1-25.25話「危うしビクトールタウン」
前回から続くヴィクトールタウン攻防戦。今回のテーマは酒浸りの医者ドブロフの更生である。
しかし視聴者が度肝を抜かれたのはいきなりのOP画全変更だろう。岩を持つガービンではなくタイトルロゴに立ち飛び降りるダイゴとクリント、各ロボットの形状が超合金に準拠したため変わる足の開き方(ガービンの頭のアンテナは変更無し)、ゴーディアンが出撃する見たこともないサントーレ基地、そして闘獣士風の敵に身を躍らせるプロテッサーの緑光剣、デリンガーの赤光剣、ガービンの必殺白光剣。ラストは青空にダイゴを前面に立つ三体のロボ。今回以降、ゴーディアンは本編でも超合金に準じたデザインが増えてくる。
それではシナリオを参考に見ていこう。
25話「危うしビクトールタウン」 1980年3月23日
脚本 :曽田博久
演出 :落合正宗
作画監督 :村中博美
あらすじ
マドクターの侵攻はヴィクトールタウンの南半分に及び、バリー率いるメカコン18連隊はヴィクトールハウス付近の防戦で手一杯。援軍を回してくれるようアンノンジーに直談判したダイゴは、医療センターのある第5地区への救援を命じられる。そこでダイゴは飲んだくれの医師ドブロフと出会う。酔って銃を振り回すドブロフを見たダイゴは電子ロープで銃を叩き落としてパンチを炸裂、ドブロフはのびてしまう。
一方毒魔殿では、エリアスのプロジェクトX調査が捗らないことにいらだつ毒魔大帝統が、黙示録444ページに基づきサクシダーに第5地区の攻撃を命じた。
救援を続けていたダイゴは、ドブロフを捜す看護婦アンナに出会う。ドブロフが息子をマドクターに殺されて酒におぼれたこと、アンナに腎臓を提供した命の恩人だということを聞かされたダイゴはやむなく救出に向かう。
病院で発見したドブロフは、負傷して取り残されたマドクター空挺隊員をメスで殺そうとしていた。しかし、死に怯える隊員をどうしても見捨てることが出来ず、地下の手術室に連れて行く。正気を疑うダイゴだがアンナに一喝され、医療機器を運んだ上に輸血までさせられる。ついにはマドクターの攻撃で病院は停電。もうつきあいきれないと飛び出そうとするダイゴをアンナが引き留める。アンナは敵の命をも助けようとするドブロフが医者として立ち直ろうとしているのだと語る。アンナのドブロフへの厚い思慕の情を見たダイゴは、発電機を持ってくると言い残して飛び出す。
ゴーディアンを発進させたダイゴはガービンとデリンガーを遠隔操作で囮に置き、発電機を運び込む。バルバダスはバラスに闘獣士マドクス、サタリケーンの出撃を要請する。遠隔操作のデリンガーとガービンでは闘獣士に歯が立たない。プロテッサーで戻ってきたダイゴはデリンガーに入って立ち向かうが、輸血の影響でうまく同調できない。サタリケーンの腕ハリケーンで苦しめられるデリンガーだが、雪山での特訓を思い出しマグナムバンチを出してブリザード・アタック後サタリケーンに打ち込み、必殺赤光剣で倒す。しかし、第5地区はマドクターに占領されてしまった。
マドクター隊員の手術は無事終了し、メカコン本部内の臨時病棟に運ばれた。ダイゴは「俺の姉さんの青春を奪ったのもマドクターだ」とドブロフに語る。医者として立ち直ったドブロフは、ダイゴ、アンナと硬く手を握るのだった。
解 説
タイトル、シナリオでは「危うしヴィクトールタウン」。
今回テロップにはないが、ドブロフの声優は飯塚昭三、アンナは麻上洋子(一龍斎春水)。
冒頭、避難する市民を援護しようか会話するメカコン隊員たちの会話は本編のみ。
メカコン本部の入り口に鳥のようなマークが付いているが、これはメカコンのマークだろうか。
ダイゴがドブロフを殴るシーン、シナリオでは「このヤブ医者めッ」と言っているが、本編では「畜生、クソッ」と変わっている。このシーン以外にも、シナリオで「ヤブ医者」と言っている箇所があるが、本編では全てカットされている。これはドブロフはあくまで心が弱っているだけで腕は確かだという解釈で外したのか、アメリカが舞台の作品にふさわしくないと思ったのか。
毒魔黙示録、シナリオでは「444頁、35章」。
ダイゴと病院に戻ったアンナ、CM前ではナースキャップをつけてないが、CM後はつけている。
ダイゴの血液型がB型だと分かる。安原義人の血液型と同じなのは偶然だろうか。
サタリケーン戦、シナリオではマグナムバンチではなく鎖玉が使われている。やはりマグナムバンチの設定前武器は鎖玉だったのだろう。特訓回想はこれまでのシナリオでもさんざん使われているのだが、本編で使用されるのは初。
必殺赤光剣が剣に赤い光を帯びるように描かれているが、これはシナリオにはない。「灼光剣」という誤表記はこのシーンからの連想かも知れない。
デリンガーとガービンがドブロフたちをメカコン本部へ運ぶシーン、シナリオでは空いているガービンのお腹に入れて運ぶようになっていた。本編ではデリンガーが患者のストレッチャーを持ち、ガービンがドブロフとアンナを手に入れて運ぶが、その方が安定していて正解だと思う。
今回のクリントだが、冒頭ダイゴと共に本部へ向かってからラストシーンの会話まで出てこない。シナリオでは病院での救援も手伝っており、逆にラストシーンにはいない。
ラスト、ダイゴがドブロフに言う「俺の姉さんの青春を奪ったのもマドクターだ」は、17話シナリオの没台詞。ただし、今回のシナリオでは「先生の息子さんはマドクターに殺された」と前置きの台詞が入ってる。これがないのでやや唐突な感じ。このシーン、シナリオでは病棟になっているが、本編では本部屋上。ロングカットでは降り口がなく、そもそも背景に描いてあったアンテナもなくなっているのはひどい。
今回のドブロフやアンナ、マドクター空挺隊員、病院の輸送ヘリ等は設定画が「スーパーロボットマテリアル」に載っている。
次回予告は過去回の使い回しで構成されており、別の意味で不安が高まる。
今回の名言
「それからなお前! 暗いからといって早まって死ぬなよ、まだ地獄じゃないんだぜ」(ダイゴ)マドクター隊員に。
「メカコン隊員なら普通の人間の四倍(血を)採っても大丈夫なはずだ」(ドブロフ)
こぼれ話
新OPの白光剣シーン、オリジナル歌詞は「怒りの鉄拳」なのだが、「鉄けん」とテロップに表記されるため「鉄剣」との意味にもとれるとネットでは突っ込まれていた。ラストカットの「タツノコプロ」の「ロ」の空間から顔を覗かせるデリンガーも密かなポイントである。
『アニメージュ』vol.30(80年12月号)の放送予定欄ではOPがテーマになり、山本優が二つのOPについて解説している。
なかむらたかしの描いた最初のOPは「ゴーディアンの重量感と設定の西部劇ふうタッチを生かそうとつとめたもので、限られた制約のなかでそれなりに新しい作品をはじめようとする意気込みがのっていたような感もありました」と評価する一方、かなり差し迫った制作だったことも明かしている。
現在のOPは「サントーレ基地も含めてゴーディアンのスピード性を心がけたつもり」と書いている。この2作目はコンテ作成者が途中で消えてしまって探し回るほど大変だったようだが、制作者の名前は明かされていない。「正直いうと、いわゆるオーソドックスなかたちに仕上がってしまい、ラストのダイゴの顔も心なしかやつれ、現場のハードスケジュールぶりを代弁しているようです」と自虐気味に記している。
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