光と闇の王


この国の支配の象徴。増築を繰り返し、繰り返し、繰り返し……。王の渇きを癒す為だけに造られた巨大で歪な城。そこに何年ぶりかの客人がやってきた。



漆黒の火竜の背から音もなく飛び降り、その痩せた男は、欠伸をしながら鉄門の中に入った。



…………………………。


…………………。




「光の王。ご無沙汰しています。二年ぶりでしょうか? まだお一人なんですね………。早速ですが、僕をわざわざこんな場所に招いた理由をお聞かせ下さい」




魔王の息子。現在、彼が魔族を束ねている長。




今、この広い空間には王様と彼しかいない。





いない?




「……………」




彼は、部屋に入った瞬間から気づいていた。姿は見えないが、彼を刺すように見つめる複数の目。




「よく来てくれた。お父上は、元気か?」



「はい。ただ……牙を無くした今の父には、もう以前のようなカリスマ性はありません。先月、僕が父を引退させました」



彼の父。闇の王は、この国を含めた他国との戦争に疲弊していた。血で血を洗う時代は終わりだと感じていた。



「引退……。そう…か……。分かった。呼んだ理由だったな。それは、父以上の闇の力を持つ君に一つ頼みがある。私の大事な娘を賊から取り戻してほしいのだ」



「娘? はぁ………。全く、僕には関係ない話ですね。そんなに暇じゃないんですよ。どうやら……。ここへ来たのは、時間の無駄だったみたいですね。あなたは、命より貴重な僕の時間を奪った罪人だ。せめて、あなたの首を持って帰るとしましょう」



ゆっ……くりと。王に近づく『新』魔王。その時、壁に飾られた絵画から五人の魔導士が飛び出した。



「つまらない。この程度の輩じゃあ、僕を止めることは出来ませんよ? 本当に、あなたにはがっかりです。もっと前に消すべきだった」



そう呟くと、中指だけで魔導士の体を引き裂いた。




数秒後、人肉で真っ赤に染まった部屋。王様は、それでも動かない。



「賊の一人は、ナタリだ。元うちのメイド長だった女。君は、知っているだろ? なんせ君の兄を殺した魔女なんだから」




「ナタリ? ナタリ・フロア………。なるほど。なるほど。それは、面白いっ!! ずっと前から、兄は僕が殺す予定だったんだ。それなのに、あの魔女が……………。分かりました。お嬢さんを賊から取り戻しましょう」




「ジムード。お前は、私に何を望む?」




「何も。ただ、あなたはこの安全な箱の中で待っていれば良い。ナタリを含め、僕の前に立つ害虫は、僕自身の手で排除します」




彼は鼻唄を歌いながら、火竜の背に乗り、闇の底に帰っていった。


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