黒い風船。一度私の手を離れた風船は、意思を持って迷いなく【ある場所】に向かう。




もうすぐ、ティータイム。




狩の時間だ。




私は、ワクワクしていた。ずっと憧れていたあの人に会える。





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小さな町の食堂で、僕達は遅めの昼飯を食べていた。



不味くもなく、美味くもない食事。



食後。



僕は、昨夜決意したことをナツ達に話した。



「そろそろ帰ろうか? 目的だったナツの呪いは解けたし。まぁ……その……。機械の体は、僕が後で何とかするからさ」




ナツが、何か言いたそうにチラッと僕を見て。



「そうだね……」



その横顔はかなり残念そう。確かにこの旅は刺激があって、なかなか楽しかった。だけど、いつまでも旅人でいられるほど僕の懐に余裕があるわけじゃない。



僕も少し残念だけど、潮時だった。




「じゃあ、アンナちゃんは私が保護しますね。私の新しいペットとして、大事に育てまーーす」



アンナを妖しい目で見つめる魔女のナタリ。



「サトルさん………」




「嫌なら、僕達と一緒に暮らしても良いんだよ? ナツもアンナといたいと思うし」




「ありがとうございます。でも……私は、ナタリさんと一緒に行きます。サトルさんやナツさんと離れるのは寂しいですけど………。アンデッドの私といるのは、危険過ぎますから。遠くから、お二人の明るい未来を願っています」



アンナの微笑みは、母親のような優しさに溢れている。その嘘偽りのないアンナの想いが、僕の涙腺を刺激した。





会計を済ませ、無言で店を出る。





これでサヨナラ………。なんだろう、この気持ち。




何気無く空を見ると、見慣れない黒い風船がプカプカと浮かんでいた。





「中へっ!!」




誰かが、叫ぶ。僕は、ナツを抱き抱え急いで店の中に戻った。



振り返るとナタリが、口から大きな泡を吐き出し、空にぶん投げていた。その泡が風船を包みこもうと、





『遅いなぁ』





ピッッッ!!!!!!




風船が破裂し、大爆発した。




爆風で店の窓ガラスが割れ、それと同時に外から紫色した霧? のようなものが入ってきた。



「これは、毒ガスです。息をしなくても肌から毒がじわじわ侵入しますから無駄な抵抗はせず、皆さん仲良く死んで下さい」



空から黒いドレスを着た【喋る人形】がゆっくりと降りてきた。



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