第75回『届く』:婚姻届<オリジナル>

 あなたは万感の思いで色彩豊かな用紙を見つめる。

 母に泣かれ父に投げられ。マスコミに追われ学者に纏われ。役所に呼ばれ飛行機に乗せられ。脅されすかされ演説させられ、実演し。ようやくこの一枚に辿りついた。


『婚姻届』


 こんなものとあなたは言った。形が大事とあの人は言った。

「友好を示すためには、ルールに従うのが一番なんだ」

 異星人が地球人理解のために作り上げた合成生命と、地球人でただの日本人でしかないあなた。

 あなたたちは手を取り合う。届を区役所に提出する――。


「国際結婚の特例は認められますが、同性婚は認められません。どっちが夫なんですか」


『女性』のあなたと、『女性』と認知されたあの人は。

 互いの顔を見合わせる。

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