあれば楽だったのではないか。

 プロテッサーがデリンガーとガービンに嵌入するシーンで久しぶりに「セットガードプロテクション」とコール。

 あまり意見を言わないダルフが今回述べた言葉は、12話のダルフの姉サーニャの「家にはお金はなくたって倖せはひとにわけてあげたいほどよ」と被って見える。スミス将軍のダルフ株も着実に上昇中。

 カットを間違えたのか、ラストでダイゴが口パクしているのに無言のシーンが。

 竜馬はこの回からサントーレを離れることになる。


今回の名言


 「直ちにサントーレ同盟を作り、地球の破滅を前にしても勇気と希望を失わず、犠牲をいとわない本当の同盟を作るのだ」(京太郎)


 「目の前の人々も救えなくて、それで人類を救うなんて大きなことがどうして言えるの」(キャシー)


こぼれ話


 『アニメージュ』vol.27(1980年9月号)の放送予定欄では、48話からビッグカタストロフが始まり、緊迫が深まる設定会議を山本優が描写している。

 『これから先は1話たりともしっかり頭にいれておかないと一連の流れを見失うおそれがある』ということで、まずは美術設定の新井寅雄(背景会社『プロダクション・アイ』の設立者)が柔和な顔で笑いながら「こりゃ大スペクタクルだ。えらいことになったぞ」と恐怖の声を上げる。由井正俊Pも「作画、だいじょうぶかな、スケジュール怖い!!」と訴えているような目をしている。65話の最終回まで息切れせずに「なんとしても実り多い最終回を迎えたい」と一同必死だが、そこに「65話よりのびるかも……」という驚きの情報が飛び込んできた。

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