ツヨシしっかりしなさい


月が出ていた

おれの頭上にな

多分、月ではないかと思う

ああいうのを月と言うのだろう

確信は無い

丸くて黄色くて空に浮かんでいた

念のため隣りにいる奴に訊いてみた

「なあ、あれって月だよな」

「ペキューノッ」

そいつは間髪入れずに答えた

奇妙な高音だった

ふざけてるのか?

おれは初めてそいつの方を見た

外国人なら許そうと思ったが異星人だった

「おいおい………おれの隣りに今、異星人がいるぞ」

深呼吸した

だがこんなことをしてどうなる? とも同時に思っていた

異星人だ

おれは真っ先にこいつを使った金儲けを考えた

そんなおれの心を読んだのか異星人はすっとおれから離れて行こうとした

「おい、ちょっと待てよ!」

とりあえずNASAに電話した

叔父さんが勤めているのだ

「もしもし? 叔父さん? いまどこ? ナサ? あのね、今おれの隣りに異星人がいるんだけどどうしたらいい?」

叔父さんは若干の沈黙の後こう答えた

「とりあえず生栗を与えろ、これはまだ米政府の極秘情報で一般には公開されていないのだが異星人は生栗に目がない。生栗を独占するためだけに我が星にやって来たと言っても過言ではないのだ」

んなばかな

「叔父さん、今はふざけてる場合じゃないんだよ」

「あ、ばれた?」

ぶち殺してやろうかこの叔父さん

落ち着けおれ

「もしもしいっ、叔父さんだけが頼りなんだよっ」

「ふむう」

叔父さんは唸った

そして一方的に電話は切れた

後日、叔父さんからおれの父親宛に封書が届いた

そこには『ツヨシ君の成長が気になる』との内容が書かれていた


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