転生【ナタリの悪ふざけ①】

【 この世界では、運のない者は悪と見なされ、生き残れない 。 運のある者だけが、正義。価値ある存在 】






狂ってる。それでも僕たちは、そんな世界でまだ『生』にしがみついている。






僕たち負け組は、ドブネズミと仲良く暮らすしかない。ちなみに昨夜、また耳をネズミに噛られた。






そんな僕たちにも一年に一度だけ、起死回生のチャンスが用意されている。








【運試しジャンケン】








雲より高いタワーから、使者がやってきて、僕たちの運を試す。勝てば、人生逆転。その瞬間から、幸福な未来が待っている。でも負けの代償も大きく、今度は下層地区に落とされるだけじゃ済まされない。負ければ………確実な『死』。その場で殺される。




それでも今、使者の前には長蛇の列が出来ていた。




「次……」




パン!!




「次…………」




パン!!




「次、次、次」




パン!! パン!! パン!!




頭を撃ち抜かれた元人間が、そこら中に転がっている。その亡骸を面倒臭そうにゴミ収集車に乗せる奴隷二人。その様子を煙草を吸い、笑いながら見ている使者。




恐くなったのだろう。今まで手を繋いでいたアンナが、小さく震えていた。






「大丈夫?」




「こわい……。ねぇ、お兄ちゃん。私達って人間じゃないの?」




「人間だよ。人間じゃないのは、アイツ等の方」




僕は、静かに列の最後尾に並んだ。




「ダメッ!! 殺されちゃうよ。お願い………。やめて」




「大丈夫」




「私を1人にしないで」






僕の体から、泣きつく友達を強引に引き離す奴隷。




「一度列に並んだら、逃げちゃダメねぇ」




「僕は、逃げませんよ」








僕の順番が来た。




「お前が最後か。結局、今年も勝てる人間はナシ。分かっていたことだが、やっぱりお前らは、クズだ! 生きる価値のないゴミ。ゴミが、人間になろうとするんじゃねぇよ」




使者が吐いた唾が、僕の破けたズボンにかかった。




僕は、その唾を指ですくうとペロッと舐めた。




「なんだ……お前は。ヘラヘラ笑いやがって。ぶち殺すぞ、貴様」




「久しぶりに…………『運』を解放しようかな」






曇天。




冷たい雨が降ってきた。




この場には、使者と僕。奴隷二人に友達のアンナ。あとは、野次馬13人。






雷鳴。




「1億分の1……。あなたに雷が落ちる確率です。運があるなら、回避してみて下さい」




「何を、言っ」






ッッーーーーーーーー










「はい、パー。………僕の勝ちです。グーしか出せないアナタの負け」





この世界は、焦げ臭い。吐き気がするよ。


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