転生【アンドロイド③】

現実のような夢……。




「起きなさい。起きなさい」




起きるのが、ツラい。なかなか眠れないから、いつも寝不足だし。




「起きなさい。起きなさい」




「………なんじ?」




「8時」




「はっ! えぇっ!? 僕は、6時に起こしてって言ったのに。なんで、8時なんだよ!」




「起きなさい。起きなさい」




「………………はぁ」




「起きなさい。起きなさい」



「………」




昨日、修理したばかりの目覚まし時計。まだどこか壊れているみたいだ。簡単な受け答えしか出来ないのも悲しい。




僕は、顔だけ洗うと青いリュックを背負って外に出た。起きてから、家を出るまで5分弱。





【2085年12月10日】





今日は、僕の誕生日。まぁ、親のいない僕にとって、普通の日と何も変わらないけど。




外は、今日も雨だった。



もう1ヶ月近く雨が降り続いている。地震も多発しているし。




地球の悲鳴……世界の終焉。近い気がする。




学校に行く余裕のない僕は、リサイクルショップでアルバイトをしていた。生きる為には、働かないといけない。




お店に入り、制服に着替えようとした僕に店長が、




「お前、クビ」




クビを宣告された。




サイアク。




ほんと、最悪な誕生日だ。




僕は、カッパを着ることすら面倒になり、雨で白く霞んだ町を濡れながら歩いた。






その時。




君を見つけたーーーー






ゴミ捨て場にロボット。通り過ぎようとした僕の足が無意識に止まり、気づくと僕は、君を持ち帰っていたんだよ。帰るとすぐに僕は、背中を丸め、一生懸命君を修理した。




部屋は暗く、冷たい。



僕は、ずっと一人だった。友達もいない。それが普通だから、寂しいと思ったことはないけど。





そんな僕にもっ!!




やっと友達が出来た。機械の友達。




修理完了………。さすがに飲まず食わずは疲れる。






「サトル君は、ここで一人暮らし?」




「そうだよ。親のいない僕みたいな子供でもココは受け入れてくれるしね。この場所を『奈落の底』だって言う人もいるけど。僕にとっては、天国だよ」




最下層エリアD。




治安は悪いし、お世辞にもキレイとは言えない町。



超高層ビルに住む天空の住人からしたら、ココはごみ溜めに違いない。バカにしたけりゃ、ツバを吐きたければ、吐けばいい。それを啜って、今まで僕は生きてきたんだ。




友達は、洗ったコップに温かいお湯をいれて持ってきてくれた。




「はい。どうぞ」



「あっ……ありがとう」




ただのお湯なのに、すごく美味しかった。






ガタガタ……ガタガタ………。





ガタガタガタガタ………。




また地震だ。




「地球は、もうダメだね。すでに地球を捨てて、火星に逃げてる金持ちもいるみたいだし」




「サトル君は、逃げないの?」




「ハハ……。火星に行くには、お金が山ほど必要なんだよ。あと300年かかる。それだけ働いて、お金貯めて行けるかどうか」



「ふ~ん……そんなにお金がいるんだ。吹けば、飛んでく紙なのに」




ロボットは、全てを悟った高僧のように、ここではない別の何かを見ているようだった。




今まで出会った他のどんなロボットとも違う。




でも何が、違うんだろ?




「お腹すかない? 助けてくれたお礼に何かご馳走するよ」




「いやいや、いいよ。それに買うお金もないし」




「大丈夫。私に任せて」




それだけ言うと、雨が降る中、ロボットが外に出ていく。




「あ~。…………行っちゃった。まだ、左手が壊れたままなのに。ほんと、変わった奴」




ロボットなのに。ロボットらしくない。



人間にそっくりな最新のアンドロイドとも違う。




1時間後。




「ただいま」




笑っちゃうぐらいの大量の食べ物。




「あっ、うん。 おかえり!! 体拭くから待ってて」




「うん。ありがとう」




僕が放った初めての『おかえり』




幸せな気分になれる、魔法の言葉。

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