王球   恩人の息子   

王球おうきゅう



王球、字は倩玉せんぎょく琅邪ろうや臨沂りんし県の人。

王恵おうけいのいとこにあたる。

父は王謐おういつ、司徒だ。

劉裕りゅうゆうの恩人の、あの王謐さんである。


王球は若い頃には

王恵おうけいと並び讃えられていた。そして美人。

著作佐郎に任じられたが、辞退。

のちに司馬徳文しばとくぶんの行參軍に。

いちど主簿に転じたが、

その後劉義符りゅうぎふ付きの従事官となった。


劉裕りゅうゆうが宋王、皇帝となっても

しばらくは劉義符付きだったが、

まもなく宜都ぎと王友、

つまり劉義隆りゅうぎりゅうの教育係に。

その後相談役になったが、

病が重くなったため、一時離職。

427 年に義興ぎこう太守として復帰。

のちに吏部尚書となった。


王球、どセレブの息子ではあったが、

外見を飾ろうとはしなかった。

交友関係を広めようともせず、

宴席に顔を出したとしても

端のほうで静かにしていた。

そんな人物のもとには、

当然来賓も少ない。


殷景仁いんけいじん劉湛りゅうたんと言った人物は

その当時のセレブであり、

また王球とも姻戚であったのだが、

彼らとは徹底して距離を取っていた。


ただ、読書を非常に好んでいたので、

顏延之がんえんしとは交友を持っていた。


吏部、つまり人事に関わる役職に

就いていた王球だ。

かれのもとには官位を求める者が

面会を求めてきたり、

手紙もよく来ていたそうだが、

いずれにもほぼ取り合わなかった。

それでいて、王球の選考結果は

常に理にかなったものであった。

その見識の深さに、

朝野の誰もが感服していた。


ただ、とにかく病がちであった。

そのため早く解職してほしい、

と、しばしば願い出ていたという。


やがて光祿大夫となり、

金章紫綬を得、廬陵王師、

劉義隆の五男、劉紹りゅうしょうの教師となる。


死去は 441 年。49 歳だった。

特進、金紫光祿大夫を追贈され、

散騎常侍を加えられた。

子がいなかったため、

從孫の王奐おうかんを後継者とされた。




王球字倩玉,琅邪臨沂人,太常惠從父弟也。父謐,司徒。球少與惠齊名。美容止。除著作佐郎,不拜。尋除琅邪王大司馬行參軍,轉主簿,豫章公世子中軍功曹。宋國建,初拜世子中舍人。高祖受命,仍為太子中舍人,宜都王友,轉諮議參軍,以疾去職。元嘉四年,起為義興太守。遷吏部尚書。球公子簡貴,素不交遊,筵席虛靜,門無異客。尚書僕射殷景仁、領軍劉湛並執重權,傾動內外,球雖通家姻戚,未嘗往來。頗好文義,唯與琅邪顏延之相善。居選職,接客甚希,不視求官書疏,而銓衡有序,朝野稱之。本多羸疾,屢自陳解。遷光祿大夫,加金章紫綬,領廬陵王師。十八年,卒,時年四十九。追贈特進、金紫光祿大夫,加散騎常侍。無子,從孫奐為後。



王球は字を倩玉、琅邪の臨沂の人、太常の惠の從父弟なり。父は謐、司徒。球は少きに惠と名を齊しうす。容止は美し。著作佐郎に除せらるも拜さず。尋いで琅邪王大司馬行參軍に除せられ、主簿に轉じ、豫章公世子の中軍功曹となる。宋國の建つるに、初に世子中舍人を拜さる。高祖の受命せるに、仍ち太子中舍人、宜都王友と為り、諮議參軍に轉ぜるも、疾を以て職を去る。元嘉四年、起ちて義興太守と為る。吏部尚書に遷る。球は公子なれど簡貴、素より遊を交えず、筵席にて虛靜、門に異客無し。尚書僕射の殷景仁、領軍の劉湛は並べて重權を執り、內外を傾動し、球は家を通し姻戚たると雖も、未だ嘗て往來せず。頗る文義を好み、唯だ琅邪の顏延之とのみ相い善し。選職に居せるも、接客は甚だ希にして、求官の書疏を視ず、而して銓衡に序有り、朝野は之を稱う。本より羸疾多く、屢しば自ら解さるべくを陳ぶ。光祿大夫に遷り、金章紫綬を加わり、廬陵王師を領す。十八年に卒す、時に年四十九。特進、金紫光祿大夫を追贈され、散騎常侍を加わる。子は無く、從孫の奐を後と為す。


(宋書59-9_為人)




王恵、謝密、王球と言う、当時の「清流派」がひとつの巻に集められていた感じですね。なお王球のエピソードはいつもの紹介範囲よりあとなんですが、このひと紹介範囲内に人柄が全然載っていなかったので、例外的に載せました。公の場におりながら隠者、といってよそおい。ちょっとかれには竹林七賢の山濤っぽさを感じます。

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