転生【ナタリの悪ふざけ②】

僕は昔から『運』を自分の体に蓄えることが出来た。脂肪のように。さらに、これはまだ誰にも言っていないけど、もう1つだけ隠していることがある。




それは、また今度話そう。





「ごめん。恐かったよね」



「…………お兄ちゃんが、やっつけたの?」



「いや、僕じゃないよ。人の命を弄ぶアイツに天罰が下っただけ」



「嘘……。お兄ちゃん、さっき何か言ってた。それに急に雷が落ちるなんて変だよ」



僕は、まだ不満ありげなアンナから離れ、立ち尽くしている奴隷二人に近づいた。二人は、主の変わり果てた姿にかなり動揺していた。



「アナタ達は、自由ですよ。もう奴隷じゃない」



二人は、長年忘れていた自分の足で歩くことを思い出し、僕に一度だけ頭を下げると足早にこの場を去った。




「はぁ………疲れた」




やっとーーーーー



悪夢の『運試し』が、終わった。




夜。


カビた布団に横になると、すぐに疲労が睡魔を連れてきて、そのまま意識を失った。



『運』をかなり消費したからな。ざっと、十年分の運を………



使っ……た…………。





朝。と言うか、もう昼。


空腹で目が覚めた。起き上がり、いつものように近所の不味いパン屋で売れ残りを貰おうと外に出た。



「……………」



静か。



誰もいない。二羽のカラスだけが、上空を旋回していた。



嫌な予感がした僕は、アンナの家に走った。



「いない………」



焦りと不安。



その時、気づいた。いつもは立入禁止になっているタワー入口のゲートが開いていることに。銃を持った警備兵も見当たらない。



入口からチラッと見えたタワー内部は、初めて見る白さで、激しく輝き、ゴミの中で暮らしている僕からしたら、まさに天国のようだった。



無意識に体が、中へ吸い込まれていく。





でもーーー




何となく、分かっていた。この中は、天国なんかじゃない。むしろ、その逆。



分かっていたのに、気づいたらタワーの中で思い切り新鮮な空気をスーハースーハー。



僕が、呑気にしている間に入口は固く閉ざされ、もう出ることが出来なくなっていた。



ねっ……とりと絡み付くような誰かの視線を感じる。



悪魔が、僕を品定めしているに違いない。


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