1-20.20話「星空の対決」

 これまでのダイゴとトロスの物語、そしてサントーレにサオリがいる理由、父がコンピュータになったいきさつ、全てが明かされると『ジ・アニメ』Vol.3(1980年2月号)で山本優が予告していた回である。『アニメージュ』vol.21(80年3月号)の放送予定欄では、「満天の星のもとに向かい合う二人……西部劇そこのけのカッコいい場面が期待できます」と綴っている。

 それではシナリオを参考に見ていこう。


20話「星空の対決」 1980年2月17日


 脚本     :山本優

 演出     :古川順康

『アニメージュ』vol.22(80年4月号)では「林 好蘭」表記

 作画監督   :宇田川一彦


あらすじ


 前回の戦闘で現れた謎の光を調べたエリアスは、分析不可能な放射線と生命反応があったと報告する。「プロジェクトX」と関係があるとにらんだ毒魔大帝統は、毒魔黙示録第三章に書かれた「闘獣士マドクス」を生産するよう命ずる。

 一方ダイゴは、サオリ達を謎の光に襲われた場所へ案内しようとヴィクトールタウンの地下に潜った。しかし現場では先客がいた。トロス・クルスが手下のロームとともに、チビヒゲ科学者に調査を依頼していたのだ。ダイゴの気配を察したトロス達は物陰に隠れる。ダイゴが見た謎の光らしき物はなく、思わずサオリに「なぜゴーディアンでオレが戦わなきゃならないんだッ」と抗議する。物陰にいるトロス・クルスは、ダイゴがゴーディアンの主であること、大滝京太郎がコンピューターとして生きていることを知ってしまう。トロスはロームにダイゴ達の後を付けるよう命ずる。

 チビヒゲ博士の解析結果を聞いたトロスは、さらに興奮する。謎の光は人工的に設置された物で、宇宙生化学者の大滝京太郎博士が作ったと思われるというのだ。実はチビヒゲ博士は生前の京太郎を知っていた。京太郎はプロジェクトXを進めようとするうちにマドクターの存在に気づき警戒していたが、国際宇宙学会での演説中にマドクターに襲われたところをチビヒゲ博士に助けられたのだ。トロスは京太郎がガンファイターだという情報をある男から聞かされて勝負したが、その情報そのものが間違いだったのだと悟る。

 ダイゴの後を付けたロームは、サントーレの近くでダイゴに見つかり、肩を撃ち抜かれて湖に落ちるが、何とかトロスにサントーレの位置を伝える。トロスはサントーレに進入すると、抵抗するサオリ達を軽くいなして対話室に入る。

 京太郎は話しかけるトロスの声に反応する。撃たれた後、京太郎は駆けつけた幼いサオリの助けを借りてサントーレにたどり着き、記憶を同期していたのだ(つまり、17話でダイゴに語ったことは嘘?)。トロスは京太郎に「ダイゴを男にしてやる位のことは出来そうだ」と、自分なりの償いをする決意を語った。

 サントーレ裏の湖にいたダイゴは、チョコマの知らせでトロスがサントーレに進入したことを知る。そこにサントーレから脱出したトロスが姿を現す。滝に張り出した岩場で、二人の対決が始まった。


解 説


 前回も書いたが、本来は19話としてシナリオが書かれている。実際のタイトルには出てないが、次の「秘闘・マウンティホーン」との前後編である。山本優が重要回を続けて書く時によく使うパターンだ。

 今回名称が初登場する「闘獣士マドクス」、シナリオには「獣面巨体の戦闘ロボット」という形容詞で出てくる。実際には「マドクス」というのは「マドピューター」のようなカテゴリー名で、本編での名前は「闘獣士○○」と各メカの固有名をつけて呼ばれている。「太陽のすかし」もシナリオにきちんと書かれており、毒魔大帝統も満足だったろう。

 チビヒゲ博士こと花巻博士の声は今回テロップにはないが緒方賢一。後に再登場するが、シナリオのキャラクターリストや台詞でも「チビヒゲ」と書かれているため、今後のEDテロップでもずっと「チビヒゲ博士」である。不憫だ。シナリオではチビヒゲ博士が調査のために大型の計数機を使うシーンがあるが、本編ではポケコン。

 今回の京太郎の声は恐らく増岡宏、ロームの声は黒部鉄(屋良有作)かもしれない。

 回想シーン、シナリオでは男がトロスに「宇宙船が金星に飛ぶ今でも」と言う台詞があるので、この世界の科学技術は現実世界よりも進んでいたと思われる。ダイゴが両親は宇宙船の事故で亡くなったと伝えられていたこととも辻褄が合う。また、トロスがスペードのエースでハエを刺すシーンはシナリオにはないので絵コンテ以降の追加と思われる。

 シナリオでは京太郎との対決シーンの後に医者を呼びに行くトロスのシーンが追加されている。これがあればかなり違う印象になったと思われる。サオリへの京太郎の台詞も、人が来ないうちに連れて行くよう急かす台詞がカットされている。

 ラスト、ダイゴに「お前が」と言われて「そんなかみつきそうな顔で睨みなさんな」というトロスの台詞はシナリオでは「そういう事だ」と京太郎を殺したことを肯定する台詞だった。その後ダイゴに撃たれたときの「だから言ったろ、興奮すると手先が狂う」というのも本編のみの台詞。17話での特訓を思い出させるが、絵コンテ以降の追加かアドリブかは不明。

 ラスト、滝の手前で対峙する二人のシーンは、レターボックスの構図でシネスコ風に見せたり、銃を取ろうとする二人の手の動きを互いに見せたりと、マカロニウエスタン映画の雰囲気を出そうとしていることが伝わってくる。この細かい演出はシナリオにはないので絵コンテ以降の追加と思われる。

 今回のゴーディアンの出番は、サオリの回想シーンのみ。次回をお楽しみに。と言いたいところだが、次回予告は19話のシーンの使い回し。


こぼれ話


 コンピュータ父との「対話室」、今回のシナリオでは「ファザコン・ルーム」というルビが。「ファザーコンピュータ」とのひっかけだろう。ダイゴ本人はファザコンと言うよりはシスコン気味だが。

 今回登場したチビヒゲ博士をはじめ、これからの回で登場するゲストキャラは、後の物語にも再登場してレギュラーに収まる人々が多い。念頭に置いて見ていくと更に楽しめるだろう。


 前回に続き、『アニメージュ』vol.23(80年5月号)の記事から、キャラクターの「運」について。 

 山本優のインタビューによれば、クロリアスは元々最終話近くまで残る人物だったのが、作品進行上のハプニングからバラスにかわられたとのこと。もし生き残っていたら、企画書にあった花の溢れる自室も見られたのだろうか。

 「オリジナル・シリーズの場合、このへんがおもしろいところで、運が強かったり弱かったりするキャラクターがあるわけです。脚本をつみあげていくたびに、そのあたりの"人物の運"にさからわないようにしています」と山本優は語っている。

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