第80回『宝』:箱の中身<タブレットマギウス>
依頼人の話を聞きながら、鍵職人は一抱えもある箱を精査する。
「祖母はタブレットで開けていたようです」
「魔術錠は安全性の高い鍵です。大事な物だったのでしょう」
依頼人の目が輝き、引っかかりを覚えつつ職人は請け負った。
寄木細工のような箱は溝も目立たず鍵位置すらも判らない。
触って眺めて首を傾げて職人は嘆息する。ある小説の描写と似ている。学生時代に教科書で読んだ。
試しに初出の頃の魔術書を探す。簡単に解錠した。
「名前に心当たりは」
「祖父と祖母です。ラブレターですか」
金目の物は見当たらなかった。依頼人は肩を落として去って行く。
職人は処分依頼書をじっと眺め。お宝だと一人呟く。
記された名は、有名文豪の本名だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます