第72回『運』:定型句<オリジナル>

 若かりし頃は司会者が運命の出会いでしたとか語る馴れ初めに憧れたりもしたけれど、三十路もとうに超えて色々落ち着くような歳にもなれば盛り上げるための定型句でしかないことくらい分かってくる。クラスなりサークルなり職場なり取引先なり最近は婚活なんてものも入ってくるけど、お互いに限られたリソースの中でベター以上の相手を見つけた結果でしかなく運命という名で飾るのはどうにも居心地がよろしくない。

 晴れの席にもかかわらずそうぼやいた私へ突っ込んできた君は相当の勇者なんじゃないかと今でも思う。

「彗星が落っこちてくることだけが運命だとでも思ってる?」

 旦那とのそんな出会いを運命だと語られるのにはどうしても抵抗がある。

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