第72回『運』:マクロのラプラス<タブレットマギウス>
「世の中とは非線形な方程式さ」
僕の後ろの席に陣取り、背中合わせで男はボソボソ話している。
「複雑系とも言う」
ラプラスの魔は否定された。しかしマクロの短時間なら、存在してると言えるだろう。
男は呟き続けている。カタリコトリと音がする。
「事象を一つ動かせば、関連事象の確率が変わる」
ざわめきが窓から伝播する。窓はまるで滝のようで。店長はタオルを抱え店を出る。
消火栓から、水柱が屹立し。
やがて、タオルを被り水を滴らせ、少女が店の中へと入ってくる。
「人はそれを、運命と呼ぶ」
少女と目が合う。僕は僅かに腰を浮かす。少女は三度瞬いて。ふわりと笑んで、くしゃみをした。
「依頼、完了」
男はわざとらしく音を立て、席を立つ。
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