第8話 誰?

司君たちと駅で別れ、京王線の改札に入る。

実家は箱根で旅館をやってるが、兄貴が居るので家を継ぐ必要はない。

ということで、自立を意識して働き始めてから一人暮らしを始めた。

家事全般は結構得意な方なので正直生活面は困っていないが"1人"ということが意外ときついときがある。前の部署にいたときとか、疲れて土日祝とか家にこもってると一言もしゃべらないこととかあったからね。


今の部署に移ってからは社内で話しする人も増えたし後輩も出来た。

仕事以外の友人も増えたし本当、引き抜いてくれた三河には感謝だなぁ~

などと物思いにふけりながら電車待ちの列に並ぶと横の列の女性が話しかけてきた。


「相原さん?」

「ん? あれ、木村さん」


部署で面倒見てる木村さん。

何でここに?というか普通にこの沿線に住んでるんだねきっとw


「結構、遅いね残業だったの?」

「いえ、知り合いと食事してて今帰りなんです。相原さんも今日はお客様先から

  直帰でしたよね」

「そだよ。俺も友人の飲み会でね。今帰りなんだ」

「あ、もしかして彼女さんとかですかw」

「いやいや、男ばかりの飲み会だよw」


木村さんも少しお酒飲んでるのかな。頬がほんのり赤くしゃべりも饒舌だ。

会社だと仕事以外ほとんど話をしないけど、何だかご機嫌な感じ。

木村さんこそデートとかだったんじゃ無いのかな。


しばらく待つと電車が到着。車内へ移動し少し雑談。

木村さんは実家住まいで明大前から井の頭線に乗り換えだそうだ。


「良いところ住んでるねぇ もしかして結構お嬢様?」

「いえいえ 普通のサラリーマン家庭ですよ」


などと他愛もない会話をしているとあっという間に明大前に到着。


「じゃ 明日は今日の打合せ結果受けて話しするから遅刻しないようにね」

「はい それでは失礼します」


仕事への取り組みも真面目だし今くらい笑顔で会話できれば満点なんだけどなぁ

本人曰く人見知りらしいし、徐々に打ち解けられればよいのかな。

あ、もしかしたら早瀬さんも同じような感じ?


*******************

Side 早瀬さん


『4度目だ。。。』

でも、、何だか女の人と楽し気に話してる。。。

もしかしてデートの帰り?というかまだデート中?

いやいや、確か香織姉さんの店に行くって言ってたし。。。

でも、相手の女の人多分私より若いし、それに可愛い。。。


みんなに相原さんも私に好意持ってくれてるとか言われて浮かれてたけど、私みたいなアラサーの地味な女より、男性ならああいう可愛い子のほうが良いよね。。。

うぅ~駄目だ。どんどん悪い方向に考えちゃう。。。


電車が到着し相原さんたちと少し離れた場所に乗り込む。

ついつい目で二人を見てしまう。


あ、女の人が降りるみたい。

とりあえず、相原さんの家に一緒に行くんじゃなかったんだ。。。

何を安心してるんだろう私は。。。


相原さんも調布で下車し、何だか少し暗い気分で私も最寄り駅で降りた。。。


********************

Side 広木


駅に到着し、コンビニでお茶を買った後自宅マンションへ。

築20年の3LDK。駅から徒歩5分圏内で家賃は10万。

結構生活に余裕なしな家賃だけど、寝室とリビングを分けるのとバストイレ別はこだわりたかったのです。部屋に入りシャワーを浴びてソファーに寝ころびながらスマホでいつものSNSを開く。

オフ会1週間前ということで、香織さんが参加募集の告知を出している。


「司君1番乗りしてる。お、達也さんも参加表明してるな

  葛城さんとべーやんさんは話してないけどこの間も来てたな

  それからリリカさんとみつ子さんも来てたな。確か香織さんとずっと

  話してた人だ。

  あとは香澄さんとかなめさん。この二人は初対面だな。

  結構参加者多そうだな」


締め切り前に参加表明しないと。と参加ボタンを「ポチ」っと押す。

早瀬さんはまだ参加表明してないなぁ~


********************

Side かなめさん



何だか涙声の美樹から電話が来た。


「かなめ~。。。。」

「どうしたの、さっきまで浮かれてたのに」

「相原さんが若い女の人と楽しそうに話ししてた。。。」

「はぁ?あの後相原さんに会ったの?」

「駅で偶然見かけたの。で、声かけようか思ったら横に女の人がいて。。。」


『新宿駅とか日本でもトップクラスに人が居る中でよく出会うよね。。。』


「まぁ年齢的に彼女さんが居てもおかしくはないけど、今までの話し聞いてる

  限りは彼女とかいなさそうに思えたけど」

「でも、直接聞いたわけじゃないし。。。

  やっぱり香澄ちゃんが言ってたみたいにお酒の勢いで迫って既成事実作る

  とかしかないのかな」


『おぃおぃ。。。この子は普段冷静なのに時々ポンコツになるんだよな。。。』


「そこまで思いつめなくても、知り合いと偶然会って話してただけかもしれないじゃん」

「でも。。。」

「相手の女性ってどんな感じだったの?」

「見た感じ20代前半で童顔 少し茶髪で身長や体系は私と同じ位かな。

  でも胸は大差で負けた感じ。。。」

「そう。相原さんの会社だけど知り合いが総務部にいるから明日聞いてあげるよ

  といっても最近連絡とってないからどうだかわからないけど。。」

「本当!流石かなめ!大好き!」

「とりあえず、今日はもう寝よ。私も疲れたよ。。」

「ごめん。明日またよろしく!おやすみなさい」


『やれやれ。。。』

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