第4話 軍政都市サウスファイア

 ――軍政都市『サウスファイア』


 その帝都南部、ユーフィリア自治区のすぐ北側に配置された都市は、地形的に最強の傭兵団……否。もはや国家と言って良いレベルだろう。『ユーフィリアの翼』を抑えるための軍略的拠点であった。


 軍大学を出た男は、そこへ任官され、あれよあれよという間に准将まで出世した。誰が言い出したのだろうか。今となってはわからない。ある者はその男が蒼い炎の揺らめきを纏う場面を見て、『蒼炎』の二つ名で呼ぶ。


 ある者は、男がそこそこの名家の出だったこと。『サウスファイア』が政治腐敗していることを理由にあげ足をとり、「どうせ金でも積んだんだろ」と言う者もいた。


 そのような者は全て力と頭脳でねじ伏せてきた。男にとって、雑魚は眼中になかった。


 しかし、政治的に腐敗した社会構造はどうしようもなかった。男は何度、クソのようなサウスファイア市長に献金を要求されたかわからなかった。しかし、軍人といえども所詮サラリーマン。巨大な歯車の一部でしかなかった。


 男の上司も市長とズブズブの仲で、この世は腐っていると思わせるに十分な経験をした。

 帝都中枢にいる宰相閣下も、王の目を盗み、さらなる悪事を働いているとの情報に、諜報部へのアプローチなど様々な手段を駆使した結果、その男は辿りついていた。


 「腐ったこの国でできることは、もうないな……。俺のしてきたことは、なんだったんだろうな……」


 黄金の月を見上げ、腐っていく母国を思いながら。生きる目的を見失った男はそうつぶやいていた。


 そして、蒼炎の二つ名をもつその男は、翌日、上司に軍の退役を申し出たのだった。

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