袁湛2  九錫をもたらす 

劉裕りゅうゆう後秦こうしん討伐に出た時、

袁湛えんたんはそれまでの役職の上、

これまで劉裕がついていた

太尉たいいの地位を引き継いだ。


また司空しくう、散騎常侍、尚書の范泰はんたいとともに

九命禮物、要は九錫きゅうしゃくを持ちより、

劉裕に授けようとする。

が、劉裕、これを固辞。


この役目を終えねば、

袁湛と范泰の仕事は片付かない。

なので彼らは従軍し、洛陽らくよう入り。

柏谷塢はくやうにて寝泊まりをした。


ここで范泰は自らの役目を

終えていないからと、

歴代晋帝の陵墓を参拝しなかったが、

袁湛はひとり五人の帝の陵墓を参拝。


この振る舞いを、当時の人びとは

素晴らしきことだと讃えた。




時高祖北伐,湛兼太尉,與兼司空、散騎常侍、尚書范泰奉九命禮物,拜授高祖。高祖沖讓,湛等隨軍至洛陽,住柏谷塢。泰議受使未畢,不拜晉帝陵,湛獨至五陵致敬,時人美之。


時に高祖の北伐せるに、湛は太尉を兼ね、兼司空、散騎常侍、尚書の范泰と與に九命禮物を奉じ、拜し高祖に授く。高祖は沖讓し、湛らは軍に隨い洛陽に至り、柏谷塢に住す。泰は受使の未だ畢らわざるを議し、晉帝陵を拜さざれど、湛は獨り五陵に至りて敬を致し、時の人は之を美とす。


(宋書52-16_政事)




この段階で九錫を送って来るってのは要するに「劉裕様の後秦討伐は偉大なる事業」ってのを示す行いであり、かつその辞退は「今は戦時でありそれどころではない」「その事業も成し遂げられていない自分にはまだそれを受ける資格がない」と言ったパフォーマンスともなるわけだ。うーん、この頃の劉裕、どれだけ自律的にもの考えられてたのかなあ。

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