死神
夜だった
わたしが生まれたのは
満月が出ていて
それが最初の記憶だった
その時はわからなかったが
今なら理解、出来る
わたしを包んでいたそれが孤独という名であることを
得体の知れない背後に回る存在に怯えていた
泣いても誰も助けてはくれなかった
黙ってそうして事態が悪化するのを眺めていた
死神だった
そいつがずっとわたしの側にいた
何もわからなくて怖かった
空に浮かんでいる月が黄色くて怖かった
そう思っているこの自分自身というやつが何なのかわからなくて怖かった
死神は
ゆっくりと口を開いた
「今ここできみは死ぬ、きみのような人たちをもういっぱい見てきたのだ」
言葉の半分の意味もわからなかった
何か嫌なことを言われているということは直感的に理解、出来た
死神はさらに続けた
「きみの言いたいこともわかる、でも誰もがそう思い、そして逃れることは出来ないんだ」
………
「そしてみんな同じ場所へと辿り着く」
例外があるはずだ
わたしはそう思った
わたしは死ななかった
今こうしてここにいる
どうやって生き延びたのかは覚えていない
きっともう一度やり直したってうまくいくわけない
だがわたしはここにいる
まだ死んでいない
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