第73回『隠す』:本音の在処<オリジナル>

 きっと君は淡々とマイクの前に座るんだ。


「機能や記憶を司る部位は明らかになってきました。しかし必要十分条件であるかは不明なままです」


 フラッシュが焚かれる。眼鏡の奥で睨むように目を細める。


「人権への配慮は」


 つまらないって睨んじゃだめだよ。怖いからさ。


「承諾はご家族共々生前に得ています」


 ――これは勝負だ。


 精神と記憶が宿るのは物質に隠れた十一次元、が僕の主張。

 人はあくまでも物質優位。君は僕を睨めつけた。


「脳の完全再現で『人格』をも再現できるか。これは生命の謎解明への一歩です」


 君は画面を覆う布を手に取る。画面の向こうには『僕』が居る。


 君が勝ったら、報酬は僕の本音でどう?

 僕が勝ったら。


 君は困った顔をする。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る