憧れてます



退屈だったーーーー





退屈の理由。色々あるけど……。一番の理由は、努力をしなくても何でも出来たからだと思う。欲しい物も簡単に魔法で手に入った。だから向上心、達成感などなく……。



ずっとずっーーーーと手を抜いて生きてきた。周りのレベルに合わせる苦痛。




私は、天才?




いや、違う。天才は、努力もするから。だから私は、天才ではない。




周りからは、いつも特別な目で見られた。




いつからだっけ?




私を見る、周囲の同じ目が異常に嫌いになったのは。無性にイライラした。だから私は、世間から逃げる為に誰も知らない無人島で静かに暮らすことを選んだ。



島での生活は気楽だったし、何も不自由はなかったけど。




それでもやっぱり……。





どうしようもなく退屈で。





そんな時、浜辺に座って夕焼けを見ていた私の耳に聞こえた『ある噂』。波の音に混じって聞こえた。つい最近、裏世界の魔法学院に怪物が転校してきたらしい。



ソイツは、転校初日で事件を起こした。権力の象徴みたいな存在だった理事長の息子。生徒会長でもあったその男に勝負を挑み、そして……フフ。



その生徒会長を醜いカエルの姿に変えた。それだけじゃなく、赤いリボンを付けて、理事長にプレゼントしたらしい。



狂ってる。



しかも、その魔法は誰も見たことのない彼女オリジナルの黒魔法だったらしく、本人以外誰もその魔法を解くことが出来なかった。



既存の魔法を使うのとは、全く難易度が違う。



その悪魔的な魔法力と頭脳。損得関係なく動くそのバカな性格で、すぐに彼女は学院の人気者になった。彼女を異常なまでに崇拝する『五陰(ごいん)』と呼ばれる五人の生徒会役員まで現れたらしい。




「どうして笑っているの? 両腕が燃えているのに」



人形から人間の姿に戻ったナタリが、私を見下す。簡単に私の自慢の魔法が破られた。




「嬉しいからに決まってるじゃん! やっと憧れのアナタとこうして勝負が出来るんだから」



燃え広がる全身。私は体を超再生させ、何年もかけて造り出した最強最悪の毒霧を両手から散布した。その毒霧が、ナタリを襲う。



それを紙一重でかわしながら、ナタリは『薄い漫画』を読みながら笑っている。



やっぱり、コイツは怪物。




「っ!?」



痛みで初めて分かる光速の攻撃。私の両目にナイフが刺さっていた。無理やりナイフを引き抜き、ナタリの気配に投げ返す。私は走り、アンナとサトルだった二体の人形を鷲掴みにした。




「はぁ……はぁ…」



「疲れた? ん~、まさか。ソレを人質にして私の自由を奪うなんてつまらないこと考えてないよね?」



「少しでも動いたら、コイツらを二度と再生出来ないように消す。私は、本気」



「う~ん……。はいはい、分かりましたよ。動きませんよ」



止まったナタリを毒霧が包む。すぐにナタリは蹲り、喘ぎ始めた。



「解毒剤は、私の『本体』にしかありません。だからアナタは、ここで終わり。さぁ、どうします?」




「終わり? まだ始まってもいないよ」




部屋の空気が明らかに変わった。寒い。暗い。重苦しい。目の前で死に直面している女が、私に頬笑む。




その笑みは、とても艶かしくて。



とても…………。



とても…………………。






残酷だった。



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