クレアの旅立ち! 先生合流!

 一方クレアは、レイアの光点がエマから離れていくのを見て、どちらに向かうか迷ってしまう。


 その合間に菜奈とランがエマの下に辿り着き、無事確保との連絡が入ると直ぐに、菜緒から全員一時的にアリス邸に退避しろとの指示が入ったので、その指示に従おうと一歩踏み出したのだが、アリス邸に向かう前にどうしても姉とちゃんとした話がしたかったので、何処かへと移動をしているレイアに会う為に転送装置へと近付くと突然レイアが目の前に現れた。


「な! レイア! 貴方どうしてこんなことを!」

「クレア、大事な話しがある。聞いてくれ!」


 現れるなりクレアに近寄り両肩に手を置いて詰め寄ってきた。


「な、何?」

「お願いがあるんだ!黙って俺の話を聞いてくれ!」

「…………‼︎」

「…………⁈」

「貴方はいつもそうやって自分勝手に! 大体今までどこで何をしていたの⁈ 私がどれだけ泣いたか分かってるの?」

「……すまない。俺の事は一切話せない」

「それに私にだって立場っていうものが……」

「情報部のことか?」

「もうそれだけじゃないの‼︎」

「情報部なら俺が話を付ける! だから頼む‼ 前回の様にのんびり事を構えている時間的猶予は無いんだ‼」

「前回? 時間? それって「消失」のこと?」

「そうだ」

「え? でも上はまだ直ぐには起こらないって……」

「それは昔のデーターを元に割り出した予測だ! 今回は「消失現象」の進行速度が早まってる!」

「え? 本当に?」

「ああ、アイツらが言ってたから間違いない」

「アイツら?」

「だからお前の大切な「贄」以外の手が無いか、もう一度アイツらの所に今すぐ行って確かめる必要がある。だから……俺と一緒に来てくれ!」

「エマ以外? …………分かった」

「ありがとう!」


「贄以外」との言葉に反応、目線をレイアから下げ一瞬だけ考え込むが直ぐに何かを決意したようで力強く返事を返した。


「クレア~」

「アル……ちゃん?」

「エマに伝言は~?」


 アルテミスの問い掛けに返事に詰まる。


 だが直ぐに

「…………もう離れないって言ったのに……ごめんなさい。でも……かならず貴方の所に絶対に戻って来るから……お願いだから待っててって」と。


「はいよ~上手く言っとくね~それとクレアに「餞別」を渡しとくね~」

「餞別?」

「クレア用に取って置いた最後の1個~レイアの艦に送っとく~。クレアならもう使い方は知ってるから~使ってみてね~」

「? 分かった」

「使用上の注意事項として「餞別」を使った場合、クレアとこちらとの繋がりリンクは100%自動消滅しちゃうからね~覚えといて~」

「は、はい」

「最後に……艦相棒はいないけどクレアはもう立派な「探索者」〜だから色んな柵しがらみなんてキレイさっぱり忘れて~今、心の中にある「思い」に従い未来に向けて行動したまえ~」

「……はい」



「レイア~」

「あ? なんだ?」



 ……クレアさんを、そしてあの子達のこと頼みますよ……



「そんな事言われんでも分かってるわ‼︎ ……ん? なんだ今の声? 別の奴か? 頭の中に直接? あの子達?」

「……多分……いえなんでもない。さあ行こう」


 目を瞑りながら微笑むクレア。

 対して困惑するレイア。


「え? あ、ああ」







 菜緒は菜奈達に指示を出した後、合流メンバー達がガーデンアリスエリアに立ち入る為の許可を貰うためアリス本人に連絡を取った。


 合流メンバーであるエリスはアリスの妹だから許可は要らないと思ったが念・の・為・、自由に入れるのかをエリス本人に聞いたところ「あそこはどうやってもムリー」との思いもよらない返事が帰ってきたのでリンとエリス、さらに甲も含めて三名をお願いする事となった。


 その様子を周りの者達は見守るが、若干一名は何故か違う方向を向いていた。


「アリスさん、応答願います」

「……はい」


 音声通話ではなく直ぐに空間モニターが現れアリスの顔が映し出された。


「一旦そちらのエリアに退避してもよろしくて?」

「構いませんよ? どうぞご自由に」

「リンさん以外にもう二人ほど人数が増えたんですが」

「はい、ステラから聞いています。マキさんの用心棒の甲さんですよね? 無害そうだし構いませんよ? って二人? 聞いていたのは甲さんだけだったような。ではあと一人はどなた?」


 と言って空間モニターが移動、モニター越しにその場にいるメンバーを順に確認していく……と、ある人物の前でピタリと止まった。



「…………ってエリス、お前かーーーーーーーー⁈」


 エリスを見つけるなり目一杯見開いて驚いた。


「……フン!」


 エリスは目を合わさずソッポを向いたままだ。


「良くもこんな状況にしといて抜け抜けと戻って来れたわね‼ アンタのせいでこっちはどれだけ苦労したと思ってんの‼」


 先程までとはまるで別人、物凄い早口で捲し立てるアリス。

 アリスの感情を表すかの如く映っている空間モニターが微妙に波打つ。


「頭が固いアリスが悪いんでショ?」


「キィィィィ‼︎ いつもアンタの我儘聞くアタシの身にもなりなさいってーの‼」


「フン‼ 全く小うるさいお〇さんなんだカラ!」


「なななな、なんだとーーーー‼︎ アンタまた性懲りもなく何か企んで」


「…………フッ」




 プチプチ




 忍耐という糸が切れる音がリアルに聞こえると共にアリスの顔がみるみる赤くなっていく。


「ちょ、タンマーー! アリス待ったーー!」


 マキが慌てて止めに入る。


「…………は⁉︎ こほん。オホホホホ、お見苦しい所をお見せしてしまいました。マキさん、無事戻られたようで一安心です」


 一瞬でいつものアリスへと戻った。


「お、おう。ステラがついてきてくれたお蔭で助かったわ。先ずはその礼を先に言わせてくれ」

「いえいえ。お役に立てた様で良かったです。マキさんが感謝をしていたと本人に伝えておきますね」

「それとな、向こうで偶然エリスと会ってな。ここまで送って貰ったんや」


「へーーーーーー偶然、ねーーーーーー」


 エリスをジト目で見るアリス。

 それに対しさらにソッポを向くエリス。

 既に体は180度、アリスに対して背を向けていた。


 そんな二人を交互に見ながら慌てるマキ。


「そ、そんでな、マリもな、向こうでエリスに助けてっつーか、案内して貰ったんよ」

「…………」


 変わらずエリスをジト目で見るアリス。


「ね、姉ちゃん助けて貰った上に、ウチとステラをここまで送ってくれた大恩人なんよ……」

「はぁーー言いたいことは分かりました。今回はマキさんの顔を立てる、という事でエリスの立入りを「今だけ」許可します」

「そ、そうか? あんがと……」


「たーだーしー‼」ジロリとエリスを見て


「へ?」ビクッとするマキ


「エーリースー?」目を細めるアリス


「…………」ソッポを向いたまま微動だにしないエリス


「私が言いたい事、分かってるわよねーー?」


「フン! 当然でショー」


「全くもう‼︎ あんまり私を巻き込まないで欲しいわ!」


 膨れっ面のアリスが映ったモニターが消えた。


「ふーー取り敢えず第一関門通過や」


 安堵するマキ。

 エリスを見るとこっちも膨れっ面をしていた。


「で、では行きましょう」


 菜緒が戸惑うソニアの手を引いて居心地が悪そうに歩き出した。






 ガーデンエリアへと着くと間もなく菜奈達が現れた。

 駆け寄る四人と一体。


「エマは?」

「大丈夫……気を失っているだけ」

「そう、良かった。背負うの変わろうか?」

「大丈夫……このままで」

「あ! マキさん! いつ戻って来たんですか?」

「ついさっきや! う、うぉ! リンやないか! そっちこそいつ来たんや?」

「キマキマおひさしぶりーーなのだ!」

「おう! 久しぶりやな! 相変わらずの元気でなにより! しかし……なんかおかしくないかい? てかどこか怪我でもしたん?」

「何がーー?」

「いつもと逆ちゃう? 位置が?」

「んーーいちーー? いちいち気にするなーー!」

「姉様! 恥ずかしいからもう降ろして下さい!」

「そう〜? 分かったのだ〜」


 ランは解放されると心配そうにリンを覗き込む。


「はぁ〜突然どうしたんですか?」

「ん〜ないしょ!」


 とても嬉しそうなリン。


「な、内緒?」

「ラン、仲がいいのなの」


 ソニアがいつの間にか背後に回り込み二人の合間からニヤケ顔で覗き込みながら耳元で囁く。


「へ? あ、うん」

「お〜? ランランのおともだちか〜?」


 二人同時に振り向いた。


「そうなの。Dエリアのソニアなの」

「ニアニアか! ランランのおねえちゃんのリンリンなのだ。よろしくなのね!」

「こちらこそなのね!」


 意気投合する二人。目が輝き出した。


 はしゃぐ二人を眺めていたランは、到着した時からマキの背後にいる甲が気になっていたので聞いてみた。


「それでこの逞しい方は?」

「甲って名で、ノアが拵こしらえた無敵のアンドロイド」

「はぁ……」


 甲をジッと観察するラン。


 それに対し、いきなりボディービルダー顔負けの「モストマスキュラー」のポージングで挨拶を返した。


 呆気に取られ目を見開いたまま固まってしまう。



「キャーーーー! 誰なのですカー⁈ 」



 エリスが突然お尻を押さえて叫び声を上げた。


 全員の視線がエリスへと向けられると、後方ではリンがエリスの小さなお尻をペタペタと撫でていた。


「あ、姉様一体何を?」

「?」


 自分でもよく分からないと言った感じで首を傾げるリン。


「リンがラン以外に自分から触れ合うっちゅーのは新鮮やわ」

「姉様、悪ふざけが過ぎますよ?」

「……ごめんなさい」


 素直に謝るリン。


「いやいやこちらこそ大声出して面目ないヨネー」


 こちらは全く気にしていないようだ。


「ところでクレアはまだ来んの?」

「そう言えば……遅い」

「どうしたんでしょう? まさか今度はクレアさんが⁈」

「みんなここで待ってて‼︎」


 と言って菜緒が転送装置を使って急ぎ基地側へと一人戻って行く。


 基地に戻り位置情報にてクレアの場所を検索するが何処にも見当たらなかった。


 というか基地内全域を検索したが、自分以外人の光点が一つも見当たらない。


「えっ? どういう事?」


 唖然とする菜緒。

 何か嫌な予感がし出したので自艦に連絡を取ろうとしたところ、突然通信が入った。


「菜緒〜」

「その声はアルテミスさん?」

「当たり〜」

「クレアはどこか知ってる?」

「クレアならレイアと一緒に旅に出たよ〜」

「な、何で⁈ もしかして連れてかれたの⁉︎」

「違うよ。自分の意思で〜」

「え? 何で? どうして?」

「姉妹二人で決めたこと〜だから大丈夫〜危険はないし必ず戻ってくるから今は信じて待ってあげてね〜」

「で、でもそれだけじゃエマが納得出来ないでしょ?」

「エマには「クレアは自分の手で、自分の足で運命を切り開くため、やっと前へと進みだしだんだよ」って言っといてね。それで充分伝わると思うから〜」


「…………分かった。私が最大限フォローする」


「ありがと。あと菜緒にもチョットだけお節介~君達もクレアを見習って、立ち止まってないでそろそろ前に進みださないとね~」

「え?」

「菜緒はどうしたいの~」

「私が? どういうこと?」


「ん~自分自身今のままでいいのかな~て思っていない〜?」


「今のままって?」


「Cエリアでエマがレベッカと会った時に「最後の希望」って言ってたの~覚えてる~?」


「……ええ」


「その「希望」にはね~エマだけでなくて~クレアや君達姉妹も含まれているんだな~」


「…………」


「このままだと~「過去」も~「君達の運命」も〜変わらないかもね~」


「…………」


「菜緒なら薄々気付いてると思うけど〜ヒントをあげるね~アリスが君達姉妹に「条件が足りてない」って言ってたけど~あれは彼女なりの不器用なアドバイスだったんだな~」

「え?」

「立場があるから説明出来ないってのもあるんだろうけどね~。実はね~「覚醒」するための条件はエマによって殆ど満たされてたんだな~。あとは最後の一押しだけ~」

「どういうこと?」

「アルテミスはエマの相棒〜だから菜緒の事は分からない〜人それぞれ「思いの形」は違うからね〜だから「思い」については自分で考えてね~でないと「覚醒」は出来ないから~」

「思い……」

「それぞれの思いの例として分かり易いのは……それこそ「ドMの少女」かな」

「……なるほど」

「まあアレは特殊なのかもね〜」


「ところで……菜奈は?」

「おんなじ~一歩手前状態だね〜」

「…………」


「それともう一つ〜エマに大事な伝言頼めるかな~」

「?」

「エリーが無事Bエリア基地に帰って来たよ~てね」

「ホント?」

「うん。だから教えてあげてね〜」


「ええ。ところでこちらも一つ確認してもいい?」

「な~に~」

「連絡が取れなかった間、そちらでは私達の行動はロストしていたの?」

「他艦みんなはね~自閉モードにされていたね~」

「みんな? アルテミス貴方は?」

「見えてたよ~? エマの頭のチップを通してね~」

「それは特製チップだがら?」

「それもあるね〜」


 それも?


「……どうして貴方は自閉モードにならなかったの?」

「ん〜秘密〜」

「もしかして……レベッカさんが?」

「だから〜秘密だって〜」

「ケチ」


「みんなには秘密だよ〜ついでにあと二つ報告しとくね〜」

「何かしら?」

「レイア達が出て行ったからいつでも出発が可能になったよ〜」

「了解」

「それと……探索艦が一艦接近中〜」

「……誰?」

「アシ2号〜」

「……ノア? ミアじゃなくて何でノア?」


「……悪かった、な! ミアじゃなく、て!」


 ミアの時と同様、菜緒の眼前に突如として怒ったノアの顔が空間モニターに「どアップ」で映し出された。


「ひっ‼︎」


 驚いて転び腰を抜かしてしまう。


「……フン、失礼なやつ、だ!これなら「荷物」だけ押し付けて、帰ってもいいんだ、ぞ?」


 若干ご立腹のノア先生。


「全く……取り敢えずはお疲れ様。報告は後で聞くとして、お久しぶりね、ノア」


「……お、お疲れ様、だと? 貴様何奴、じゃ?」


 労いの言葉を聞いて引き始めるノア。


「……はぁ〜、ところで「荷物」とは?」

「……ここの住人を預かってきた、だでよ〜」

「全員?」

「……おうよ!」

「状態は?」

「……若干一名を除いて体調は問題、なし〜」

「そう。取り敢えず中に入ってきて。それまでには指示を出しておくから」

「……なんか変わった、な」

「何が?」

「……何でもない、ぞ」


 空間モニターが消えた。


「さて、先ずはAエリア基地ここの立て直しから……か」


 そう言い残し、一旦転送装置で皆の所へと戻って行った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る