ユーフィリアの翼

餡乃雲

第1話 プロローグ

 ――白い吐息が空中に舞い踊る。


 俺は肩で息をしていた。鉄分の香りが肺を満たす。

 我ながら、らしくないことをしていると思う。


 時刻は夜。俺は丘に剣を杖代わりにつきながら、冬の満点の星空を見上げる。背中越しにデュランの荒い息遣いが聞こえる。足元は死体の山だ。


 ――アルバ戦役。


 冬に戦は行われない。おそらく、この戦いが今年最後の戦となるだろう。


 俺たちユーフィリアの翼は傭兵団だ。そして、俺とデュランは副頭領を任されている。

 最強と言われているユーフィリアの翼をもってしても、厳しい戦いだった。


 「よう、フェイエ。お前見た目によらず、中々やるじゃねーか」

 そう、背中越しに声をかけてくるデュラン。


 「ふん。貴様こそ、筋肉馬鹿かと思っていたが、少しは用兵もできるようだな」

 俺は、返り血で濡れた右手中指で眼鏡をくいっと上げ、自分なりの言葉でデュランを労う。


 二人とも満身創痍だ。立っているのもやっとだ。


 ――さて、俺たちのアジトに帰ろう。温かいスープが待っている。


 空から、大きな蒼い月を背景に、豆粒だった飛空挺『エルドラド』がぐんぐんと速度を上げこちらに近づいてくる。


 俺とデュランは、肩を貸し合い、空にはためく俺たち『ユーフィリアの翼』のエンブレムを、不敵な笑みを浮かべ見上げたのだった。

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