転生【アンドロイド④】

久しぶりに腹が膨れ、僕はフォークを持ったまま寝てしまった。夢の中を深く……深く……潜っていく。そばに友達がいるだけで、こんなにも安心できる。




カラフルな夢だった。




起きて、階段を降りていく……。






知らない白い家。





それなのに、すごく懐かしい気分になった。




良い匂いがして、僕はふらふらとテーブルに近づく。テーブルの上には、本や映画でしか見たことのない食べ物がずらりと並んでいた。




現実世界では、絶対に食べられないもの。




「早く座って、食べちゃいなさい。冷めちゃうから」




「っ!? だ、だ、ダレ?」




「えっ……。まさか、ママの顔を忘れたわけじゃないでしょ。変な子ね」




女の人が、キッチンの奥から料理を持ってきた。香ばしい焼けたチーズの匂い。




我慢が出来なくなった僕は、椅子に座ると用意された食べ物を夢中で口に放り込んだ。






食べても食べても………。止まらない。






「どっ、どうしたの!? そんなにガツガツ犬みたいに食べて。もっと良く噛んで、ゆっくり食べなさい」




「はい……」




「う~ん。今日のサトルは、素直で良い子ね。なんか他所の子みたい」




優しく笑う女の人にじろじろ見られ、僕は恥ずかしさを誤魔化しながら美味しいご飯を食べ続けた。




「ほんと、変な子ね~。あっ、ほら。ご飯粒ついてる」




……………………。




………………。




夢の色が、だんだんと薄くなってきて……。僕は、布団の上で目を覚ました。




現実に戻ってきた。




「なんじ?」




「もうすぐ10時だよ。……2時間ぐらい寝てたね」




「君が、ここまで運んでくれたの?」




「うん」




ロボットの相棒は、僕の隣で汚れた漫画本を読んでいた。





ッ………。




涙がこぼれた。




まだ残る夢の欠片が、僕の体を優しく刺激する。こんなにも切ない気分になったのは、初めてだった。




あの女の人が、僕の母さん?



写真すら持ってないから、確かめようがないけど。




たぶん、違う。そうだよ。あの女の人は、母さんじゃない。






違うと分かっているのにーーー




それでも、もうあの人に会えないと思うと涙が止まらなかった。




「夢で見たんだ。僕の母さんだって言う人…に…」




僕は、涙で歪む天井を見つめた。頬を流れる。




「どんな人なの?」




「とっても優しそうな人だった。無理だろうけど、また会いたい」




『サトル君が、それを望むなら会わせてあげられるよ』




相棒の豆粒のような黒い目。何を考えているのか分からない。




「不思議なことを言うね。君は、いったい何者なの?」




「ただのロボットだよ」




ふ~ん…………。って、納得できるわけないでしょ!!




でもいいや。今は、これ以上聞かない。




「サトル君。私は、旅が好きなんだ」




「旅?」




「今まで。そしてこれからも。いろんな世界を旅する」




ロボットなのに。



人間の僕なんかより、よっぽど自由に生きている。そんな君が、羨ましい。



僕もいつか、君と一緒に世界を旅したい。




「サトル君が考えている世界とは、少し違うんだけどね。平行世界、パラレルワールドなんだ。私が旅をするのは」




「パラレル?…………ごめん。学校行ってないから、良く分からない」




「分からなくてもいいんだよ。宇宙には、少しだけ違う地球がいくつもあってね、そこには少しだけ違うサトル君がいるってこと」






さっき夢で見た女の人はあの世界の僕の母さんでーー。




想像すると、まだ胸がチクチク痛んだ。

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