転生【ナタリの悪ふざけ④】

僕たちは、いつも誰かに頭を押さえつけられ、やりたいことも出来ず、我慢することが当たり前のようになっている。死ぬことすら、顔も見たことのない誰かに決められる。




ほんと、この世界には怒りと絶望しかない。




出来ることなら、このくだらないゲームを放棄してボロくても愛する我が家に帰りたい。




「ルールは、とっても簡単。このガラス瓶から、交互に一個ずつチョコを取り出して食べるだけ。ねっ、本当に簡単でしょ?」



「………………」



「ただ、毒入りのチョコも何個か混ぜたの。だからね」



「最後まで生き残れた奴が、勝ち。そして、どちらかは必ず死ぬと……」



「うんっ! その通り。君は、使者との運試しに勝ったわけだし、良い勝負になると思うな。私を楽しませてね」




こうして、死のゲームが始まった。




毒入りのチョコ………。たぶん、混入しているのは数個。


もちろん、見た目じゃ分からない。



「あっ、1つ言い忘れてた! あんまり選ぶのに時間使わない方がいいよ。お仲間の命が危なくなるから」



女が手を叩くと前方の白壁が透き通り、ある映像が流れた。そこに映っていたのは、巨大な蛇。その蛇が、僕達が寝泊まりしているフロアを行き来している。



「あれはね、ボアちゃん。私のペット。今、とっーーてもお腹ペコペコなの。だから、動くモノは何でも食べちゃうからね」



「僕達は、あの蛇の餌だったんですか?」



「うん。痩せてガリガリの餌なんて、食べても仕方ないでしょ。だから、アナタ達を肥えさせたの。餌の確保も飼い主の役目だから」



チョコをガリッ。



「……………そうですか」



ガリッ。



「あっ! 一人食べられちゃったよ。アハハハ」



ガリッ。



「………………」



ガリッ。



「また一人、消えた」



ガリッ。



「………………」



ガリッ。



「あれれ、あの子。アナタの大事なお友達じゃない? アンナちゃんだっけ? あんなに必死に逃げちゃって。無駄なのになぁ………。ほんっと哀れ」



ガリッ。



「……………」




ガッッシャン!!!!



僕は、思い切り瓶を床に叩きつけた。片っ端からチョコを口に入れる。割れたガラス片で口が切れ、それでも血を流しながらチョコを飲み込んだ。



その様子を見ていた兵士が、腰にさげたサーベルを抜き、僕の頭上からその刃を振り下ろそうとする。




「めっっ!!!」




部屋が揺れるほどの声。兵士だけでなく、画面の中。今まさに友達を襲おうとしていた蛇の動きも止まった。



僕は血だらけの、リスのように膨れた口を女にアピールした。足下には、まだ13個のチョコが残されている。



「ふ~ん。毒入りのチョコ以外、全部食べたみたいね。………………あなた、何者?」



「僕は、ただ未来の『運』を前借りしただけ」



「ふ~ん。運の前借りかぁ。特別ね、アナタ」



女は、綺麗なハンカチで血とチョコでべとべとになった僕の口を優しく、丁寧に拭いた。



間近で見た時、そのゾクゾクするようなこの女の色気に目眩がした。


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