転生【ナタリの悪ふざけ③】

タワー内部での生活。



1人一部屋。三度の美味い食事。綺麗な服にお風呂。その他いろいろ充実した設備。


昨日までとは180度違う生活。


ここは、僕たち下層エリアの人間からしたらリアル天国だった。




「あっ、お兄ちゃん。聞いて、聞いて。ここって、プールもあるんだよ。ねぇ、一緒に泳ごうよ」



「う~ん。………今度…ね」



「え~、つまんないよぉ。一緒に泳ごうよ」



初めて見るアンナの笑顔。同じごみ溜めにいた住人たちも皆幸せそうで……。




でも僕は、この状況に素直に喜べなかった。タワーのまだ見ぬ主は、良い人間とは限らない。



こんなことをして、何のメリットがあるんだろう。裏があると考えるのが、普通。



今まで虐げられてきた僕たちは、分かっているはずなのに。




どうして、誰も疑問に思わない?




「お兄ちゃん……遊ぼ」




友達の顔。一見、楽しそうに見えたその顔が今は何だかぎこちない。不安が見え隠れしている。




「うん。遊ぼうか」




きっと、みんな気付いている。誰も口にしないだけ。声にすれば、この幸せな夢が覚めてしまいそうで恐いから。




急にゲートを開けて、僕達のような輩を招き入れた理由……。ただの気まぐれならいいんだけど。




でももし、これが罠だったら………。




次の朝。


僕は、ある人物に呼ばれた。屈強な兵士が常に僕を見張っているので逃げることはまず無理。




百人は入れそうな広すぎる部屋で、背の高い女性が僕を待っていた。




「どうですか? ここでの生活は」



「快適過ぎて、退屈しています」



「ハハハ、そうですか」



無表情になった女性が手を叩くと、メイドが黒いビニール袋を2つ持ってきて、白いテーブルにその袋を乗せた。




袋を開けると、中から



「っ………」



今まで何度か嗅いだことのあるアノ臭いがした。



「うふふ」



頭が、2つ転がって出てきた。しかも僕は、その顔に見覚えがあった。



「そう。これは、あの奴隷二人の頭です。まぁ……裏切り者は、死ぬことが決まっていますから、こうなるのは必然です」



僕は、吐き気を無理に押さえつけながら、悪魔の女に質問した。



「僕たちをどうするつもりですか?」



「先ほど、アナタ。退屈だって言ってましたよね? 実は、私もなんです。毎日毎日退屈で退屈で。だから、面白いゲームを考えたんです」



「ゲーム?」



「はい。簡単なゲームですよ」



違うメイドが、大きな透明ガラス瓶を持ってきた。瓶の中には、小さな丸いチョコが、何百と入っている。



「もし、『運』でアナタが私を越えたら、一生このタワーでの生活を保障します。お友達も含めてね」



「……負けたら?」



「分かっているはず。あっ、そうそう。紹介がまだでしたね。私は、『ナタリ』。このタワー、第一区の責任者です」



負けたら。



【 アナタだけでなく、全員を今日中に処刑します 】


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