浮いてる! 鬼札?

 紅茶を楽しんだ後、二人で露天風呂へと向かうとリン・ラン・ソニアの三人組の声が聞こえてきた。


 ここも全面改装がなされており、岩風呂だった面影などは一切残ってはおらず、見た目は広大なプールに見える。


「これこれ、そこは遊泳禁止だぞーー」


 バシャバシャと音を立てながら奥、つまり海側からこちらに向け三人が泳いでくるのが目に入る。

 三人はどうやら競争しているらしく、こちらの声は届いてはいないようだ。


 お蔭で湯面が波打っているので、仕方なしにその場で決着が付くまで待つこととした。


 個人的には、どうせならピンっと張り詰めた静かな情緒溢れる状態で入った方がリラックス出来るしね。


 程なくして先頭が足元まで来たところで一位の者を確認すると、ノンビリと背泳ぎスタイルで澄まし顔のソニアであった。



 この子達、皆体型が同じだから見分けが付きにくい。



「あ、エマ姉様だ!」


 一位で到着すると、勢いそのまま湯舟から出てきてエマに抱き付いてきた。


「はあはあ、お姉様! 私もいますぅーー!」


 その後を二馬身差でランが拙つたない平泳ぎで到着、ソニアの隣から同じ様にエマに抱き着いてきた。


「よしよし。ということはあれはリン?」


 凄い勢いで必死に手足を動かしバシャバシャと水飛沫を上げ向かって来ているが二人に比べると明らかに分かる程、前には進んではいない。


 そんなリンは放っておいて、二人は小さな丘をエマの体に容赦なくプニプニと押し付けてアピールしていたが、背中を叩かれたため中断し、後方を振り返る。


「そうなの! あれはリンなの!」

「ホントに? でもアレ大丈夫?」

「心配いりません! あれが姉様の定番の泳ぎ方ですから!」

「そ、そうなの?」

「でもなんだか溺れてる感じじゃない~?」

「エリーさん、大丈夫ですよ。姉様は大抵の事は卒なくこなせるんですが、泳ぎだけは何故か苦手なんです」

「ほーーだったらアレ、見た目通り溺れてるって言えるんじゃない?」


 誰がどう見ても溺れている様にしか見えない。


「あはは、ここ見た目と違って実は全然深くないんです!」

「見た目? ……あっ!」

「なにこれ~」


 言われてお湯を覗き込むと……


 底が見えないというか、透明度が高く深さがかなりある湖を覗いているような、どこまでも続く真っ青な、恐怖心さえ感じられる風景が広がっていた。


「深くないって、ヤバいほど深いじゃん‼︎」

「た、大変〜!」


 慌てて入ろうとするエマ達を慌てて静止すると、二人は顔を見合わせてから自らお湯の中へと飛び込んだ。


 突然の行動に呆気に取られているとランとソニアがお湯の中からスクっと難なく立ち上がる。


「え? え?」


 見ると二人の可愛らしい太もも辺りに水面がある。

 確かに深くは無さそうだけど……


「浴槽の床は映像を映す仕組みになっているみたいで実は全然深くはないなの!」

「私達も最初は怖くて入るのに躊躇ったんですが、姉様がいつもの勢いで真っ先に飛び込んで体を使ってネタバラをしてくれたので」

「なんて紛らわしい……」

「でも浮いているみたいで凄い不思議な感覚〜」

「へ? ってもう入ってるし〜」

「エヘヘ♡」

「一風変わってるけどラーたんにしてはまともな改造だわ」

「だから貴方は気にしすぎなの」

「だって〜」

「お姉様も早く!」

「入るなの!」


 湯船の中からエマの両腕を引っ張る。


「はいはい……その前にリンもこっちに来るよに伝えてくれる?」

「は、はい。姉様ーー! 休憩しますよーー!」

「……お? もうきゅうけいの時間〜?」


 ランの声で即座に泳ぐ?のを止め、お湯から頭だけを出してこちらを見た。


「お~~? エマエマとエリエリも来てたのか~」

「そうです。姉様もこちらに来て下さいな」

「分かったのだー! いまいくどーー」


 返事とすると水面から僅かにお尻を出し、まるで潜水艦が艦橋だけを出しながら殆ど波飛沫を立てず物凄い勢いで迫って来るような泳ぎを披露した。


「とうちゃく〜」


 他の者には目もくれず、そのままランに抱き着く。


「い、今のって……」

「犬掻き? かしら~」

「な、なんてスピードなの……」

「そ、そんな……姉様に唯一勝てる競技だと思ってたのに……」

「およぎはと~ってもニガテなのだ〜」

「はは……リンにも苦手な分野があったんだ」


 と思っていたらエマ&エリーに顔を向け二人にだけ分かる様、何か意味深げにぎこちない瞬きを送ってきた。


「「?」」


 だが直ぐにランに向き直る。


(今のって……)

(ええ、多分ウインク?)


 皆に分からない様に注意しながらの内緒話。



 うーーん、この子も何気無く苦労してそうだね



 四人の視線を一身に受け幸せそうなリン。

 ランに頭をナデナデして貰っていたが、何かの気配というか匂いを感じたのか、不意に出入口の方へ目を向ける。


 すると前も隠さず立派な山脈をブルンブルンと震わせながらマリ&マキがドカドカと足音をさせながら入って来た。


 二人はエマ達を見つけると迷うことなく近付いて来たが傍まで来た途端、なぜか皆を見てマリが叫んだ。


「な、何じゃこりゃ⁈ みんなおかしな格好で浮いとるで! どういうこっちゃ?」」

「何言うとんのや? 浮く様なヤツ、ここには誰もおらんやろに」


 五人を見て驚き固まるマリとは対象的に冷静にツッコミを入れるマキ。


「はい? マキちゃんや、どこ見て言っとるん?」

「へ? マリこそ何見て言っとるんや?」


「「…………?」」


 二人して不思議そうに顔を見合わせる。

 暫しの沈黙の後、同時に口を開いた。


「体」「胸」

「「「おい!」」」


 怒るエマ達。

 声の合った一同のツッコミに驚く姉妹。


 姉は素直に驚いている様だが、妹の驚き様にはワザとらしさがミエミエであった。


 その反応を見てエマの目が光る。


「フフフ、我らを敵に回すとは何と愚かな……みんな準備はO〜K〜?」

「「も〜ち〜ろ〜ん〜!」」

「なら逃のがすなーー!」

「な、なんや⁈ キャーー」

「あ、こりゃあかん‼︎ ギャーー」


 ランとソニアとエマが二人に襲い掛かったのを見て、初参加となるリンとエリーも釣られて襲い掛かる。


 困惑気味に遅れて参加した二人だが直ぐに意図を理解して喜んで参加していた。


「ハアハア、何が浮いてるって?」

「ハアハア、ウチは体が浮いてるって! 胸はマキが言ったんや!」

「連帯責任だ! 私達を姉妹のスキンシップのダシに使った罰だ!」

「そやかて目一杯くすぐらんでも!」

「真の仲間になる儀式だから我慢しなさい!」

「な、なんやそれ……」

「ハアハア、だ、誰や⁈ ウチのを揉んだヤツは⁈ まだ誰にも揉まれた事ないのに!」


 報復の原因となったマキは赤顔しながら山脈を腕で隠して涙目で訴えると、ランとソニアが口笛を吹きながらソッポを向いた。


「お、お前らか⁈」

「「えへへ♡」」

「マリ! リベンジや!」

「え? ええの?」

「ウチが許す! そう言えばソニアはまだだったよな~」

「……お? そう言えばまだだったよね?」


 エマも気が付いたようだ。


「は、はぇーー? ……なのなの?」


 ジリジリと後退るソニア。

 隣のランは何故か目が輝いている。


「二人纏めて攻略やーー!」

「なのなのなのなのーーーー」

「きゃーーーー♡」



「……ちょ、タンマ! 一旦止め!」

 


 儀式の最中、突然全員の動きがピタリと止まり、マキの視線の先に注目が集まる。


「ランがいつの間にかリンと入れ替わっとる!」

「あらあら~大丈夫~?」

「うう〜〜ランランを~~いじめるな~~」

「あ、姉様! しっかりして下さい」


 幸せそうな顔のリンを泣きながら体を揺するラン。


「って、何泣いとるん? 喜んでくすぐってたヤツが」

「えへ♡」


 その脇ではソニアがピクピクしながら目を回していたので、マリが脱衣所内の休息スペースへと運んで行くと、制服の裾が極端に短い浴室バージョンのメイドさんが待機しており、介抱してくれると言うのでお願いした。


 状態を確認して貰ったところ、ソニアはただ単にのぼせただけの様なのでメイドさんにお任せして、復活するまで各ペアに分かれてお互いに干渉しない適度な距離を保ち、夕日を眺めながら過ごすことにした。


 程なくソニアが復活してきたので、指定の夕食会場へと向かう為、脱衣所へと向かう。


 すると棚に置いてあった筈の服や下着が見慣れぬ衣服へと変わっているのに気付く。


 その途端、全員の眼前に空間モニターが現れ短文が表示された。




『浴衣でお越し下さい』




 はい? 浴衣?



「浴衣ってコレよね?」

「どう着るの〜?」


 見たことはあるが、誰一人として着たことは無いらしく全員で首を傾げる。


「ご主人様〜お手伝いします〜」


 困っているとすかさず数人のメイドさん達が現れアッという間に浴衣を着せていく。


「カラフルで新鮮な肌触りと着心地~」

「でも~動きづらいのだ~」

「あ、姉様! そんな大股で! 下着が丸見えですよ!」

「ぶらじゃーも無いし、下はとってもスース―するなの!」

「何やキツくないかい?」

「そやな、特に胸の辺りとかな」


 困り顔で自分の山脈の位置微調整している姉妹。


 うん、この姉妹の会話にツッコミは入れてはいけない……気がする。


 皆も同じ意見の様で、二人に対し綺麗に背を背そむけていた。


 着替え終え通常服モードのメイドさんの案内で食事処へと到着。

 入口の前ではシェリー&シャーリーと菜緒&菜奈の姉妹達が楽しそうに雑談していた。


「みんな先に来てたのね?」


 その声で四人が振り向く。


「楽しそうになに話してたの?」

「二人には先日、Cエリア基地ウチを守ってくれたお礼をまだちゃんとしてなかったから」

「そんな済んだこと気にするな!」

「ってエマちゃんが……それいうの?」

「おう!」

「全くこの子は~」

「でもホントに気にしなくていいんですよ!」

「我が妹の言う通り。我らは当たり前のことをしたまで」

「おう、その通り!」

「なんやエマっちも言うようになったの~」

「いっそのことウチんとこの師匠に弟子入りする気はあらへん?」


「それは謹んで辞退させていただきます。ところであなた達は温泉入ったの?」


「いえ。我らは四人でテニスをしていたので」

「へ? テニス? テニスってあの?」

「そうです! お姉様はプロ顔負けの腕前なんですよ!」

「テニスは淑女の嗜み。学生時代から一時も欠かさず修練に励んでおります」

「そうなの? ……で菜緒達は?」

「少しだけ。最初はダブルスでお相手したんだけど相手にならなくて。途中から私達ペアに一人追加してそれでなんとか」

「追加?」

「はい! テニスモードの助っ人メイドさんに入って貰って二対三で!」

「はあ……でも胸の痛みは大丈夫だったの?」

「痛み止めの注射とサラシで固定したので然程は」


「そこまでしてやらんでも……一つだけ大事な事、聞いてもいい?」


「「「「?」」」」


「服装は?」


「? 勿論専用ウエアです」


「あ、そう」


 この四人のテニスウエア姿……ちょっと見てみたかった気がする


 基本的に身体を動かす事には興味がないので愛想良く?話を切り上げてから気を取り直し、食事処となる部屋の入口を見ると、目の前には通路より一段高くなっている板張りの床が目に入る。


 さらにその先の部屋は何故か「襖ふすま」で仕切られてあったのだが、その襖に描かれたある絵を見て全員驚いてしまう。


「……どこかで見たことない?」

「えーーと……」

「確か……」

「お〜? あれはブタさんなのだな~?」

「こっちは蝶? それにしてはモダンで派手派手な絵柄なの!」

「あ、花札の絵柄ちゃう?」

「そやね。間違いあらへん。そう言えば昔から疑問に思うてたんやけど「これ」はどういう意味なん?」


 マリが「鬼札」を指差した。


「知らん。落し穴とちゃう? 横向きに変えたら洞穴?」

「……全く違う、ぞ」

「そうか! 花札っつーのはテーブルゲームやし、RPG黎明期特有のフィールドダンジョン攻略が目的……」


「……だーかーらー違う、って!」


「おーー? ノアノア、だ~」


 皆、意味が分からず首を傾げていたところマリが新発見に目を輝かせ始め、力説し始めたところにノアが不意に現れた。


「……大体たった四十八枚でどうやって攻略するんだ、よ」

「へ? ちゃうの?」

「……この絵柄は、な、暗闇の中で光った雷雨を表しているの、だ」

「「「へーー」」」

「雷なら赤色でなくて黄色とかの方がそれらしくない?」

「……心理的効果を狙ってのことじゃないかい、な」

「「「へーーーーー」」」

「……と、ウンチクはこれ位にして、サッサと中に入るんだ、な」



 はいはい、入りますよ〜、と



「何で座敷?」

「あら〜畳だわ〜」

「凄く広いですぅ!」

「筋トレには最適な広さだな」

「これならお座敷バトルが出来るなの!」

「お座敷バトルってどんなバトル⁈」

「マイクとお立ち台があらへん」

「枕と布団もな」

「それだと照明を変えないと雰囲気が」

「エマちゃんと一緒なら……どこでも」

「いっちば〜ん」


 若干意味不明な発言が飛び交ってるし……


 入口から中を見渡すと部屋の中央に、かなりゆったりとした感覚で円形に座布団クッションが並べてあった。


「クッションの上に直接座ってね~」


「うぉ! ビックリしたーー」


 後ろから声したので振り向くと真後ろに笑みを浮かべたラーナが立っていた。



 って言うか気配を全く感じなかったよ……



「さあ食事の前に〜今後の予定を説明しましょう〜」


 エマの肩をポンと叩いてから追い越し先に入って行く。


「全員座ったわね〜それじゃ〜始めましょう〜。先ずはエリーちゃんのご帰還、おめでとう〜」


 ラーナは一人立ったまま、エリーに向け自ら拍手を贈る。

 すると周りも同じ様に拍手を贈り始めた。


「みんなありがとう。ご迷惑をお掛けしました〜」


 立ち上がり深々と頭を下げる。


「リンちゃん、シェリーちゃん、そしてマリちゃんの三英雄は~エリーちゃん救出任務を立派に果たし、ご苦労様でした~」


 またまた拍手が巻き起こる。

 その拍手に対し、シェリーは口元を緩めるだけで軽く頭を下げ、マリは立ち上がり頭に手をやりながら何故か赤面してペコペコと皆に頭を下げまくる。


 もう一人の英雄であるリンは「きゅうしゅつーー? なんだそれーー?」と訳も分からなさそうにキョトンとランを見ていた。


「最後に~誰からも~何も言われていなかったのに~自発的にエマちゃんを支えてくれた~みんなに~盛大なる拍手を~~」


 今度はエマを除く全員がお互いの功績を拍手によって讃えあう。

 その間、エマは立ち上がり一人一人の顔を確認してゆき最後に姉と目が合う。


 すると姉も立ち上がり二人揃って深々と頭を下げた。


「次は改めて新メンバーの紹介をします〜。三人は〜起立〜」


 菜緒、菜奈がよっこいしょっと立ち上がり、ソニアは元気よく立ち上がる。


「みんなもう顔見知りよね〜。でも一応自己紹介〜」


 三人が顔を見合わせる。


「それでは私から。Cエリアで主任代行をしている菜緒です」


 拍手が起こる。それに軽い会釈で応える。


「主任代行⁈ それって偉いんか?」


 マリが隣のマキに小声? で聞いてきた。


「そやね。あそこで立っとる姉さんよりも遥かにな」

「そ、そうなん⁉︎ そりゃメッチャヤバイんちゃう?」

「何がヤバイんや? マリは人に言えん様な事でもしたんか?」

「いやな、主任言うたらサラと同じやろ……」

「こほん!」咳払いするラーナ

「「!」」固まる二人



 あの二人、絶対にワザと聞こえる様に言ってるよね



「私は……同じCエリアの菜奈です……エマちゃんの恋人です」

「「「!」」」


 菜緒、ラーナ、ラン、シャーリー、ソニア、ノアの片眉がピクリと反応した。


「?」


 言った本人は皆の雰囲気の変化を微妙に感じ取ったが、残念ながらその変化の理由が理解出来ずに首を傾げる。


「「「あはははは」」」


 シェリーとエリーとマキが楽しそうに笑い出す。


「ま、まあ今はツッコむのは止めとくわ〜」


 流石は最年長。何とか自重出来たようだ。


「はい次なの! Dエリアのソニアなの! 私もエマ姉様の恋人なの!」


 元気よく手を上げ自己主張をする。

 すると菜緒、ラーナ、ラン、シャーリー、ノアの片眉がまたまたピクリと反応した。


「「「あはははははははは」」」


 シェリーとエリーとマキがエマをチラチラ見ながらさらにお腹を抱えて笑い出した。


「え、えーーと、元気があっていいわね〜」


 今度も何とか我慢出来たようだ。



 って何ムキになってんの?


 今日のラーたんはちょっとだけ様子が変じゃないかい?


 なんか焦ってる様にも見えるよ?



「ふーー、さて自己紹介も終わったし〜現状の確認からしてくわね〜」


 最後にラーナが座ると室内が暗くなり皆が座っている中央の空中に、薄暗いが球体型のモニターが現れ、その球体内に我がBエリア基地と惑星ドリーが目視で見ているのと寸分変わらない姿で3D表示された。


「ここは説明いらないわね〜」


 全員モニターを直視しているのを確認してから話しを続ける。


「次はCエリア基地~」


 今度はCエリア基地が現れる。

 とは言ってもCもBもDも外見上は全くの一緒なので見ただけでは判別できない。


 但しBエリア基地に関しては傍にドリーがあるので見分けるのが容易だ。


 次に先日襲来した敵となった調査艦群がモニター内に現れCエリア基地と比較表示された。


「あれってこんなに数が多かったの…」


 改めて比較すると敵軍の集結区域は基地に対して数十倍の広さを有しているのが良く分かる。


「こんなのによく勝てたなの……」


 実際に戦った二人がポツリと呟く。


「そしてこれは三人の活躍のお蔭で防衛に成功した後の様子~」


 今度は散々たる調査艦の残骸が映し出された。


「このイメージを決して忘れないでいてね~」


「「「…………」」」


 全員黙したまま映像を見つめる。




「近いうちに全ての基地に奴らがやってくるわ~」




 突然、爆弾発言をサラっと言い放つ。


 その言葉に皆が騒めき出す。


「な、なんやて!」

「またエマ姉妹狙いか?」

「多分だけどもう二度とエマちゃんやエリーちゃんは狙われないと思う~かな~」

「なら何でまた?」


「別の段階ステージに入ったので~。今度の狙いは私達探索者全員の命~つまり完全なる殲滅が目的~」


「「「…………」」」


 菜緒とノア以外の全員の顔が凍り付く。


「私達探索者は~各々の命と~各基地を~何としてでも~守りきらなければ~なりま〜せん。特にBエリアウチは~ドリーも~敵の攻撃対象に〜含まれると〜思われます〜」


「い、いったいどういう事?」

「簡単に言えばラスボス前の前哨戦~の位置づけになるのかしら~」

「話が見えてこないんだけど……」

「兎に角〜最後まで生き抜かないと〜未来はやってこない〜ってこと〜」



 話の内容とは裏腹にあまり緊張感が感じられない雰囲気のラーナであった。

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