後編 その3
数時間後、俺と彼女は二人きりで店のカウンターの前に腰かけて、バーボンのグラスを前に置いていた。
あれから何が起こったかなんて、いつものことだから、簡単に要点だけ話しておこう。
ええ?
(それじゃすまない。もっとちゃんと話せ)だ?
分かったよ。めんどくさいな・・・・。
マダムが警察に電話をかけ、機捜の制服が半ダースほど押しかけ、ボックスにいたボニーとクライド、それからその客だった合計五人、更には他の客の中で銃を所持していた連中がその場で取り調べを受けた。
当然、俺とマダムも事情を聞かれた。俺はまあ私立探偵であるから、堂々たるものだったが、マダムを始め、客の中の数名が免許持ちのバウンティ・ハンターだったことには、流石の俺も驚きだった。
彼らは彼らで、全員どこかから情報を仕入れ、二人組を付け回していたらしい。
乱入してきた3人組は、どうやら東京でも有名な『その筋』の鉄砲玉で、ボニーとクライドのお二人さんとボックスにいた三人組とは対立中の組織だったらしい。
撃たれた連中は幸運なことに全員命に別状はなかった。
俺と免許持ちのバウンティ・ハンター全員は、毎度おなじみ警察の御託を聞かされただけでおしまいだった。
ボニーとクライド、それに『恐い三人組』は警察に引っ張られたが、彼らはどちらかと言えば立場的には被害者だったから、事情を聞かれるだけで解放されだろう。
店の中が静まり返り、二人きりになった時、俺達は二人並んでカウンターに腰かけ、彼女がグラスにバーボンを注いで並べてくれた。
『驚いたな』
『驚いたわ』
俺達はどちらともなくそう言い、グラスを干す。
『只者じゃないって思ったけど、まさか探偵さんだったなんてね』
『それはこっちのセリフさ。まさか銀座のバァのマダムがバウンティ・ハンターだったなんてな』
彼女は謎めいた笑みを浮かべる。
『ここに来ていた賞金稼ぎは私も含めて六人、賞金はそこそこの額だったけど七分の一で山分けにしなくっちゃね。ワリに合わないけど、まあ仕方ないわ』
『おい、俺は数に入れないでくれよ。探偵は懸賞金は受け取っちゃいけないんだ。じゃないと依頼人を裏切ることになる』
『あら、知らなかったわ』
彼女がまた笑った。
『ねぇ、これからどうするの?』
『どうこうもない。黙って
彼女は何時の間にか三杯目を干していた。
『でも、まだいいじゃない?今晩くらい、私に付き合ってよ。痛飲に』
『いいだろう』
俺がそういうと、彼女はボトルからまたグラスに注いでくれた。
終わり
*)この物語はフィクションです。登場人物その他全ては作者の想像の産物であります。
探偵対賞金稼ぎ 冷門 風之助 @yamato2673nippon
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