定められた未来へ


名前の無い花たちが

草原で揺れていた

名前の無い草原だった

「風は?」

そうだね

風も名前が無かったね

そしてわたしはその中心に立っていた

そよそよと前髪を揺らし

わたしはようやく笑みを取り戻すことが出来るのだ

長い長い前置きのあと

その翌日、嵐が来て

全てを粉々に吹き飛ばしてしまった

名前のある物も

無い物も

どうしてこんなことになるのさ

わたしの愛した物たちは皆、散って行った

運命

それがもしも本当にあるのなら

呪う

わたしが名前の無い花と戯れることが

それほど罪なのだろうか

それほど許されないことなのだろうか

あのまま

微かな幸わせを感じて生きていくことが

しかしもう遅い

全ては吹き飛ばされたそのあとだった

………

呆然と立ち尽くす

手には野蛮に光る刃物

わたしは生まれる前から背負っていたわたしの役目を再び思い出す


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