第45話 三人目! エマとクレア4

 

 重い雰囲気の中、颯爽と先頭を歩くサラ。

 その横、半歩後方をワイズを脇に抱えたラーナが続く。


 この二人、仲は悪くはない、いや寧ろ良好と言える。

 サラは部下に対して自ら表立った育成はしないし、給料分の仕事は出来て当然という方針。なので文句は言えども褒め言葉はまず口にはしない。

 そんな性格を熟知しているラーナは探索者達や基地勤務職員、さらにはサラのフォローまで、遠慮せずに手を出すといった性格。ベテランの域に達している探索者。

 普段からお互いの「厄介な性格」を承知の上で、立場を超えて持ちつ持たれつの関係を築けていた。


 特なので今回のような場面なら、サラに対してラーナがツッコミを入れて場を和ますのが定番……なのだがワイズを掴み損ねた時点からラーナは一言も喋らずサラの指示に従っている。

 エマはこれを「やっと奴らの変態性の深刻さを理解してくれた?」と途中まで本気で思っていたが、それが思い違いだったことに気付く。


 今までのように感情に任せた暴走とは程遠い状態。

 その証拠に今のラーナの「背中」は冷静そのもの。

 ただその冷静さにどこか違和感を感じる。

 もしかしたら我慢している?


 そのエマはサラ達から三m程離れた位置で、仕方なしにとクレアに手を引かれて後をついて行く。


 途中、自室の客室の前を通りかかる。するとエマとクレアの入り口の扉が無く、廊下に扉の残骸らしき物が飛び散っていてた。

 クレアは扉が開かなかったから多分ガンで破壊したのだろ。ヒンジとドアロックの部分が綺麗に抉れた状態で廊下に転がっている。

 そしてエマの部屋は……元が何なのかも分からない程に原型を留めておらず、木片や金属片床に転がっていた。


 というか二人共、良く私の声が聞こえたね。


 因みに私の部屋の中には……全員似たようなあられもない姿で横になっていた。

 本日二度目となるラーナの「気」をモロに受けてしまったか、単に酔って寝ているかのどちらか。

 各々の艦AIが何も言ってこないから、後者ではないかと。

 まあ艦とは電波で繋がっているし搭乗者がヤバい状態なら艦AIが何かしらの手を打つだろうから心配は要らないだろう。


 サラの部屋は通路一番奥の突き当たりの角部屋だった。

 私達の部屋よりも二回りくらい広さがある「ロイヤルスイートルーム」で豪華な内装。


「とりあえずその辺に置いとけ」


 客室に入るなりサラは振り向きもせずにラーナに命じる。 

 すると返事はせずにだだっ広い客間の隅にワイズを放り投げる。それも「いらない物」を無造作に投げたという風に感情がこもっていない投げ方。

 こんな雰囲気のラーナを見たのは初めてで、一見冷静に見えていたがやはり怒っていたんだと勘繰る。


 一方、ワイズは投げられた衝撃で唸り声を上げたが目を覚すことはなかった。


 サラは客間の中央に置かれた大きめの座卓に向かうと四人分のお茶と茶菓子を「呼び出し」座椅子に腰掛ける。それから私達に目で座る様に促してきた。


 これから何故ワイズがここに居るかの説明を始めるのだろう。

 全員が座り、出されたお茶を口に含んでからサラを見る。

 サラは一度大きなため息をついてから徐に口を開いた。


「あいつ……ワイズが何故ここにいるか、だったな?」


 無言で頷く。因みにラーナとクレアは身じろぎ一つせずサラを見ている。


「その前に『…………』」


「「「了解」」」


 サラが何やら呟く。途中から何を言っているか聞き取れなかったが、この島に集合している全艦の声が突然届いた。

 了解の意味が分からずクレアと顔を見合わせてしまう。


「今、何言ったの?」

「ただの機密コードだ。この部屋を密室にした。以後の会話は艦・基地・星系の記録に一切残さないようにしただけだ」


 淡々と話し終えると菓子に手を伸ばす。


「そんなことも出来るの?」

「これはだ。残念ながら「エリアマスター」であるお前でもこれは出来ない」


 サラは取った菓子を口に放り込み咀嚼しながら答えた。


「あ、そう……」


 別にする気もない。それよりサラって何者……なの?


「さてワイズだが私が連れ戻してきた」

「え? でもワイズも(強制跳躍で)行方不明だったよね?」

「ワイズはな、私のだ。分かりやすく言えば奴の動きを探る役だな」

「?」


 突然何を言い出す?


「私は「友人」からある情報を得ていた。それに関連してワイズには奴ら……いや奴、ロイズの監視役を頼んでいたんだ」


 ……兄が弟を? ということは二人はグルではない?


「ワイズの艦にだけは制御不能に陥った場合のみ、ある区域に強制的に向かうようにプログラムの改変をおいた」

「…………」

「それで本部に行く前に寄ったらこいつが制御不能状態でいた訳だ。ただ案の定、行動が制限されていたから、私の権限で変えれるようにだけはしておいた。その際、私が基地に戻り皆に説明するまでは近寄るなと言っておいたんだが……どうやら見事迎撃されたようだな」


「…………迎撃? もしかして?」


 あの残骸?


「ん〜あれはビックリしたっす!」


 突然ワイズの声が。その声に身体が反応し咄嗟に両手で胸を隠す。

 だが紐は固く結ばれているようで身動きできない状態。それが分かると緊張が少しだけ緩む。


「ん〜もうちょっとで死ぬとこだったっすよ!」

「ちっ」


 ノアに目標は正確に射貫けと指導しなければ。


「ん? エマっち、今「ちっ」言ったすか?」

「ちっちっちっ、ふん!」

「んーーーー怒ってるエマっちも可愛いっす!」


 縛られた状態で体を捩って喜んでいる。やはり変態確定。

 苛立ちが限界に達しつつある。額に血管が浮き出るのが自分でも分かる。


 ここで話を聞いていたラーナが突然立ち上がり、ワイズに向け歩き出す。その姿を目で追う三人、いや四人。


「あ、姉さん? な、何か?」


 ワイズの問いには答えずワイズの目前まで来ると、拳を作りながら徐に利き腕を後方へ大きく振りかぶる。そこで一旦動きを止めてワイズを見た。


「ラーナ‼︎」


 そこでサラが叫ぶ。


 ドン


 拳は顔ではなく畳を五cmほど陥没させて止まる。


「殺すな。先ほども言ったが大事な駒だ」


 すくっとラーナは立ち上がる。ワイズを見下ろしながら低い声でゆっくり呟く。


「ワイズちゃーん。今まではー大目にー見てあげてたけどー今のエマちゃんはーとっても難しい状態なのー。分かるわよねー? 今後はーちょっとでもー手を出したらーお姉さん容赦ーしないからーね?」


 その言葉から先程までの違和感が単に自制心を働かせていたからだと判明した。

 だからからか表情は窺い知れない尋常でない「殺気」がヒシヒシと伝わってくる。

 まあラーたんの事だから威嚇目的で初めから外すつもりだったと思う。


 一方、ラーナとは入部以来接点が殆どなく、そのためお互いの性格は全くと言って良いほど知らない間柄。

 そんな大先輩の威圧忠告を受けたワイズは冷や汗を大量に流しながら何度も頷くしかなかった。


 そして一人蚊帳の外に置かれていたクレアはラーナのスイングを見て、口をパクパクさせながら固まっていた。


 おーい、ちゃんと呼吸してるかー?


「お姉ちゃん! 悪い奴を懲らしめてくれてありがと!」


 こんな状態のラーナを放っておいたら後が大変。気の利く私はフォローを欠かさない。ここは早めに声を掛けておかねば。


「エマちゃ〜〜〜〜ん!」


 一瞬でラーナの周りが花畑に。満面の笑顔に変わると助走なしのフライングタックルにて抱きついてきた。

 そのまま座椅子と一緒に吹っ飛んだ。


 いだいじ、ぐるじーー

 だが機嫌は直ったようだ。

 良かったー! バーサーカーモードにならなくて……


 何とか席に戻る。一息ついてから怯えるワイズを問いただす。


「ところで艦も無しによく地上ここまで来れたな」


 するとワイズの替わりにサラが答えてくれた。


「こいつは「リン」並に感が鋭いからな。攻撃をくらう間一髪のところで艦から脱出したそうだ。ただ推進装置が無い状態で攻撃されたらコイツでも回避は不可能。私が帰ってくるまで移動せずに隠蔽状態のまま艦の機能を全停止させて「隠れる」ことにしたらしんだが、ドリーが戻ったことにより引力に引かれて落ちてきたらしい。で落ちた先がこの島のそばだった、というわけだ」


「バッカじゃない! サラ警告言うこと聞かないからだ! どうせ引かれるなら主星にでも引かれろ!」

「そうね〜流石に身動き取れなければ〜二日くらいで天国に行けたのにね〜」

「ま、お前がそこにいると分かっていたら、防衛兵器全弾、一斉発射する! 例え街にいたとしても!」


 流石のワイズもここまで言われたら項垂れてしまう。


「でもそんなプログラム作れるなら何でみんなの艦に入れとかなかったの?」

「最悪の場合の保険だ。ワイズの艦にだけにしかはしていない。まあ他の艦に同様な事をしたとしても多分されただろうがな」

「? 誰? もしかして……」

「違う。だ」


 ミアと言おうとしたら、先に否定される。


「それよりエマもラーナもその辺で勘弁してやってくれ。性格はアレだがこれでも数少ない私の駒だ」


「ふん! で、ロイズはどこにいるんだ? アンタの弟だろう?」

「ん〜悟られないように「繋がり」に気をつけてたけど、さっきエマっちの裸見てメッチャ興奮しちゃったから、多分あいつに「色んなこと」バレちゃったぽいっす!」


 既に復活。ニコニコしながら話している。

 めげない奴め。今のうちに一発蹴っておくか?


「まあいずれはバレる」


 私が怒っているのを承知の上での余裕の表情。超腹立つ。


「サラ、こいつら兄弟は情報部では所属してない事になってるわよ」

「それは……この兄弟は事情が少々複雑でな。詳しくは言えん。ただ何度も言うがワイズコイツは味方だ。必要なら貸すぞ?」

「要らない! 頼まれても嫌!」

「感がよくて動きも俊敏。鍛えてクレア辺りと組ませれば……」

「絶対にダメ‼︎ クレアがけがれる‼︎」

「ん〜エマっち〜……悲しっす!」

「自業自得だ! それとさっきから「友人」とかプログラムとか言ってたけど……もしかしてミア?」

「いや違う。ミアはラーナかローナに聞け」

「ラーたん? 何で?」


「うふふ」


 もう機嫌が直っているらしく満面の笑みだ。


「じゃあ誰? 私の知ってる人?」


「フフフ」


 サラコイツも答える気のない笑み。


「何こいつらちょームカつく‼︎ ちょうどいい、サラ「奴」って誰⁉︎」


「…………ふっ」


 遠いところを見ている。これで口笛でも吹こうものなら遠慮なく茶碗を投げつけているところだ。


「もしかして、アリス?」


「…………」


「アリスじゃないの?」


「何でアリスなんだ?」

「…………」


 理由を告げようとしたが言える雰囲気ではなくなった。

 アリスとの単語にサラだけでなくラーナまでもが反応。二人は「取り敢えずの真顔」でこちらに振り向いたからだ。


「い、いや……何となく……」


 予期せぬ反応に一瞬怯む。


「知りたいか? 聞けば必ず後悔するぞ?」

「後悔って何で? ……まさか……エリー?」

「フフフ」


「サラちゃ〜ん? エマちゃん揶揄ったら〜ダメでしょ〜?」


「ははは、すまん!」

「違う……よね? サラ?」

「違うわよ〜エマちゃん♡」


 ラーナの諭すような笑顔を見て肩の力が抜ける。


「ん〜俺っち、知ってるっす!」


 ワイズの一言でサラとラーナがヤンキースタイルの

 二人の目から今にもビームを出しそうな迫力で。


「ん、ん~、やっぱ知らねっす!」


 蛇に睨まれた蛙の状態。


「お前には聞いてない!」

「ん〜〜〜〜悲しいっす!」


 凹んだようだ。ざまーみろ!


「大丈夫よ〜。エマちゃんの知らない人だから〜」

「あっそう」


「ん~ところでそこの美人さんは誰っすか?」


 立ち直りメッチャ早!


「情報部のクレアだ。今は訳あって探索部も兼任している。扱いは……元探索者ってことにしておくか」


「クレアです。よろしく」


 クレアはワイズから目線を外さずに軽く会釈をした。


「ん~こちらこそっす! もしかして……エマっちのか・の・じょ?」


 二人とも一瞬で顔が赤くなる。


「はははははは。もうそんな仲になったか!」

「え〜お姉ちゃん知らなかったわ~。ちょっとショック~」


 ラーナは怒り出すかと思ったが嬉しそうにしている。

 自ら自称している「お姉ちゃんポジション」は間違いなさそうだ。


 でもね、まだ恋人って訳ではないよ?

 親友と言った方がしっくりくるよね。

 だって女同士だし。

 何度も言うけどあたしゃノーマル……だったはず?

 クレアもそうだよね?


 クレアをみると……顔を赤らめチラチラとこちらを見ていた。


 ま、まあ悪い気はしない……かな?


「ところであんたの艦の残骸、残らず使ったから」


 茶菓子を頬張りながら、ワイズを見ずに話す。


「ん~~~~悲しいっす!」

「暫くそのままね」

「ん~~~~ま、いっかっす!」

「あんたの働き次第で考える」


 私ではなくサラがね、何とかしてくれるって。


「ん! 了解っす!」


 異常な性癖さえなければ素直でいいヤツなんだが……

 コイツは強制跳躍には関与していないらしいので、このくらいで許してやろう。


「よし! 服を着てよし!」


 ワイズは自分の体を見る。未だにタオル一枚だった。


「ん~~~~エマっちの……」

「私の?」

「ん、何でもないっす!」

「クレアお願いしてもいい?」


 近寄りたくないのでクレアにお願いした。


「OK」


 返事をすると直ぐに立ち上がり、ワイズの元タオルだった紐を解く。


「ん~~やっと解放されたっす!」


 ワイズは立ち上がり背伸びをした。


「ワイズちゃ~ん。さっきの話、忘れないでね~」


「んん⁈ 了解っす‼︎」


 ビクリと一回身体を震わせラーナをひと目見た後、一目散に出て行った。


 静かになると急にお腹が空いてきた。

 空間モニターにて時間を調べる。そろそろ夕食の時間だ。



「「「キャーーーー」」」



 廊下から悲鳴が聞こえる。

 どうやら四人娘が復活して、タオル一丁で廊下を徘徊しているワイズ変態と鉢合わせしたのだろう。何故かワイズの悲鳴まで聞こえた。

 全く、どこまでも人騒がせな奴。



 召集をかけ全員一緒に宴会場で夕食を取る。

 そこでサラからワイズの帰還の経緯の説明がされた。

 無礼講タイムに入ると四人娘がワイズを囲み再会の祝杯を交わす。


「おい、そいつはまだ未成年だ。飲ませるなよ?」

「「「はーーい」」」


 私は……そんな気分にはなれない。将来こいつの教育指導をすると思うと……気が重い。



 夕食までは何事もなく済んだが新たな問題が。

 エマとクレアの部屋の扉が壊れた状態で客室として使えないのだ。

 扉の粉砕までは想定の範囲外。ここには専用の機器を置いておらず修復は無理だし、材料のストックもないので直ぐに修復は出来ない。


 で残る空室はあと二室。

 内訳は一人部屋と二人部屋が一つずつ。

 飛び入り参加のワイズは男なので自動的に一人部屋。

 あとは二人部屋が一室のみ。

 ここでお決まりの「バトル」が始まった。

 商品はエマとの同室権。


 千載一遇のまたとない好機を逃すまいと目付きが変わる。

 普通に考えれば、行き場のないエマとクレアで決まりだが、マキを除いた三人娘+ラーナが「クレアに自分の部屋を譲ってあげる」と申し出てきたので事態がややこしくなる。

 そして本人達の了承のないまま「バトル」が決まった。


「お姉ちゃんが一緒に寝るの〜!」

「……私は隊員だ、ぞ! 寝食共にするの、だ!」

「何、隊員って! 私はこの身をお姉様に捧げるって決めたの!」

「ちょっと押さないで! 貴方達のせいで添い寝出来なかったんだから、今度は私が一緒に寝るの!」


 大人しくしていればみんな可愛いんだが……


 力技禁止、侮辱禁止、先輩後輩年上年下関係ない、上は二十五歳から下は十八歳と誰の愛? が一番大きいのかで決まるらしい。

 ただ……みんな結構飲んだ後だけど、あんなに大声出して大丈夫かいな?


 クレアとお茶を飲みながら行方を見守る。

 因みにサラとマキとワイズは我関せずと客室に引き上げているのでここにいるのは私とクレアだけ。



 ──うーんなんか行き着く先が見えそうだな。よし、ここにこれとこれを見える所に大量に置いて、と……



 さてと。

「ね〜クレア〜?」

「な〜に〜?」

「長くなりそうだし〜お風呂行こ〜?」

「そうね〜行くか〜」


 静かに部屋を出て長い廊下を歩いて行く。

 途中十字路に差し掛かると脇の灯りが点いていない廊下があり、先には客室が続いていた。

 ただ全ての扉には「工事中」の札と木の板で物理的に封鎖しれていた。

 館内マップには存在していない領域。


 ここでラーナのあの妙な笑顔を思い出す。

 ここまで用意周到な準備が出来たのはラーナしかいない。

 彼女の事だからこうなるのを予想していたのかも?

 いやワイズがここにいるとは思わなかった筈。

 という事はワザと事故を起こし二人部屋を使うつもりだった?


 うん、今後はラーナに任せるのはよそう。




 脱衣所に到着。明るい内湯の空間から星空の露天風呂へ。

 空を見上げるとあの分身体との接続実験の時と同じ、満天の瞬きで覆い埋め尽くされていた。


 あの時は必至で周囲を観察する余裕は無かった。だが今は仲間も増えたしドリーも帰ってきた。

 心に余裕があると見える世界が変わる。


 クレアと露天風呂の端まで行き、湯に浸かりながら海を眺める。

 すると潮の香りがしてきた。


「今日は色んなことがあったね」

「そうね。ちょっと疲れたかな」

「私もよ」

「でも……探索者って変わり者、多いよね?」

「それは……ウチのエリアだけ」

「そうなの?」

「うん。私もAエリアの探索者に会ったことあるけどみんな普通っていうか「まとも」だったよ」

「そう言えば、以前ラングに来た探索者も「まとも」だった気がする」

「そうでしょ? 本当どういう基準で配属先を決めてるのか知りたいわ」

「気になるなら調べてみたら?」

「……アルに聞いてみるか」


(アル、教えて〜)


 静かな環境を楽しみたいので脳内通話にて話しかける。


(はい。新規探索者は自エリア内での確保が基本となりますが、他エリアが関係するような場合の最終決定権は探索部の「おさ」が有しています)

(流石アルちゃん。へ〜そうなんだ)

(それであの二人は?)

(あの二人とは? クレアさん具体名を)

(ワイズとロイズです)

(……えーこの二名に関してはお答え出来ません)

(なんでやねん)

(レベル3のクレアさんにはお教え出来ません)

(私でも?)

(エマならある程度までなら……勿論エマがクレアさんに話す事は許されませんよ?)

(……ケチ、ならいい)

(ご自由にどうぞ……)


 相変わらず頭の硬い奴。


 でもあいつらの「家族関係」は聞いたことがあるが、何処出身とかは知らない。興味なかったし。


「ごめんねクレア」

「ううん、こっちこそ」

「…………」

「…………」

「どした? 元気ないね?」


「……何であれを避けれるんだろう」


 仰向けで大きな山脈を浮かべ、宇宙そらを見上げながら呟いた。


「あれ? ……あ、弾か」

「そう……ちょっと落ち込むなー」

「いやいや、アイツ異常だから! 多分ひと目見ただけで、相手の癖や動きを読むのが巧いんじゃない? 普通の人間なら当たってるって! それにさっき見たでしょ、あのラーたんが捕まえられないんだよ?」

「ええ、でもね肝心な時に「当たらなければ」意味はないと思うの」

「確かに……いやそんな事ない。牽制や威嚇にだって使えるじゃん」

「うん、そうだね……」

「クレア……」

「もしあの時点で「イージス」が無かったら……と思うと、私何のためにここに居るのかって……ね」


「……あのね、クレア」


 体をクレアに向けて座り直す。


「?」

「目瞑って」

「?」



 お口に「チュ」



「は、はへ⁈ 何?」


 一瞬でクレアの顔は真っ赤になる。


「守ってくれてアリガト♪」

「は、はぁ〜?」

「今のは本心だから。とっても嬉しかったし頼もしかった」

「でも……」

「「でも」じゃない! あの時クレアは間違いなく私を守った! 体を張って守ってくれた! そうでしょ?」

「……はい」


 今度は少し涙顔。沈みかけた気持ちが持ち直したようだ。


「よし! 後は……ノアにでも相談するかね」

「何で……ノアちゃん?」

「動きがならようにすれば良い」

「どうやって?」

「それは……これから考える‼︎」



 言ってみたはいいが、全くのノープランだった……

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