甘い夜

「………ごめんなさぃ」



魔女のナタリが、ナツに頭を下げている。ナツは腕を組み、プンスカ怒っていた。



「最初は、私を救う為の転生だったはずなのに……。さっきのは、何? 私が登場しない異世界で、サトルとくだらないゲームをして、イチャイチャしてさぁ。転生は、遊びじゃないでしょ? 」



「いやいや、お嬢様。お言葉ですが、それは勘違いです。お嬢様もちゃんと登場していましたよ。脇役Fとして。最初の方。ほらっ! あの『運試しゲーム』で速攻で頭を撃たれた女。あれが、そうです」



怒りに震えているナツが、ナタリに掴みかかろうとした。……が、簡単にヒラリとかわされ、逆に体勢を崩したナツが、大きな岩に激突した。




ガボッッ!!!




頭ではなく、『岩』の方が砕けた。


転生先でアンドロイドとなったナツは、この世界に転移した後でもその機械の体を引き継いでいた。大成功。これで完全に呪いからは解放された。あとは、この機械の体をどうやって生身に戻すかだけど……。




「うっ………っ…」



ナツが、地面にうつ伏せで泣いている。もちろん、機械なので涙は出ない。



「こ……こんな……カラダ嫌だよぉ。か弱い乙女の体でいた…かっ…た」



僕はナツの横で、その柔らかい髪を優しく撫でた。中身がどんなに変わっても本質は変わらない。ナツは、ナツだ。




「必ず後で元の体に戻すから。だから、それまで我慢して。ね?」



「分…かっ…た。…………チュッしたいな」





落ち着いたナツと手を繋ぎ、ナタリの元へ。



「私の前でイチャイチャしないで下さい!! 腹立つなぁ、ほんと」



なぜか、ご立腹のナタリが小さなアンナを後ろから抱きしめた。



「!? あ、あ、あの? ナタリさん」



動揺するアンナ。



「あったかいなぁ。可愛いなぁ。アンナちゃんは」



アンナに触れたことで、ゾンビの呪いにかかった。だが、ナタリは少しも動じない。




ナタリはーーーー



【 僕達の目の前で蛇のように脱皮をした 】




「!!」





数秒前までナタリだったモノは、異臭を放ちながら腐り続け、溶けた皮膚は土に還っていく。



魔法の。闇の力。




「ぷはぁぁ!! 新鮮な体は、いいなぁ」



「キモッ」



ナツだけが、眉間にシワを寄せていた。





ナツの呪い解放記念日として。今夜は少し贅沢。繁華街に行き、高めの宿に泊まった。




お風呂上がり。



久しぶりのシャンパンを飲みながら、ベランダから星空を見ていると、僕の隣にアンナがやってきた。




「わたし……。今が、一番幸せですっ!」



こっちが、恥ずかしくなった。



「そっか。うん……。ところで、やけに静かだね。さっきまで騒いでたナツは?」




「ナタリさんと屋台荒らしに行きましたよ」



「ふ~ん」





僕も幸せだよ。




心地よい、甘い夜だった。

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